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【独自解説】東京五輪組織委員会が解散 最終経費は1兆4238億円、すでに赤字確定の“レガシー”も…札幌冬季大会誘致に生かすことはできる?元JOC参事が解説
2022年7月5日 UP
6月30日、東京2020オリンピック・パラリンピック大会組織委員会が解散しました。公開された最終報告書で強調されていたのは大会の遺産、“レガシー”です。一方で大会経費は当初の倍の約1兆4238億円となり、赤字が確定している競技施設も…。東京五輪の“レガシー”について、元JOC参事の春日良一さんと検証します。
東京大会の“レガシー(遺産)”とは?
6月30日、東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会が解散の日を迎えました。大会組織委員会の橋本聖子会長は「あらゆることがあったが、世界の皆さんに、あれだけ状況が困難であってもやっぱり日本だからやれたんだ、という大きな評価を頂いたということは職員の皆さんが、日々努力をしてくださった賜物だと思っている」と “コロナ禍”の大会を支えた職員に感謝とねぎらいの言葉を述べました。
さらに、公開された東京2020オリンピック・パラリンピック公式報告書の中で橋本会長は、「東京2020大会のレガシーの一つは人だと思う。この先の豊かな人生の実現とスポーツを通した社会貢献に一層の理解と協力願っている」と記しています。報告書の中でも、第1部で179回、第2部は2回“レガシー”という言葉が登場しています。
Q.東京大会は、“コロナ禍”で1年延期されて、無観客でよく開催できたなと思いますね。
(元JOC参事 春日良一さん)
「反対意見も多く、新型コロナや様々な困難のある中で開催したということが、唯一のレガシーだと思います」
(春日さん)
Q.この報告書をどう評価しますか?
(春日さん)
「注目は、大会経費です。この報告書で検証は困難で透明性に欠けると思います」
Q. 当初7340億円としていた大会経費は最終的にその倍の1兆4238億円になっていますが、
7340億円というのはどういった根拠の数字なんですか?
(春日さん)
「これは大会運営費が主体で、会場建設費やインフラの整備費は一部しか含まれない数字です。IOCがコンパクト開催を求めていて、安く見積もらないと招致できないという事情もありました。会場などの施設や整備した道路やバリアフリー化などの経費は、今後も活用することを前提に、開催都市が別途支出する形です。最終的な大会経費の中で、組織委員会が負担する6404億円については、スポンサー収入などで90%くらいは賄えています。残りの国と都の負担分を足すと7834億円になるので、当初の7340億円という数字とそんなに大きく差はないという見方もできます。ほかに会計監査員が指摘した1兆600億円やバリアフリー化などの費用は、オリンピックが来なくても将来必要だった費用です」
関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によると、東京大会の経済効果は6兆1442億円だということです。しかし、赤字のレガシーもあります。国の施設である国立競技場は毎年約24億円の赤字で、都の施設だと、東京アクアティクスセンターが毎年6億4000万円、カヌー・スラロームセンターは毎年1億9000万円の赤字などとなっています。黒字の施設を差し引いても都の赤字は全体で毎年7億3200万円です。
Q.五輪レガシーとは言いますが、赤字の施設はどうなるんでしょうか?
(春日さん)
「国民・東京都民が愛する財産として活用できるかがカギです。赤字だからと言って解体するのは最終手段です」
一方、東京・中央区にある選手村の建物や場所を新たに整備した「晴美フラッグ」ですが、「晴美フラッグ」の中にあるマンションは銀座や東京駅にも近く人気があり、購入は抽選で、その倍率は最高111倍となっています。
課題あり“2030冬季大会”札幌誘致
JOCの山下泰裕会長は6月21日、「現在、我々は2030年の冬季大会招致に向け、札幌市とともに取り組んでいる。東京大会のレガシーをつなぎ、スポーツがより良い社会作りに寄与できるように取り組んでいく」と話しました。札幌大会の運営費は2000~2200億円を見込んでいて、IOCの負担やスポンサー料などの民間資金で賄い、原則税金は投入しない計画だということです。また施設整備費について、既存施設を最大限に活用し、新たな施設はつくらず、例えば札幌市にない「そり競技施設」は長野市のものを活用して、全体で800億円に収めるとしています。
Q.札幌大会招致の課題はありますか?
(春日さん)
「前提として札幌市民が、冬季大会を迎え入れたいという気持ちがないと難しいです。東京大会でも、直前になって反対派の人が増え、スポンサーがCMを流せないということがありました。今も東京大会のことに触れにくい雰囲気が残るなかで、札幌大会は応援してもらえる大会にならないと、スポンサーが付かないということを考えておかないといけません」
Q.東京大会の経験で生かせるものはありますか?
(春日さん)
「東京大会は、無観客でしたが、ストリーミングなどで見た人が約30億人いました。これが東京大会の残した歴史的なものの一つです。札幌大会も今までのオリンピックにないものを考えないといけません。私たちはコロナ禍の困難な中でもオリンピックを開催できるということを学んだので、これを忘れてはだめだと思います」
(情報ライブミヤネ屋 2022年6月30日放送)


