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中国“コロナ”習近平主席が勝利宣言をするも感染爆発

【独自解説】習近平政権“ゼロコロナ転換”で感染爆発 数値発表無く「ブラックボックス化」 各国の水際対策に中国当局が不快感 春節後には“変異株”発生の可能性も? 専門家が解説

 ゼロコロナ政策の大幅緩和に伴い今、中国全土で感染が急拡大していて、ある調査では4月の末までに170万人が死亡するとも言われています。まもなく春節を迎える中国で今、何が起きているのでしょうか?関西福祉大学の勝田吉彰教授と東京大学大学院の阿古智子教授の専門家2人が解説します。

中国“ゼロコロナ政策”転換で感染者急増

中国“コロナ”の感染者数の推移

 中国では、ゼロコロナ政策の大幅緩和をした11月に入り、感染者が急増しました。11月29日には7万人超が感染し、上海では救急にかかる人の8割が“新型コロナ”患者だったということです。その後、感染者数は急降下をたどり、12月末以降は感染者数を公表していない状況です。

関西福祉大学 勝田吉彰教授

Q.中国政府が感染者数の発表をやめたので、実際の数字などは誰も分からないのですね
(勝田教授)
「せめてトレンドだけでもわかれば。全数把握しなくても、数字だけでも出せばいいんですが、それを止めてしまったので、ブラックボックスになっています」

12月31日習近平主席の演説

 12月31日、中国の習近平主席は「苦難に満ちた努力の末、未曽有の困難と挑戦に打ち勝った。最大限国民の生命と健康を守った」と演説し、中国の国家衛生健康委員会も「感染対策は、『重症化を防ぐ』段階に移った」と発言しました。

東京大学大学院 阿古智子教授

Q.習近平主席がゼロコロナを撤廃し、このような演説をしたのは、学生運動やデモが引き金になったからでしょうか?
(阿古教授)
「あまりにも自由を奪われて苦しいという人たちが憤りを爆発させて、そこに対応するという差し迫った状態だったのでしょう。習近平主席の『国民の生命と健康を守った』という演説は、私も聞いていたのですが、よく、こういう状況で言えるな、と思いますね。

WHO「中国の死亡者数などは過少報告と認識」

WHOから警鐘

 中国では感染者や死者の数の公表を取りやめました。これに対してWHOは、医療機関への影響や死者数などの定期的な情報共有を要求しています。緊急事態対応 統括官のマイク・ライアン氏は「とりわけ死亡者数という点で、中国が現在発表している数字は過少報告されているとわれわれは認識している」としていて、テドロス事務総長も「われわれは中国に対し、入院者数と死者数に関するより迅速で定期的、かつ信頼できるデータの公表を求める」などと警鐘を鳴らしています。

中国は正確な情報公開を!

(勝田教授)
「私が一番気になるのは、変異株のことです。中国の中でいったいどんな株が発生しているのか、例えば、デルタ株がインドで発生したときは、感染者数が増えていた時です。そういう時に新しい株が発生する可能性があります。今のところ中国で流行しているのは、私たちがこれまで出会ってきているものなので対処できると思いますが、これから新しいものが出てきた時に、そこをもし隠蔽されてしまったら、対応ができません」

イギリス医療調査会社の推計「中国で4月末には合計で170万人が死亡」

 2022年12月のイギリスの医療調査会社の推計では、1月23日には1日に2万5000人の死者が出て、4月末には合計で170万人が死亡すると推定しています。

 阿古教授は、「中国の国民の間には『感染者を増やして集団免疫を獲得したい』という考えがひろがっている」といいます。そういう中でデマもいろいろ流れていて、オミクロン株が下痢を引き起こすとして、整腸剤が売り切れているということです。勝田教授は「“コロナ”対策なら無意味だ」としています。

Q、3月にある全人代があって、そのときに北京をロックダウンするわけにはいかないので、逆算で緩和したということはあるのでしょうか?
(阿古教授)
「意図的なものがあるかどうかは分からないのですが、あっという間に感染が広がっているのが不思議です。『早く感染者を増やして免疫を付けさせて、全人代までに一旦収めたいという気持ちがあるのでは?』と疑われても仕方がないと思います」

Q.一方で中国の地方の医療体制は相当脆弱なのでしょうか?
(阿古教授)
「中国の地方の医療体制はかなり脆弱です。私が北京にいたときに各地方に回って、農村地域の調査をしていたのですが、中国は貧富の差がかなり大きくて、医療機関なども大都市と中小都市、そして農村では全く状況が異なっています。特に持病がある方がコロナをきっかけに診療を受けなくてはならない場合、対応してもらえないという状況がいろんな地域で出ているようです」

Q.中国の国民は自国産のワクチンを信用していないと聞きますが…
(阿古教授)
「特に高齢者は、『自国産のワクチンは副作用が強いのではないか』とか、『打っても効かないのだから打たない方がいい』という考えの人もいて、ワクチンを打っている人の比率が低いと言われています」

3年ぶり行動制限のない春節 各国の対応は…

春節で”コロナ“感染が地方に波及

 2023年の春節休暇は、1月21日から27日です。阿古教授は「春節による人の移動で”コロナ“感染が地方に波及するのでは…」と危惧しています。

Q.春節で感染拡大する恐れは大きいのでしょうか?
(阿古教授)
「中国政府はもっと“コロナ”の情報を発信するべきです。発表される重症者や死者数が極端に少ないので、そういう情報を信じてたくさんの人が外に出てしまうと、そこで何が起こるかということです。正確な情報が無い中でこういう大きな移動があるということは、非常に無責任なことだと思います」

日本の水際対策

 日本は2022年12月30日から中国からの渡航者や中国に7日以内の渡航歴がある人に入国時の抗原検査を実施しています。1月8日からは抗原定性検査より精度が高いPCR検査や抗原定量検査を実施し、かつ出発72時間以内の陰性証明の提示を求める予定です。厚生労働省によりますと、空港検疫で陽性が確認された人の内、何人に中国への渡航歴があったかというと、12月31日には92人の陽性者の内90人に中国への渡航歴があり、1月1日には32人中28人、2日は84人中82人、3日は26人全員、4日は56人中53人に上ったということです。

Q.この数字を見ると中国で感染爆発は起こっていますよね?
(勝田教授)
「そうですね、実際の感染者数が多いということですね。中国の中で現役世代が感染しているのが分かります。ということは今後中国で、“コロナ”後遺症で労働戦線から離脱する人が増えるということが言えます。アメリカでは400万人が後遺症で働けない状況です。そういうことが中国で起こって経済の足を引っ張るのではないかと長期的な疑念を持っています」

Q. 中国はトライアンドエラーをしているように見えますが、大丈夫なのでのでしょうか?
(阿古教授)
「今までずっと自由がなかった中から、急に『感染していても職場に行ってください』というような状況になって、若い人ですと軽症で済むかもしれませんが、高齢者などは重症化して亡くなってしまうことがあるので、こんなに急速に感染を拡大させるのはあり得ないことです」

Q.“ゼロコロナ”をこれ以上続けたら経済が破綻するということもあるのでしょうか?
(阿古教授)
「そこが一番大きいと思います。『命を犠牲にして経済を回すのか』と言われても仕方がないと思います。人とお金が動けば経済が回るというのがあるとは思いますが、その裏側で多くの人が命を失うのなら、そういうことをやって良いのかと思います」

各国の水際対策

 アメリカでは1月5日から中国本土・香港・マカオからの入国者に、出国48時間以内の陰性証明の提示を求めるほか、インドやイギリス、韓国、フランスも検査や陰性証明を求めます。さらにモロッコでは1月3日から、国籍を問わず中国発の入国を全面的に遮断しています。

Q.中国が発表しないと、コロナウイルスの株が変異しているかわからないので、こういう入国時の検査で調べるしか方法はないのではないのでしょうか?
(勝田教授)
「そうです。そして、アメリカでは、無記名で中国からの入国者の検体を集めることをしていますので、もし中国で変異株が発生したときに最初に発表するのは、アメリカかもしれません」

各国の水際対策に中国政府が反発

各国の水際対策に中国報道官が発言

 こういう動きに中国の報道官は「我々は、政治利用のために感染対策を行うことに断固として反対する。対等の原則に基づき、相応の対応を取る」と発言しています。

Q.この前までゼロコロナをしていたのに、急に何を言っているのか、と思いますが…
(阿古教授)
「『科学的根拠のない中で、中国を差別するのか』という言い方なのですが、中国からの情報が全くない中でどう判断したらいいのか分からないから水際で情報を集めて、各国が自分たちで判断しようとしているのです。しかし、中国の国民がこれを聞くと『また欧米諸国が中国に意地悪をしている』と思うかもしれませんが、もうこういうストーリーはやめてもらいたいものです。日本政府もしっかり反論するべきです」

Q.中国の春節が終わってからが怖いと思うのですが…
(阿古教授)
「変異株が出てくる可能性もありますし、どれだけの感染者や死者が出るかというのもあります。中国には、日本人も多く住んでいますし、観光客の往来もありますのでしっかり見て行かないといけないと思います」

Q.これで習近平政権が揺らぐ可能性はありますか?
(阿古教授)
「経済次第です」

(情報ライブミヤネ屋2023年1月5日放送)

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