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元信者が語る韓国での過酷生活

【独自解説】憧れの合同結婚式で結ばれた相手は、日本人妻目的の信仰心のない男だった― 借金、DV…“統一教会”元信者が韓国で味わった絶望感

 韓国では、“統一教会”に関係するモノが街の至る所で見受けられます。日本とは異なり、多くのグループ企業を持つ韓国の”統一教会”の、現地での認識や活動状況、そして合同結婚式で韓国に渡った日本人妻の過酷な運命を、ジャーナリストの鈴木エイト氏が解説します。

莫大な建築費はどこから?“聖地”に建設中の「天苑宮」

現在建設が進む「天苑宮」

 ソウル市内から北東へ約50km、車で1時間半ほどの山間部にある京道・加平は教団にとって“聖地”とされる地域です。街を見下ろす山の中腹には、巨大な建造物がみえます。上に位置するのが、韓鶴子総裁が暮らすといわれる「天正宮」で、その下に「新たなランドマーク」と位置づけられ、現在建設が進む「天苑宮」があります。ほかにも、2万5000人が収容でき合同結婚式が行われるという「清心平和ワールドセンター」など、巨大な建築物が広範囲に数多く建っています。

ジャーナリスト 鈴木エイト氏

Q.今、建設が進む「天苑宮」ですが、完成させるために韓鶴子総裁が献金を日本人信者に強いているといわれますが
(鈴木エイト氏)
「日本人信者に課せられていた献金が、2022年の12月末に1.5倍になったといわれています。この『天苑宮』は、建築費が300億~500億円かかるといわれていて、内装にイタリアの高級な資材を使うために、さらに数百億円かかるといわれていて、なかなかお金が足りない状況です。韓国の”統一教会”系の財団から、毎月資金の投入があるそうですが、それでも厳しいようです」

Q.この建物の建築費は、日本人信者からの献金と考えていいんですか?
(鈴木氏)
「この聖地・加平の建物は、日本人信者からの献金や霊感商法などの売り上げが投入されている、といわれています」

統一教会は「企業型宗教」 “問題団体”との認識は無し

“統一教会”の企業活動

 “統一教会”は、韓国では関連企業が販売する商品は良く知られていて、例えば「メッコール」という飲料は、発売以来50億本を売り上げているといいます。また、教団関連の「世界日報」という新聞は、一般の新聞として売られていて、誌面も宗教色はほとんどなく、番組欄などもありほかの新聞と同じような内容です。ほかにも”統一教会”の関連施設として、大学や病院、リゾート地の経営もしていて、『企業型宗教』と言われています。韓国国内では、日本での献金問題等も報道されていないので、日本人信者の被害は知られていません。韓国では、実害がないと思われているようです。

Q.”統一教会”は、韓国では知らない人も多いですし、知っていても「イメージは良くない」程度でした。韓国では”統一教会”問題は、知られていないのでしょうか?
(鈴木氏)
「自分の国の中で問題が起こっていないと、なかなか団体に問題があると認識しにくいですよね。関連団体の中でも、経営がうまくいっているところと、うまくいっていないところがあって、うまくいっていないところには、日本人信者からのお金が補填されているといわれていますので、問題がないわけではありません」

Q.韓国には、”統一教会”以外にもたくさんの宗教があって、問題のある所も多いといいます。”統一教会”はその中に埋もれてしまっているのでしょうか?
(鈴木氏)
「教祖が逮捕されるなど色々問題になっている宗教もあります。そんな中で、ある程度社会に溶け込んでいる”統一教会”は、韓国国内でよほど大きな問題を起こさないと、日本ほどに問題はならないと思います」

騙され、信仰心ない夫と結婚…日本人妻の苦悩

電柱に貼られていたビラ(読売テレビ)

 しかし、日本に関連する問題は、現地・韓国にも存在します。それが、韓国に渡った“統一教会”の日本人妻の問題です。韓国農村部の電柱に貼られていたというビラには、大きく見出しに「日本人女性と真の結婚」と書かれていて、男性の募集要項として、学歴や年齢制限なども記載されていました。そして、一番下には、「純潔で理想的な配偶者と縁を結んで差し上げます」と書かれていました。”統一教会”は、「貧困層出身者が多い地方の農村部の男性に日本人女性を紹介する」という布教活動を行っていたのです。

9歳で入信した 元信者・ちはるさん(仮名)

 その布教に利用され、結婚して韓国に渡った日本人がいます。元信者のちはるさん(仮名)は、今は首都ソウルから車で数時間の地方に住んでいます。日本では父親の暴力に苦しみ、そこから逃れるために19歳で“統一教会”に入信しました。そして海外に宣教活動に行くまでの熱心な信者になります。そしてちはるさんは、あることに憧れます。それが合同結婚式です。

(元信者・ちはるさん)
「人類のメシア・文鮮明教祖が選んでくれた相対者と、真の愛で一つとなっていくことが、すごく私にとっては希望でした」

その思いは叶い、ちはるさんは合同結婚式に参加し、文鮮明教祖が選んだ韓国人と結婚します。そして韓国で新たな生活を始めた矢先に、ある問題が発覚します。

ちはるさんの苦悩

(ちはるさん)
「夫に、なぜ祝福を受けたのかを聞いたときに、『信仰はなかったけれど、親戚から紹介されて、それで受けた』という感じで…」

実は夫には信仰心がなく、結婚目的だったのです。ちはるさんには衝撃的な事実でした。さらに、そのときに行っていた農業もうまくいかなくなり、借金が膨らみ、生活苦に陥ったといいます。

(ちはるさん)
「自分はまだましで、近所の日本人妻はDVに遭ったりしていて、ほかにも夫がアルコール依存症で逃げ回ったり、といった家庭を見て『これが祝福家庭なのかな?』とずっと思っていました。それでもみんな韓国に家庭があるし、帰りたくても帰れないんです。私も帰りたいことは帰りたいのですが、日本にはもう家もないし、両親も亡くなっていますし、現実は難しいと思っています」

 韓国に渡った日本人妻の中にはこのように、虐待を受けたり、日本に帰れなくなってしまったりと、大変な苦労を強いられている人たちがいるのです。

Q.夫が、信仰心が無くて結婚のために入信したのであれば、熱心な信者だった日本人妻は大変な思いをしていますよね。
(鈴木氏)
「結婚相手の男性に信仰心があれば、少なくとも精神的なよりどころになるのですが、貧しいところに嫁がされて、さらに夫に信仰心がなく、日本人女性と結婚するためだけに入信したのだと、その苦労には救いがないですよね」

5月に合同結婚式開催予定

Q.合同結婚式が5月7日に予定されているとききますが?
(鈴木氏)
「5月7日の合同結婚式の2日前の5月5日に、『天苑宮』の奉献式が行われる予定で、外観を何とか完成させて内装を一部作って、『天苑宮』から全世界に中継をするので、日本からも多くの信者が行くようです。そのときに、送金できていない現金を、信者に外為法ぎりぎりまで持たせて行くんじゃないかといわれていて、合同結婚式と合わせると相当なお金が動くと思われます」

Q.韓国人と結婚して、韓国籍になった信者の場合、日本政府はどう対応したらいいのかが課題ですね?
(鈴木氏)
「外務省に話がいっていて、どうにかして救えないか、少なくとも日本に帰りたい人をどうにかケアできないか、という動きはありますが、実効性がある段階かというと、まだそうでもないです」

Q.日本と韓国で、この”統一教会”の問題を共有できていない状態ですが、いろんな方向からのアプローチがないと解決は難しいですよね
(鈴木氏)
「現在は幸いなことに、日韓の政府間の関係が改善されています。まず日本の政治家が、”統一教会”の問題にちゃんと取り組んだ上で、韓国政府と話をして、現地で苦しんでいる方に何とか手を差し伸べてほしいです」

(情報ライブミヤネ屋2023年3月30日放送)

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