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理化学研究所が“希望”の発見

日本人の新型コロナ患者の重症者や死亡者が、欧米に比べて非常に少ない理由について、これまでは「ファクターX」とされ謎に包まれていました。しかし、12月8日に「理化学研究所」が、多くの日本人が持つ、ある“免疫タイプ”が、コロナウイルスに大きな効果があると発表。この、今後の治療につながる“希望”の発見について、広島大学大学院で免疫学が専門の保田朋波流(やすだ・ともはる）教授が解説します。

コロナ重症化が少ない「ファクターX」とは？

「ファクターX」とは、英語の「FACTOR（要因）」と、未知を表す「X」を組み合わせた言葉で、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、京都大学の山中伸弥（やまなか・しんや）教授が名付けました。

これまで日本人のコロナ感染者の重症化が少ない要因として「家の中で靴を脱ぐ文化」や「結核予防のBCG接種」、「マスクの普及」や「肥満の低さ」など、諸説挙げられていました。

12月7日現在の、G7各国のコロナ感染者における各国の死亡率を比較すると、パーセンテージ・死者数共に、日本は他国に比べ少ない事が分かります。

ヒトの免疫機能 「キラーT細胞」が感染細胞を攻撃

“未知のウイルス”が体に侵入すると、まず体内にいる「ヘルパーT細胞」がそれを発見し、他の細胞に知らせます。そこで、反応するのが「B細胞」や「キラーT細胞」。「B細胞」はワクチンなどにも使われている「抗体」を作りウイルスを中和、一方「キラーT細胞」は、すでに感染してしまった細胞ごと攻撃します。これが、ヒトの免疫機能です。

Q.「抗体」と「キラーT細胞」の違いは？
（広島大学大学院　保田朋波流教授）
「『抗体』は、細胞の外のウイルスをやっつけて、『キラーT細胞』は、細胞の中にいるウイルスをやっつけるという役割分担があるんです」

Q．「キラーT細胞」はみんなが持っているもの？
（広島大学大学院　保田朋波流教授）
「はい。みなさん（体内）にあります。」

「ファクターX」解明のカギ　「HLA-A24」

理研は、ヒトの体内で重要な免疫機能として働いている、“HLAの型（白血球の型）”に注目しました。このHLAは、体内のあらゆる細胞の表面に存在し、数万の種類があります。その中でも、日本人に多いとされている「HLA－A24」には、人の細胞が新型コロナウイルスに感染したとき、その表面に「エピトープ」というウイルスの一部が出現するのです。

Q. 「エピトープ」とは？
（広島大学大学院　保田朋波流教授）
「『B細胞』や『キラーT細胞』など免疫の細胞は、標的を見分けて、見分けた標的となるものだけを攻撃するという特性があります。その標的となる部分のことを『エピトープ』と呼びます。」

今回理研は、様々な種類のある「エピトープ」の中から、「キラーT細胞」を活性化させる「特定のエピトープ」を発見。さらに、この「特定のエピトープ」に類似した「エピトープ」が、“風邪コロナウイルス”などに感染した細胞にも存在することが分かった、ということです。

その為、風邪にかかったことがある人の体内には、その時に活性化された「T細胞＝記憶免疫キラーT細胞」が眠っている可能性があり、“新型コロナ”に感染すると、その眠っていた「記憶免疫キラー細胞」が働きだすということです。

理研の藤井眞一郎チームリーダーは、「ブレイクスルー（免疫突破）感染やワクチンが打てない人の、治療薬の開発に貢献できることが期待できる」とコメントしています。

Q.眠っている「キラーT細胞が」いるんですか？
（広島大学大学院　保田朋波流教授）
「記憶免疫キラーT細胞は、長い間免疫を維持しないといけないので、なるべく眠って体力を温存して、必要な時に働くというものです」

Q．「HLA―A24」を日本人が多く保有しているのことが、「ファクターX」ということ？
（広島大学大学院　保田朋波流教授）
「HLAの型は親から子へ遺伝する性質があり、『HLA―A24』は、欧米人では1～2割しか保有していませんが、日本人は約6割もの人が保有しています。これだけが『ファクターX』ということではなく、いくつかの要因の中の一つではあると思いますが、かなり大事そうな感じはします」

（情報ライブ ミヤネ屋　2021年12月9日放送）