10月6日夕方、ことしのノーベル生理学・物理学賞は、大阪大学栄誉教授の、
「坂口志文(しもん)さん」
に決まりました。おめでとうございます。日本人(個人として)29人目の受賞。
一夜明けての会見の様子を載せた翌7日の夕刊各紙には、坂口さんの言葉である、
「実感わいてきた」
を「見出し」に取っていました。並べてみると、
(読売)「実感わいてきた」
(朝日)「実感 わいてきた」
(毎日)「実感湧いてきた」
(産経)「実感わいた」
(日経)「実感湧いてきた」
で、「産経」だけ「わいてきた」ではなく「わいた」になっていますが、私が注目したのは、「わいてきた」か「湧いてきた」か、つまり、
「『わく』が『平仮名』か?『漢字』か?」
という点でした。それで分類すると、
*「わいてきた」「わいた」=読売・朝日・産経
*「湧いてきた」 =毎日・日経
でした。「ミヤネ屋」では、
「湧いてきた」
と「漢字表記」にしました。発注されたテロップの中には、
「沸いてきた」
と「同音誤字」もあったので直しましたが。
そもそも「湧」という漢字は、2010年までは、
「常用漢字ではなかった」
ので、「平仮名」で「わく」と書いてきました。(「沸騰する」の「沸く」は、その頃から「常用漢字」でしたが。)その「名残」があるから「平仮名を使う」というのが「わいてきた」と書く理由の一つ。
もう一つは、この文章には「助詞の『が』」がないので、漢字で「湧」を使うと、
「実感湧いてきた」
というように「実感」と「湧」で「漢字」が続いて、「実感」が目立たないので「平仮名」で「わいてきた」にしたのではないかと思われます。
それなら「が」を入れて、
「実感が湧いてきた」
にすればいいのですが、
「文字数が増える」
ことを嫌っているのでしょう。
でも、「朝日」は「実感」と「わいてきた」の間に「スペース」を空けていますから、それなら「が」を入れて「湧いてきた」にすればいいのにとも思います。しかし、どの社も「が」は入れていないことから考えると、
「坂口さんの言葉に『が』が入っていなかった」
とも考えられます。
いずれにせよ、せっかく「湧」が「常用漢字」に入ったのだから、私は積極的に使ったらいいのになと思っています。ノーベル賞とは全然関係ないですが。


