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会見を開いた勅使河原秀行本部長

【独自解説】“統一教会”「改革会見」に有田芳生氏と鈴木エイト氏が『異議あり!』 「内部資料と矛盾」「現実を知らない」

 9月22日、「宗教法人世界平和統一家庭連合」が三度目となる会見を開きました。献金や勧誘に関するコンプライアンスを徹底するため、教団内に新たな「教会改革推進本部」を設置し、その本部長に就任したという勅使河原秀行氏と、教団の顧問弁護士である福本修也弁護士が、今後の方針発表を含めた説明の場として開いた記者会見。教団が示した改革の方向性から、果たして何が読み取れるのか?長年“統一教会”を取材している、ジャーナリストの有田芳生氏と鈴木エイト氏が徹底解説します。

会見を行った勅使河原秀行氏とは

 1992年の合同結婚式に参加した際、マスコミでも騒がれた勅使河原氏は、“統一教会”内ではエリートで、人事部長や総合企画局副局長などを歴任。2014年~2017年には教団のYouTubeで「講師」として、「統一原理」の講座を行っていた人物だということです。

ジャーナリスト 有田芳生氏

Q.勅使河原氏については、よくご存じですか?
(有田芳生氏)
「そうですね。1992年の合同結婚式に参加されるということで、当時のスポーツ選手の方と祝福を受けましたが、翌年にその女性が脱会されました。その後、勅使河原氏は信者の他の女性と結婚をされて、そして教団本部の仕事をされる形でずっと表には出ていなかったのですが、今回30年ぶりに表に出て来たということで、“昔の名前で出ています”という感じですね」

Q.この方は幹部というか、切れ者の方なのですか?
(有田芳生氏)
「1992年の合同結婚式のときもそうでしたが、彼が出てきたら爽やかな印象がありましたし、弁が立つんです。そういう意味で、人材不足なんでしょうけれども、こうやって問題の矢面に出て来たということだと思います」

ジャーナリスト 鈴木エイト氏

Q.今回の会見には、田中会長の姿が見えないですね?
(鈴木エイト氏)
「田中会長は先日の公職者の特別ネット会議で、『次に自分が会見に出るときは、自分が辞職するときだ』ということをおっしゃっていたので、今回はいらっしゃらないのかなと思います」

「改革」表明会見の概要

会見の冒頭で謝罪の言葉を口に

 会見の冒頭、勅使河原氏は「安倍元首相の銃撃事件以降、様々な報道を通じて世間を大変お騒がせしましたこと、並びに日本国政府、そして国会議員の皆様に、大変なご迷惑をおかけしましたこと、心からお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした」と述べ、さらに「あくまでも個人的な思い」と前置きし、「山上容疑者の家庭連合に対する恨みが、今回の犯行の動機であると話していることを聞いて、私は大変胸が痛みました。また一連の報道を通して、日本国政府が調査に乗り出すという事態まで招いていること、そして、国会議員の先生方が一人一人、当法人との関係があったのかをメディアから質問されるような事態を招いていることを、大変申し訳なく思っております」と続けました。

 その後、改革の方針について説明がなされました。2009年のコンプライアンス宣言時からの指導である「①民事裁判等で問題とされた、献金と先祖の因縁等を結びつける、または、威迫・困惑を伴うような献金奨励・勧誘行為はしてはならない。②信者への献金の奨励・勧誘行為は、あくまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、十分配慮しなければならない。③伝道活動において、勧誘の当初から家庭連合であることを明示すること」を再度徹底すること。さらに、それに追加する基準として「②の『過度な』とは、献金により通常の社会生活(家族も含む)を困難にするような程度、あるいは、献金の為に借金をする等のことであることを明示し、献金が信者の生活を圧迫することが決して無いよう指導を徹底する」としています。

また、
■政府が対応するとしている、被害を訴える方が、教団に対して返金請求や被害を訴えるなどの申し出があった場合は、一件一件誠意を尽くして対応し、自ら早期に解決を図る
■全世界の宣教活動への支援については、大幅に減額する
■本部に「教会改革推進本部」を設置し、これらの改革の実行が教団の隅々に至るまで確実になされること、また、今後一切世間からの誤解を受けることが無いよう効果的な教会改革をし、上記の方針に違反する責任者・職員については「内部規定」に基づき厳正に処分行う
ということです。

「献金の強要は無い」 有田氏「内部資料を見れば説得力ない」

Q.この会見・質疑応答全体の印象はいかがです?
(有田芳生氏)
「勅使河原氏がどこまで実態をご存じなのか、本当に知らないのではないかと思います。知らない人をこういう改革の本部長に据えるところに、今の旧統一教会の問題点があると思うんです。内部資料を見たら全部否定できます。そして、TBSの金平茂紀さんもおっしゃっていましたが、謝るべきは霊感商法などの被害者でしょう?その言葉が一言もない。信者たちで苦労している人に対する労いの言葉もない。そして何よりも、日本の組織は韓国の組織に基づいて動いているのだから、韓国にいる韓鶴子総裁、そして日本にいる方相逸総会長のように、田中会長の上に指導する人がいるわけです。その構造を変えない限り、何も変わらない。そもそも教義の中で『万物復帰』の教えがありますから『この世の全ての財物を神に返さなくてはいけない』ということで、霊感商法もやり、信者たちの献金も求めているわけですから、その教義が変わらなければ、何も変わらないんです」

“過度な献金”の認識方法は「詳細までは決めていない」

Q.会見の中では、“過度な献金”の“過度な”という部分は、非常に曖昧としていましたよね?
(鈴木エイト氏)
「はい、現在は183万円の献金指令が出ているという情報もありますし、それはやはり過度だとは思うんですが、先ほどの説明だと、『1000万円でも1億円でも、それが安いと思う人もいる』と非常に曖昧な答え方をされていましたね」

Q.「予算に基づいた献金」について、それはお金として稼がなくてはいけないと受け取りましたが?
(鈴木エイト氏)
「これは表向きのお金であって、そこに出せない裏のお金が韓国に流れている、そういう収奪をしてきたということなので、今回『韓国の本部を通じて、世界に送るお金を減らすことを韓国も了解した』と仰っていたのですが、それが実際に本当だったとしても、そういうルートではなくて、また色々な裏のルートを使ってやるのかなと思いました」

献金は「本人の自由意志」

Q.勅使河原氏は「宗教の献金は聖なるもの、本人の自由意思に基づいている」と仰っていましたがこれについてはどう思われますか?
(有田芳生氏)
「これは現実を見ていないです。一般論としては、その通りですが、現役信者の皆さんに聞いても、本当に苦しんでいるんです。『来年の5月までに183万円の献金をしなさい』という指令について、ある教会長が『そんなお金はないから、みんなに出させるというのは無理がある』と言ったら、それを上の韓国人幹部は『出さないというのは、どういうことだ』とたしなめている。現実にこういう矛盾が起きているんです。『自由意思に基づいて』なんていうのは、現実を見たらそんなことは言えないです。現実を知らないんですよ」

「反日思想は全くない」 有田氏「原理議論に『日本はサタン側の国』」

反日思想は「全くありません」

Q.「教団には“反日”の教義がある」との指摘について、勅使河原氏は、「韓国は父の国、日本は母の国と呼んでいて対等である」という発言をされましたが、これはどう思いますか?
(有田芳生氏)
「勅使河原氏は教理解説書の原理講論をちゃんと読んでください、ということに尽きます。原理講論の中に、『日本はかつて全体主義国家であり、韓国のキリスト教会に弾圧をした。日本はサタン側の国である』と書いてあるんです。『将来世界は韓国語で統一される』とか、かつて文鮮明氏がいたアメリカの施設で行った四大名節という行事のときには、天皇陛下役が文鮮明氏に跪くという儀式もあったんです。そういう関係なのに、そのことを保守的な政治家たちはどう考えているのかと思います」

「09年以降霊感商法はない」 鈴木氏「認識の違い、誤魔化し」

「2009年以降、霊感商法は一件もない」

Q.勅使河原氏の「2009年以降、霊感商法は一件もないにも関わらず、霊感商法が今でも行われているかのような報道、それを主導している左翼弁護士の影響が、多分に日本国民をミスリードしているのでは?」という発言について、異議ありとしていましたが?
(鈴木エイト氏)
「一件もないというのは誤りで、実際に2014年に印鑑を売りつけられた人の事例は知っています。商品を介在しての霊感商法は収まっていて、商品を介在させない別の形での収奪が起こっているというのは度々言っていることなので、これも認識の違いというか、誤魔化しだと思います。向こうの言い分だと、僕は左翼ジャーナリストなんて言われますけど、僕は右翼でも左翼でもないので誤りかと思います」

Q.今の被害者に対しての具体的な救済策については、これから決めるというニュアンスに取れましたが?
(有田芳生氏)
「今日の会見を見ていて、勅使河原氏は何度も『誤解を生んでしまった』と言われていましたが、なぜ誤解を生んだのか、という説明が無かったんです。これまで、霊感商法を含めて信者の方々が大変な思いをしていて、今日はほとんど語られませんでしたが、今の信仰2世の若者たちは、教団の中でものすごく苦しんでいるんです。その人達に、どう救いの手を差し伸べるかというのが、それこそ宗教の役割でしょう。そんな問題に、関心が無いのではないかと思いました。1992年の合同結婚式のときに、勅使河原氏は“統一教会”の広告塔になりましたけど、30年経って再び“統一教会”の広告塔になったのかな、というようにしか見えませんでした」

安倍元首相銃撃事件の原因は「はるか以前の問題」

 会見に同席した福本弁護士は、「2009年に『コンプライアンス宣言』を出して、信者が経営する会社における物販活動・開運商法については、一斉に無くなっています。これ以降に、霊感商法だといって“統一教会”を訴えて損害賠償を求めたものは、この13年間ありません」と説明しました。記者からの「なぜ安倍元首相銃撃事件が起きたのですか?」という質問に対しては、「あの事件のお母さんが献金されたのは、1990年代です。それが20年以上を経て、それが山上容疑者の恨みとしてあのような形となったわけでありますけども、90年代の話であって、『コンプライアンス宣言』以前、はるか以前の問題です」と答えました。

Q.いつ被害を受けたのかという年代は関係なく、困っている人の救済に真摯に向き合って欲しいですよね?
(鈴木エイト氏)
「はい。『内部規定ができてちゃんとやっている』という話がありましたが、なぜこれができたかというと、教団を正常化しようとして、教団がコンプライアンス違反をしていることを告発した方が内部にいらしたんです。その方に対して、教団の内部の公文を外部に出したということで、その方を糾弾するために作った内部規定なんです」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年9月22日放送)

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