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「間違えて…」“疑惑”の中4位に終わったカミラ・ワリエワ選手(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

【北京五輪】女子フィギュアまさかの4位ワリエワ選手、検出された“3つの薬物”とは?「ロシアにとってドーピングは“技術”」スペシャリストが解説

 “絶望”の異名を持つ15歳カミラ・ワリエワ選手(ROC)が、SPで首位に立っていたにもかかわらず、フリーでまさかの複数回転倒で4位に終わった、北京五輪フィギュアスケート女子シングル。IOCは、女子フィギュアスケートの順位は暫定的なものになる、ワリエワ選手のドーピングが確定すればROCの団体のメダルもはく奪される、と発表していた。解決が見えないドーピング問題、スポーツジャーナリストの二宮清純さんと、バレーボール女子日本代表のチームドクターも務めている荒木大輔医師が解説した。

背後に誰かが?検出された“3つの薬物”

バレーボール女子日本代表 チームドクター 荒木大輔医師

Q.荒木先生、なぜ暫定的な順位になるんでしょうか?

(荒木医師)
「まず同時に採取した検体を“A検体・B検体”の二つに分けて、それぞれ検査するんですが、(まだ検査されていない)B検体も陽性ということになれば、IOCの聴聞会が開かれて、それから決定されるので、今は暫定的なんです。」

ワエリワ選手から検出された3つの薬物(写真:長田洋平/アフロスポーツ)(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ニューヨークタイムスは、ワリエワ選手の検体から、心臓病の治療に使用される「トリメタジジン」以外に、同じく心臓病の治療に使用される「ハイポキセン」と「Lカルニチン」という薬物が検出されたと報じた。「ハイポキセン」と「Lカルニチン」は、ドーピングリストには含まれていないが、アメリカの反ドーピング機関は、この3つの薬物を組み合わせると、持久力を高め、疲労を軽減し、酸素の利用効率を高める、と指摘している。

母親が語った「ハイポキセン」服用の理由

 それに対してワリエワ選手側は、「トリメタジジン」は祖父の薬を誤って飲んだもの、「ハイポキセン」は“自身の心臓に異変があったため”とコメントした。しかし、ワリエワ選手の健康診断を行う団体は「ワリエワ選手の心臓に異常が確認されたことはない」という。

スポーツジャーナリスト 二宮清純さん

Q.二宮さん、意見が分かれていますが、どういうことなんでしょう?

(二宮さん)
「何か、言い訳をすればするほど苦しくなっていっている印象を受けます。ドーピング専門医に話を聞いたんですが、確かに『ハイポキセン』と『Lカルニチン』は禁止薬物ではないけれど、これに『トリメタジジン』を合わせると“悪い意味”でのシナジーが出てくる。競技力の向上に悪い意味で寄与してしまうというんです。15歳の少女が、自分の知識でこの3種類の薬物を摂取するとは考えにくいです。ということは、背後に誰がいるのか?相当な専門知識を持った人物が裏にいるということが、徐々に見えてきていると思います。」

Q荒木先生、禁止されていない2つの薬物についてどうお考えですか?

(荒木医師)
「例えば、『ハイポキセン』は、細胞の酸素消費量を減少させますので、持久力が上がるという効果があると思います。アンチドーピングの観点からは、薬物で競技力の向上を図るのは、禁止されていますので、たとえサプリメントであってもアスリートの体から出てくるのは、何か意図的なものを感じてしまいます。」

ロシアのドーピング “まさか”ではなく“またか”

ワリエワ側が主張する「トリメタジジン」検出の理由(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

Q.荒木先生、ワリエワ選手は「トリメタジジン」について、間違って祖父の薬を飲んでしまったと言っていますが、普通アスリートはものすごく気を使っていますよね。

(荒木医師)
「例えば、中国に遠征に行くと、食肉からドーピングにかかわる成分が体に入ったりしますので、選手は現地の肉製品は一切食べない、というようなことまでしています。また、ドーピングにかかわる成分の含まれた薬がたくさんあるので、そのあたりも講習会を開いて、そういうものは飲まないようにして、飲んでいい選抜医薬品を飲むように徹底しています。」

Q. 二宮さん、普通は選手の家族も気を使いますよね

(二宮さん)
「疑わしいにも程があるという感じです。五輪に出る選手というのは、ドーピングに対する教育はしっかりしているものですよ。例えば、今のスポーツ庁長官の室伏さんは、選手村で、目を離したすきに薬を入れられる可能性があるので、水を汲みに行くときも食事ごと持って行ったと言っています。そのくらい気を付けているんですよ。しかも今は“コロナ禍”ということもあって、さらに気を付けているはずなので、祖父の薬を誤って飲むなんてことは、おおたわ史絵先生が指摘するように、天文学的な確率でありえないと思います。」

Q.ロシアはドーピングに対してどう考えているんでしょうか?選手の家族は断れないのでしょうか?

(二宮さん)
「まさにそこだと思います。ロシアじゃなかったら“まさか”なんですが、ロシアの場合“またか”なんですよ。ずっと取材してきましたが、ロシアにとってドーピングは一つの“技術”なんです。ロシアでは『あらゆる手段を使っても目的を達成すればそれでいいんだ』という考えもあって、今回もドーピングが実行された可能性があると思っています。1988年のソウル五輪で、一番成績が良かったのがロシア(ソ連)で、2番目が東ドイツだったんですよ。1700万人の小国が、アメリカを抜いて2位になるというありえないことが起こったんです。そして、あとになってドーピングだったことが判明するんです。プーチン大統領もKGBの情報員として、当時東ドイツにいて、スポーツが国威発揚になることが分かったんでしょう。大統領就任後に『スポーツの勝利は100のスローガンより国民を団結させる』と言っています。そして、ソチ五輪の時に世界最多のメダルを取るわけですが、その後ドーピングによって、いくつかははく奪されています。これまでのことを考えると、常習犯といえます。」

ワリエワ選手の今後の可能性

Q.荒木先生、今後ドーピングとなった場合、ワエリワ選手側はスポーツ仲裁裁判所に持ち込むと思いますが、その場合の流れはどうなっていくでしょう?

(荒木医師)
「スポーツ仲裁所は裁判所と同じですので、いろいろなことを(ワエリワ選手側が)実証しないといけないでしょうね。選手本人だけでなく、家族であったり、コーチ、スタッフ皆さん関係してくると思います。」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年2月17日放送)

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