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池袋暴走死傷事故(2019年4月)

【独自取材】池袋暴走事故 飯塚被告に禁錮7年求刑 妻と娘を亡くした遺族「しっかりと罪を償って欲しい」

11人が死傷した暴走事故 東京地裁で論告求刑公判

(事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん)
「(陳述書を)少し書いては涙が出てきてしまうので、やめて。少し書いてはやめてっていうのを、ずっと繰り返して…」

おととし4月、東京・池袋で乗用車が暴走し11人が死傷した事故。7月15日に東京地裁で行われた裁判で、妻と娘を亡くした松永拓也(まつなが・たくや)さんらの意見陳述が行われました。

これまでの公判…被害者参加制度で遺族が直接、被告に質問

東京地裁に入る飯塚幸三被告

暴走事故で車を運転していたのは、当時87歳だった旧通産省工業技術院・元院長の飯塚幸三被告です。過失運転致死傷の罪で在宅起訴され、裁判が続いています。

(記者リポート)
「いま、飯塚被告が東京地裁に入ります」 
車内でうつむき、じっと下を見つめていました。

事故で亡くなった松永真菜さんと莉子ちゃん

この事故で最愛の妻・真菜(まな)さんと娘・莉子(りこ)ちゃんを奪われた松永さん。先月、裁判で直接、飯塚被告に質問しました。

事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん

(事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん)
「私から直接質問を受けても、やはり自分は悪くないんだと変えることができない。なんかもう…正直むなしくて」
「私は彼に刑務所に入ってほしい」

無罪を主張し続ける飯塚被告に対し、厳しい判決が下されることを求めました

裁判の争点は…飯塚被告「私の過失はない」

飯塚被告「私の過失はない」(画:宮脇周作)

今回、裁判の争点となっているのは、飯塚被告に過失があったかどうかです。事故後の実況見分では「パニック状態になりブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性もある」と供述していた飯塚被告。しかし、去年10月に行われた初公判では…

(飯塚幸三被告)
「アクセルペダルを踏み続けたということはないと記憶しております」

裁判の争点

主張を一転。その後も、弁護側は「経年劣化により、ブレーキが作動しなかった可能性は
否定できない」として「過失運転致死傷」には当たらないと無罪を主張しました。

一方、検察側は「車の故障診断装置に故障記録はなく、アクセルが踏まれブレーキを踏んでいない。データが記録されている」として、事故は飯塚被告の過失により起こったと指摘。

その後の裁判では、「ブレーキランプは点灯していなかった」など様々な目撃証言も上がっていました。それでも飯塚被告は…

(飯塚幸三被告)
「エンジンが異常に高速回転しました。ブレーキを踏んでいるのに、なぜ加速しているのか わからなかったです」
「私としては、(アクセルとブレーキを)踏み間違えた記憶は一切ありません」

法廷で直接、飯塚被告に問いかけた松永さん(画:宮脇周作)

初公判から先月行われた8回目の公判まで、一貫して自身の過失を否定。先月21日の公判では、松永さんによる直接の問いかけにも…

(事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん)
「あなたは無罪を主張しますか?」

(飯塚幸三被告)
「心苦しいとは思っておりますが、私の記憶では踏み間違いはしておりませんので、私の過失はないものと考えております」
「暴走事故にあった車を止められなかったのは、悔やんでいます」

最後まで、事故は「車の異常」が原因だったと訴え続け、無罪を主張しました

第8回の公判後には、飯塚被告が運転していた車を生産したトヨタ自動車が、「(被告人が)車両に技術的な欠陥があると主張されていますが、(当局要請に基づく)調査協力の結果、車両に異常や技術的な問題は認められませんでした」との異例のコメントを発表しました。

遺族の強い思い「私のような遺族を今後、絶対出してはいけない」

松永さんの思い

最愛の家族を失ってから、松永さんが訴え続けてきた“ある強い思い”があります。

(事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん)
「今回の事故での妻と娘のような被害者と、私のような悲しむ遺族を今後、絶対出してはいけないとも思いました」
「それぞれのご家庭で事情があることは重々承知しておりますが、家族の中に運転に不安がある方がいるならば、今一度、家族内で考えてほしい」

“交通事故の犠牲者を1人でも減らしたい”との思いから社会へ問いかけた再発防止の訴え。
事故の報道もあってか、近年、高齢者を中心に運転免許を返納する動きが拡大。松永さんは、国土交通大臣に面会し、公共交通機関の拡充を求めたほか、講演会を開くなど交通事故の防止を広く呼び掛けてきました。

独自取材に松永さんは…「2人の命を無駄にしたくない」

被害者参加制度を利用し、法廷に出続けた松永さん

「2人はなぜ命を奪われたのか…」 その真実を知るために、被害者参加制度を利用し、法廷に出続けた松永さん。7月14日、ミヤネ屋の独自取材に胸の内を語ってくれました。

(事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん)
「遺族として加害者が裁かれてほしい。しっかりと罪を償ってほしい。それはもちろん当然のことで。それと同時に、この裁判というのは今のこの社会問題の縮図というか、一例だと思うので、そういう点でも無駄にしたくないですね」
「僕は2人の命を無駄にしたくない」

ミヤネ屋の取材に答える松永さん(14日)

あらためて語った裁判への強い決意。きょうの公判では、松永さんが心情を述べる最後の機会が設けられていました。

(事故で妻と娘を亡くした松永拓也さん)
「去年からずっと準備してきて。心情の意見陳述を少し書いては涙が出てきてしまうのでやめて、少し書いてはやめてってというのをずっと繰り返して…」

「つらかったですよ、やっぱり。いろんなことを思い出しながら。夜な夜なパソコンで一人で(文章を)打つんですけど、3人で楽しかった頃の思い出を考えながら」

「ふとした瞬間に、パソコンを1人で夜な夜な打っている自分っていうのが、すごくギャップを感じてしまって。つらい作業ではありました」

「裁判にずっと被害者参加人として参加してきたのも、被告人質問をしたのも心情の意見陳述につなげるためだったので、そういう意味では、つらい作業ではありましたけど、後悔したくないので、やれることは全てやりたい」

法廷の様子は…リポーターが伝えたきょうの公判

法廷の様子を伝える東ふきリポーター

東ふきリポーター)
「きょう1人目の証言に立ったのは、亡くなった真菜さんのお父さん。娘と孫との思い出を話しました。(事故のあと)孫の莉子には『ジイジが代わってあげられなくてゴメンね』と話しかけたということです」

続いて、東リポーターは松永さんの意見陳述の内容を伝えました。

(東ふきリポーター)
松永拓也さんは最後7人目、証言台に立ちました。冒頭、松永さんは被告人に対して、法律で与えられる最大の刑罰を望みますとした上で、真菜さんとの出会い、交際、結婚、莉子さんの出産のときの喜び、3170グラムで生まれて92センチ13kgまで大きく育ったことをうれしく思っていたといった思い出を語りました。
そして、事故当日の日。警察から電話があって、夢だと自分に言い聞かせた…けれどもニュース速報で出て手足が震えて座り込んだ。すぐに真菜さんに無事でいてくれとラインしたけれども既読にならなかった。警察からは即死ですと言われて泣き叫ぶしかなかった。
真菜さんの顔は傷だらけで、莉子さんの顔は警察からは見ないほうがいいですと言われたと。葬儀社にも莉子さんの顔の修復には3日間かかると言われたと。そして莉子さんの顔にかけられていた布をめくろうとしたけれども、ちょっとめくると莉子さんの顔が陥没しているのはすぐに分かって。布をめくることができなかった。最後まで娘の顔を見ることができなかったと涙ながらに話しました。
そして、松永さん自ら、被告人に『真菜さんと莉子さんの名前を言えますか、漢字で書けますか』と質問した時に、被告人は『名前は分かるけれども、漢字はちょっと分かりません』というような趣旨の答えをしたんですが、このことについて「被告人は被害者の名前を漢字で書けない、命と向き合っていないということだ」と。
「実刑判決が出ることを信じている。2人の未来が戻らないから、責任を取るには実刑判決しかない。そうでなくては社会に禍根が残ると思う」と意見陳述しました。

きょうの法廷 検察側は禁錮7年を求刑(画:宮脇周作)

検察側は、飯塚幸三被告に「禁錮7年」という過失運転致死傷の罪では最も長い刑期を求刑しました。判決は9月2日に言い渡される予定です。

(情報ライブミヤネ屋 7月15日放送)

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