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【議論】「湿布薬もらうだけで保険料がかかる」『OTC類似薬』“保険適用除外”の動きに賛否両論 さらに世間にはまだ知られていない?メリットだらけの『リフィル処方箋』が話題に
2025年4月1日 UP
『高額療養費制度』の自己負担上限額引き上げの実施を見送ると表明した石破総理大臣。しかし、一方で、あの身近な医療費について見直しの声が上がっています。注目される『OCT類似薬』『リフィル処方箋』とは?医療ジャーナリスト・森まどか氏の解説です。
■『OTC類似薬』の保険適用除外で医療費削減なるか 「何がなんでも医者にかかろうとする人を抑えるのには良いかも」
三度の方針転換を経て、『高額療養費制度』の負担額の引き上げを見送ることを発表した石破総理。『高額療養費制度』は、医療費の自己負担額に上限を設け、超えた分は税金や保険料から支払われる仕組みですが、高齢化や高額の薬の普及などにより、この制度に使われる金額が年々増加しています。それに伴い、現役世代の保険料の負担も増えていることが課題となっているため、自己負担額の上限を引き上げ、現役世代の保険料負担を減らそうとしています。
そんな中、国会では、身近な医療費に関する議論が交わされていました―。
(日本維新の会・猪瀬直樹参院議員)
「高齢者が暇潰しに病院へ行って、なんとなく湿布薬もらってくる。これだけで保険料がかかる」
日本維新の会の猪瀬参院議員が指摘したのは『OTC類似薬』の処方についてです。
(猪瀬参院議員)
「(OTC類似薬は)処方箋を書かなくても買える薬。この部分で、恐らく1兆円は削ることができる」
日本維新の会は、『OTC類似薬』を保険適用から除外し、医療費を削減することなどを求めていて、猪瀬参院議員は政府に情報の適切な開示を求めました。
『OTC類似薬』の『OTC』とは“オーバー・ザ・カウンター”の略で、カウンター越しで販売することだといいます。そもそも『OTC医薬品』というものがあり、これは市販薬のことで、ドラッグストアなどで購入できるもの、つまり全額自己負担のものになります。
一方で、『OTC類似薬』というのは、市販薬と成分・効果はほぼ同じですが、処方箋が必要で、医療用医薬品となっているため“保険適用”ということです。そして今、この『OTC類似薬』について、保険適用から除外する動きが出ています。
この『OTC類似薬』について、街の人は―。
Q.『OTC類似薬』聞いたことありますか?
(30代)
「聞いたことないです。一概には患者さんの状況もあるので、言えないが、自分だったら市販薬でも良いと言われれば、そっちを買う選択肢もある」
(70代)
「(OTC類似薬は)保険適用でお願いしたいですね。薬に頼っている部分もありますので。何がなんでも医者にかかろうとする人を抑えるのには、良いかもしれない」
Q.処方箋を病院で書いてもらうものは、すべて“保険適用”になるんですか?
(医療ジャーナリスト・森まどか氏)
「そうですね。医療用の医薬品という、いわゆる処方薬といわれるものは、全て保険適用で、保険で賄っているんです。ただ、その『OTC』といわれる市販薬は、もともと医療用医薬品だったものから、一般的な市販薬に転用されたものもあるので、同じ成分のものでも、価格が違うという状況が起きているのがこの問題ですね」
東京大学大学院の五十嵐中特任准教授の推計によると、この『OTC類似薬』の保険適用除外で、約3200億円の医療費削減ができるのではというデータもあります。そんな中、日本医師会の宮川政昭常任理事は「OTC類似薬の保険適用除外は社会保障というセーフティーネットの毀損にしかならない」として、3つの懸念である、『医療機関の受診控えによる健康被害』また『経済的負担の増加(処方薬に比べ市販薬は高価格)』そして『誤った薬の使用や、相互作用による健康被害の拡大(副作用のリスク増)』を挙げています。
(森氏)
「日本の医療って、国民皆保険で、自分で行きたいと思ったときに行けるというのは、すごく良い点ではあったんです。ただ、少子高齢化になり、さらに医療の一つ一つが高額になってくると、どこかで抑制しなければならない。それが今、まさに転換期に来ていて、そこで『自分で出来ることは、自分でやろう』という流れが来ています。
ただそうすると、経済的な厳しさで、市販薬を買えず医療にアクセスできなくなってしまうという方が出たり、自分で判断をして市販薬を飲み続けて、実は大きな病気が見落とされていたということもあるので…。さらに今まで日常的な健康管理をしていた“かかりつけ医”のところに患者が少なくなって、経営が厳しくなるという側面もあると思います」
■処方箋1枚で最大2回、診察を受けずに薬の受け取りが可能に? メリットだらけの『リフィル処方箋』とは?
一方、2022年に導入された『リフィル処方箋』が話題を呼んでいます。
対象は“症状が安定している患者”のみで、一定の要件を満たした場合に、医師が定めた期間内に最大3回まで、繰り返し使用可能な処方箋です。つまり、1枚の処方箋で最大2回、診察を受けずに薬の受け取りが可能な制度だといいます。これにより、受診の回数や通院時間、診察の待ち時間を減らすことができ、診察費用などの負担軽減にもつながるのが大きなメリットなのですが…
Q.『リフィル処方箋』聞いたことありますか?
(30代)
「ないです。都度、お医者さんに行かなくていいなら、何回か使える処方箋をもらって、薬局に行けばいいなら、それはそれで楽だなと思います」
(60代)
「自分は同じ血圧の薬をもらうので、楽かもしれないですね。それはちょっと使いたいですね」
『リフィル処方箋』を知っている人はごく僅かで、利用率は0.05%に留まっているのが実情だといいます。
Q.『リフィル処方箋』は、まだあまり知られていないんですか?
(森氏)
「そうですね。まだ実際に医療機関への導入は低いですし、知っている方というのは、少ないと思うんです。ただ、日本の受診の回数ってとても多くて、年間平均11回ぐらいで、病院・診療所を受診しているというのは、ほかの国に比べると倍ぐらいなんです。『リフィル処方箋』などを使うことによって、多すぎる受診を減らしていくと医療費の抑制にもつながるので、例えば花粉症などで長く薬を飲む方や、症状が安定していて、ずっと同じ薬を飲む方が、相談してみるのは良いと思います」
(「情報ライブミヤネ屋」2025年3月11日放送)


