ジェーン・スーさんの本「介護未満の父に起きたこと」(新潮新書)を読んでいたら、
「ビジネス書の平台の前に仁王立つ」(23ページ)
というように、
「仁王立つ」
という言葉が出て来ました。形容動詞句などに使われる「名詞」の、
「仁王立ち」
はありますが、「動詞」で、
「仁王立つ」
は見たことがありません。ありそうでない。普通は、
「仁王立ちする」「仁王立ちとなる」
でしょうね。
そして引くまでもなく、辞書には採用されていないでしょう・・・一応、新語の採用に積極的な「三省堂国語辞典・第八版」を引きましたが「仁王立つ」は載っていませんでした(「仁王立ち」はありました)。
それでも果敢に、ジェーン・スーは使う!と。
そこが、文体・文章の魅力なんですね。
「○○立つ」
という言葉を「逆引き辞典」で引いてみると、
「香り立つ」「匂い立つ」「役立つ」「燃え立つ」「泡立つ」「いきり立つ」「勇み立つ」「旅立つ」「浮かれ立つ」「浮き立つ」「浮き足立つ」「生い立つ」「押っ立つ」「思い立つ」「切り立つ」
など、たくさんありますが、この中でそれが「○○立(だ)ち」という「名詞」になっているものは、
「(お)役立(だ)ち」「泡立(だ)ち」「旅立(だ)ち」「浮き足立(だ)ち」「生い立ち」
ぐらいかなあ。
この多くは「元の動詞」の「立つ」も「だつ」と「濁って」いて、「連用形の名詞化」でも、やはり「だち」と「濁り」ますね。
「生い立つ」「生い立ち」は「濁りません」が、そもそも「生い立ち」は言うけれど「生い立つ」という「動詞」は、辞書に載ってはいるものの、余り言わない(使わない)言葉ですね。どちらかと言うと「立つ」が、
「補助動詞的ではない使われ方」
をしている言葉ではないかと思います。
(2025、8、29)


