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【独自解説】中国気球問題「習近平氏が知らなかった可能性高い」アメリカへの反発は「習氏のメンツを保つため」専門家が解説
2023年2月20日 UP
2月4日、中国の気球がアメリカで撃墜されたことで生じた米中の対立ですが、両国にはどんな思惑があるのでしょうか?また、よく似た気球は世界各地で目撃されていています。いったい中国は何の目的で気球を飛ばすのでしょうか?さらに、今回の気球のことを、習近平氏が知らなかったという可能性も…ジャーナリストの福島香織氏が解説します。
中国はなぜ“気球”を使ったのか?
今回アメリカが撃墜した気球ですが、直系が約60mで、これは20階建てのビルに相当します。その下にスクールバス2~3台分の大きさのものが吊り下げられており、プロペラも付いていて、遠隔で操縦できる可能性もあるとのことです。
Q.アラスカからカナダを通ってアメリカに飛来していますが、中国側で操縦していたのでしょうか?
(福島香織氏)
「中国は、ジェット気流より上を飛べる気球を研究開発中だと聞いていますので、操縦できるかもしれませんが、まだ開発途上の可能性もあるし、よく分かっていません。しかし、こういう大きな気球を、風任せにして飛ばすかな?とも思います」
この中国の気球が、民間の気象研究用なのか軍事用なのかについて、福島氏は「民間の気球だとしても“どこの企業”か中国は答えていない。一方で、中国では軍事気球の研究や開発を行っているのも確か」だと言います。
Q.中国には、民間にこのような気球を作る企業があるのですか?
(福島氏)
「気象気球の大手が、中国には2社あります。そのうちの一つは、民間ですが“軍民融合企業”といわれていて、軍に技術を提供しているといわれています。気象用だとしても、軍用に情報を使われています」
偵察用の人工衛星があるのに、なぜ気球なのかについて、「防衛研究所」防衛政策研究室の高橋杉雄室長によりますと「人工衛星は、通過時間をアメリカ側に把握されているため、情報収集を制限されやすい」からだといいます。そして、「気球なら不意打ちで飛ばし、1か所に長時間とどまって情報収集ができる。また、衛星より高度が低いので、より精度の高い情報が得られるメリットがある」としています。気球の目的については「色々な波長の電波を傍受し、交信パターンや周波数の解析することではないか」ということです。
Q.アメリカの情報によると、この気球を撃墜するのに一回3000万~5000万円かかったということですが…
(福島氏)
「気球から直接攻撃がなければ、放っておいても良いのかもしれませんが、中国の軍用気球は、ドローンの運搬実験や、ミサイルを発射する実験をしています。また、電磁攻撃で兵器の計器を狂わせる実験もしているといいます。戦闘機で撃ち落とすのはお金がかかりますが、ただのぞき見をしているだけではないので、放っておいて良いわけではありません」
習近平氏が知らなかった可能性も
当初中国は「気象研究用のもので、誤って米国に入った」と説明していました。しかし、アメリカが気球を撃墜した後は「武力行使は過剰反応、国際的慣例に反する」と批判をしました。その後2月13日に、中国外務省は「アメリカの気球が、去年から数十回、違法に侵入して来た」と主張しています。
当初、抑制的な態度だった中国が急変した理由について、福島氏は「習近平政権にとって最優先なのは経済の立て直しなので、アメリカとの関係改善は不可欠な要素です。中国外務省も奔走して米中首脳会議を実現させ、2月5日にブリンケン国務長官が訪中する予定だという最中に、この気球問題が起こってしまったので、アメリカを怒らせないためのコメントを発表しました。しかし、ブリンケン国務長官と王毅政治局員が決裂してしまい、中国政府はメンツのために反発するしかなかった」としています。しかし2月14日、アメリカのカービー戦略広報調整官は、2月10日以降に撃墜した気球について「未回収のため明確には言えないが…」としたうえで「商業目的や研究用の気球だった可能性も」とアメリカ側が対応を変化させてきています。
なぜこのタイミングで偵察気球が飛ばされたのかについて、福島氏は「偵察気球がこのタイミングで領空侵犯する事を、習近平氏は知らなかった可能性も考えられる」といいます。その理由の一つは「『反習近平派』が、習近平氏の失脚を狙い画策したのではないか」というものです。また、逆に「『親習近平派』が、習近平氏を思い行動した可能性もある」といいます。そして、「例え習近平氏が知らなかったとしても『知らない』と言える立場ではない、米中関係は悪化していくのでは…。メンツを重んじる“中国ならではの結末”になるのではないか」ということです。
Q.習近平氏が今回の気球のことを知らなかった可能性が高いのですか?
(福島氏)
「この気球は、解放軍マターのものだったと思います。当初言われていたように、本当にコントロールを失って勝手にアメリカの領空を侵犯してしまったとなると、これはこれで軍のメンツは大いに傷付きます。また、軍が習近平氏のためにしたのか、習近平氏の足を引っ張るためにしたのか、どちらにしても習近平氏がそのことを知らなかったとすると、習近平氏のメンツに傷が付きますので、中国の国内的には、『アメリカが全部悪い』と開き直りを押し通すしかないのです」
(情報ライブミヤネ屋2023年2月16日放送)


