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【独自解説】ヨーロッパ最大級・ウクライナ“原発”をロシアが占拠 激化する戦争止める希望の光とは? 専門家が解説します
2022年3月4日 UP
ロシアの侵攻が続くウクライナで、3月4日未明、ウクライナ南東部にある「ザポリージャ原子力発電所」が攻撃を受け火災が発生しました。ヨーロッパ最大級の原発でウクライナの発電供給量の約4分の1を占めているといいます。ザポリージャ州知事は「現時点では原発の安全は確保されている」としていますが、一方でウクライナのクレバ外相は「爆発すればチェルノブイリ原発事故の10倍の規模になる。ロシア軍は即座に攻撃をやめろ」と危機感をあらわにしています。長年ウクライナ研究と日本との交流に尽力されている神戸学院大学の岡部芳彦(おかべ・よしひこ)教授が解説します。
激化するウクライナ侵攻 ロシア軍の侵攻の根拠は?
Q.ウクライナの原発が狙われたとういのは、プーチン大統領の指示だとしたら常軌を逸していると思いますが、いかがですか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「先週から、戦争もそうですし、ミサイルもそうですし、本当に思ってもいないことばかり起こっているので、今日も私はちょっともうなんとも言えないっていうか、ショック以上のものがあるないうのが正直なところです。」
Q.ウクライナが核を作るんじゃないか、核を作る能力を持っているんじゃないか。非常に過激化した人たちが自らの原発を壊して爆発させるんじゃないかっていうようなことをまあ、プーチン大統領は言っているということですけれど、これは荒唐無稽ですよね?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「そうですね。これは理屈がつかないのではないかというのが正直な感想ですね。」
Q.岡部教授はドネツクには何度も訪れていらっしゃいますが、親ロシア派といわれてる住民の人たちが迫害されたり、差別されたりってことはあるんですか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「2006年~2013年の間に16回くらい行ったんですけれども、もちろんそんなことはないです。当然、ロシアが近い地域なので経済的な結び付きがあります。これは日本と中国の立場ですね、経済関係が強いというのと同じような感じなんですよ。1つは、もともとは民族的なロシア系の人もいるんですけれども、ここに住んでる人で『ウクライナ国籍で私ロシア人だよ』っていう人には私は会ったことがないので、どうしてこういう根拠がないことを言い出すのが不思議に思いますね。」
Q.ものすごく仲良くという言い方はおかしいですけど、平和に暮らしていたのですよね?
「そうですね、2013年までのときは、ドネツクは非常に風光明媚な田舎街という感じでこんな世界的な出来事に巻き込まれることすら想像がつかない町だったので、本当に信じられない思いです。」
ゼレンスキー大統領はどんな人?
Q.実際にお会いになったゼレンスキー大統領はどんな人柄でしたか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「そうですね、私は最初に会ったときは、2019年の大型の国際会議で、たまたま前に立たれたんですけど、ちょっと肩をポンポンって叩いて『写真撮ってください』って言うと、『いいよ』って言われて、私は実はその日まで自撮りをしたことがなくて、それで大統領が『自撮りをしたことないのか』と言われて、『ないです』と答えると私のカメラでしてくれた。私が自分のカメラを操作できなくて、モタモタしているとゼレンスキーさんが自ら撮ってくれたっていう形です。その1か月半後ぐらいに天皇陛下のご即位の式典がありまして、そこに出席するため日本に来られまして、そのとき、ウクライナの民族衣装を着ている私の事を覚えていて、『あっセルフィ―マンだ!』っていうふうに言われて。『自撮りできるようになったか?』と聞かれて『できるようになりました』というやり取りがありました。」
Q.政治経験のないゼレンスキー大統領は支持率は28%と低く感じますが、ウクライナの人はどう見ていたのでしょうか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「実はウクライナで20%中盤から後半という大統領の支持率は低くないんですね。歴代の大統領の中ではトップクラスですから。どうしてかというと、大統領選挙の国なので、世論調査の取り方は『明日、大統領選挙があったら誰に投票するか』という形、それで25%ぐらいだとすると、例えば対立候補の人の方が10%とか20%ほどでも通るんです。日本と違って、大統領をするかという取り方をしていないから、こういう数字が出るというところも見ていかなければならないかと思います。『大統領の行動自体を支持しますか』という風にとると、今は95%ぐらいまで来ているという感じですね。」
Q.ゼレンスキー大統領が「徹底抗戦だ、自分たちはキエフにいるんだ」とSNSを通じて、まさに言葉の力で世界に呼びかけているっていうのは、ウクライナの人たちにとってはどういう人であるのでしょうか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「やっぱりもちろん、大統領ですので戦争の前も今も支持しない人はいるのかもしれませんけど、非常に、戦時の大統領としてうまく振舞っているし、よくやっているなという印象を持っています。なにより、あまり知られていないんですけれどウクライナは“東ヨーロッパのシリコンバレー”といわれるぐらい、ITなんかも盛んでそれはゼレンスキー大統領の政策でもあったんです。情報を自撮りでフェイスブックとかインスタグラムでどんどん国民に呼びかけている。テレビ塔が攻撃されて通信がしにくくなっても、国民が理解できるように話しているような印象を持っています。」
Q.ウクライナの方が、大国ロシアと対立しようとか、いわゆる過激派の人たちがネオナチみたいになっているというのは考えにくいのですが。
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「これは当たり前のことなんですけれど、どの国でも過激な人はいます。日本にもヘイトスピーチをする人というのが当然一定数いるわけで、もちろんウクライナにもロシアにもいる。その一部分を取り上げて、全体がネオナチだと、しかもそれに突き動かされているのが、今のゼレンスキー大統領だというのはちょっと無理があるんじゃないかなと。ゼレンスキー大統領はユダヤ系の出身でもありますし、ロシアはかなり極端な、あるいは虚偽の主張をしているなと感じていますね。」
Q.1歩間違うと核戦争になりかねないところまで緊張感をプーチン大統領は高めているわけですよね。これはそこまでしてウクライナ組総攻撃しなければならないのはなぜなのでしょうか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「プーチン大統領は当然、大統領なので安全保障のことをするのはお仕事の1つだと思うんです。だから当然NATOの加盟問題とは口に出す、気にするのは当たり前だと思います。プーチン大統領は2021年7月に論文をウクライナとロシア語で出されてまして、それによるとロシア人とウクライナ人は一体で、『ロシアなくしてウクライナはない』というような、『ウクライナの主権も認めず国ではない』ということを書いていまして、最近そういうことが非常に多かったんですね。マクロン大統領と会ってあの長い机でコロナ対策を話し合われた時は、5時間しゃべったということだけが話題になったんですか、話の中心はほとんど歴史修正主義だったということがあって、そういう考えに基づいて今の軍事進攻が行われている可能性十分あると思います。」
Qプーチン大統領の『強いロシアというものをなんとか見せつけなければいけない』というようなものにとらわれているような気もするんですが。
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「それももちろん1つあると思います。一方で、プーチン大統領が自分で学ばれた歴史観、それはあまり正しくないというか偏った歴史かなと思いますけども、それに基づいてるという話も一方で理由の1つであるんじゃないかなと思います。」
広がる、ウクライナ支援の輪
Q.世界が連帯していって「おかしいぞ」という空気を作っていくしかないということですか?
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「そうですね。これは本当に歴史的なデモだったなというふうに思います。ロシア大使館がこんな反応をするのも珍しいですし、今ロシアの中では、東ウクライナ・ジェノサイドを止めるためという理屈なのでここまでしか書けないですね。だからロシア側のプロパガンダはこれで明らかになるという形です。どんどん声を上げていくと世界の反応が出ると思います。私も昨日は4人の元・駐ウクライナ大使と会う機会がありまして、私が会長を務めているウクライナ研究会の抗議の声明文をお渡しをさせていただきました。どんどんそういう声をですね、多くの人に伝えて広げていくというのがやはり重要なんじゃないかなっていうふうに思っています。」
Q.各国がかけている経済制裁は効果があるまでに時間がかかります、そんな中でも声を上げて世界が団結していくしかないということですよね。
(神戸学院大学 岡部芳彦教授)
「そうですね、どうしてもこういう戦争とかが起こると、そのときはすごく関心が集まるんですけれども、本当に早く終わってほしいと。私はいつもウクライナを表現する時『陽気で、明るく、おいしい国ウクライナ』と言って、今その魅力を紹介できなくて本当に悲しいんですけども、関心を持ち続けてですね、どんどん声を大きくしていって、あるいは金銭、できる限りの支援を続けることが大事なんじゃないかなと思います。」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年3月4日放送)


