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計画性から見える犯行心理

【独自解説】京王線刺傷事件 “ジョーカー”に憧れた男の素顔とは?犯罪心理学者「計画している間も、ぞくぞくする興奮を味わっている」

京王線刺傷事件で容疑者送検

2021年10月31日、京王線の電車内で乗客が切りつけられるなどした事件。有名映画の悪役“ジョーカー”の仮装をして犯行に及び、現行犯逮捕された男が、「ライターオイルを10個くらい買った」と供述している事が分かりました。浮かび上がる入念な計画性と“強い殺意”。いったい服部恭太容疑者とはどんな人物なのでしょうか。犯罪心理学者の出口保行さんが独自解説します。

ナイフで刺したあと放火― 事件の概要

犯行当日の、服部容疑者の足取りがわかってきました。午後5時ごろに京王八王子駅から乗車し、午後6時ごろに渋谷駅で降車。40分後に再び渋谷から乗車し、調布駅に到着した後、新宿方面の電車に乗り換え、すぐに犯行に及びました。

1人が重体、16人がケガ。凶器は、刃渡り約30センチのサバイバルナイフ。そして、ライターオイルとみられる液体。現場となったのは京王線・新宿行きの特急列車。警視庁によると、服部容疑者は、3両目で座っていた72歳の男性に近づくと殺虫剤を噴射し、ナイフで胸を刺しました。その後、歩いて5両目に移動し、今度は2リットルのペットボトルに入れたライターオイルとみられる液体を車内にまき、火をつけたといいます。

“強い高揚感”感じる、犯行の計画性

(服部容疑者)
「人をいっぱい殺すなら東京がいいと思った」
「ハロウィーンだから電車に人が多くいると思った。京王線は上りのほうが人が多く、走行時間が長いから逃げられないと思い特急を選んだ」
「雑踏より(電車のほうが)確実に殺せると思った。殺せなくて悔しい」
「人を殺して死刑になりたかった」

服部容疑者を撮影した人は―
「震えてた。だけど顔は自信満々にやってやった感もある様子で足組んで、右手にナイフ持って、左手震えながらタバコ吸ってフゥーみたいな」

犯罪心理学者・出口保行さんは、服部容疑者の犯行について、このように分析しています。
「電車内を選んだのは密室で、犯行の確実性を高めるため。犯行時刻とされる10月31日午後8時以降は、選挙で各テレビ局が生放送中。即座に報道されるという事も考慮していたのでは」

犯罪心理学者・出口保行氏

Q.ライターの数、ライターオイルの量、ハロウィーンの日を選ぶ、特急電車を選ぶ、選挙特番を各局が生放送していたのでそこでニュース速報が入る、そこまで考えていたのですか?

(出口保行さん)
「非常に計画性が高いということですよね。このような事件というのは、何日間か考えてすぐに実行するというものではなくて、かなり長期間をかけて計画をしていく。どのタイミングでどういうことをすると、自分がしでかしたことが社会の中に浸透していくのか、伝わっていくのかということを十分考えているんです。もう1つこういう事件を起こす人間の特徴というのは、事件を起こすことだけが目的ではなくて、その事件を計画している間も非常に強い高揚感に包まれています。ぞくぞくするような興奮を味わっているその中で、こういう事件を起こして自分の存在をアピールするというのが、究極の目的になるのだと考えています」

衣装や煙草は、歪んだ自己顕示欲の表れ

入念な準備をしていたとみられる所持品

服部容疑者は、2021年8月に起こった、小田急線での刺傷事件に影響を受けたようです。

(服部容疑者)          
「小田急線の事件を参考にした。小田急線の事件ではサラダ油で火がつかなかったので、ライターオイルをまいた。」
「上野でライターオイルの缶を10個くらい買った。2リットルのペットボトルと500ミリのペットボトルに入れた。100円ライターは手を離すと火が消えるので、ジッポーライターにした」

犯行当時、服部容疑者はジッポーライター5個、ライターオイルとみられる液体が入ったペットボトル5本を持っていました。

犯行動機は“社会への不満”か―

Q.「6月ぐらいから大量殺人をしようと思った」と供述していますが、それから10月末まで何を考えていたのでしょうか?非常に高揚感に包まれている?

(出口保行さん)
「こういう事件を起こす人間は、そもそも社会に対して不満を持っている人間が多いのですね。自分を評価してくれないとか、自分が正当に評価されていない。そういう不満を、一気に社会の中で晴らしていこうとする。その事件を計画している自分というのが、普段いる実在の社会の中ではちっぽけな自分が、こんなことを考えてこんなことを実行しようと思っているんだっていうようなところに、高い高揚感を持っているということになります」

犯行の動機を、服部容疑者はこのように供述しています。

(服部容疑者)
「仕事で失敗をした。友人関係がうまくいかなかったので死にたいと思った。6月から大量殺人をしようと思った」

また、“ジョーカー”に憧れていると供述している服部容疑者。“ジョーカー”とは、映画「バットマン」シリーズの悪役で、社会に恨みを持ち大量殺人を企てます。服部容疑者は、犯行日のために衣装を購入しました。

(服部容疑者)
「ジョーカーは平気で人を殺すので憧れた」

この犯行動機と衣装の準備について、出口さんは―
「“社会から自分は正当に評価されていない”という不満から、『社会に一矢(いっし)報いたい』という攻撃行動に出る。他人を巻き込む“無差別テロ”を起こすことで、『自分は、こんなことができる』と存在を誇示したい。『ジョーカー』という話題性を狙った、歪んだ自己顕示欲の表れでしょう」

Q.犯行後に車内で煙草を吸っていますが、吸っていなくて吹かしている。普段は煙草を吸わないかもしれない。電車の外から撮影されているのを分かっていて、わざと虚勢をはって“ジョーカー”だと言って、陶酔感に浸っているように見えるのですが?

(出口保行さん)
「おっしゃるとおりで、そういう何かを演じることによって、自分が社会にどう発信されるのかってことを十分に考えてやっていたことだろうと思うんですね。その背景には、非常に歪んだ自己顕示欲っていうのがあって、自分のどういう姿勢、どういう形が、社会に大きなインパクトを与えることができるのか。これも十分高い計画性の中の1つであったと言うことができると思います」

福岡から東京へ 事件発生までの容疑者

約1か月前に上京 容疑者の素顔とは

服部容疑者とは、どんな人物なのでしょうか。地元・福岡の小中学生時代の同級生は当時の印象について…

(服部容疑者の小中時代の同級生)
「目立たない大人しい印象だった。中学は最初柔道部で、すぐ辞めて、陸上部の砲丸投げで頑張っていた印象だった」

この同級生が、服部容疑者と最後に会ったのが、4年前の成人式だったといいます。

(服部容疑者の小中時代の同級生)
「大人しい目立たない印象は変わらなかった。なぜ無関係な人を狙って巻き込んだのか…」

トラブルを起こすようには見えなかったという服部容疑者。やがて、人生の歯車が狂い始めます。捜査関係者によりますと、福岡で会社務めをしていた服部容疑者ですが、人間関係が上手くいかず、2021年6月に会社を辞め、7月に福岡を離れたということです。その後、服部容疑者は神戸、そして名古屋を転々とし、9月末に上京。滞在先は八王子市内で、滞在費用は消費者金融から借りていたということです。

日本でも必要となる“危機感“

Q.小学生のお子さんを持つお母さんに聞いたら、「自分と同じ車両に、ちょっと態度がおかしいなという人がいたら、車両を変わるしかない」とおっしゃいました。特に小さいお子さんは、それぐらいしか対処法がないですか?

(出口保行さん)
「今までは、我が国は『安心安全な国・日本』と言われていたんですよ。こんなことがそもそも起こるなんて想定外でした。ところがそういう性善説で考えるのは、今非常に難しくなっている。誰がいつどういう形で襲撃してくるかもしれないっていう危機感を、どうやって常に持てるか。私たちも外国に行けばそうですよね。外国に行って例えば地下鉄に乗れば緊張しています。やっぱり同じような緊張感というのが、残念ですが我が国でも必要になってきているということだろうと思います」

(情報ライブミヤネ屋 2021年11月2日放送)

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