参議院議員選挙の投票日を、7月20日に控えています。
皆さん投票には行きましょうね!「期日前投票」もあります!
さてそんな中、2025年1月5日の「読売新聞」のコラム「広角多角」で、伊藤俊行編集員が書いていた、かのウィンストン・チャーチル英国首相が1947年11月11日に英国・下院議会で述べた名言、
「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。」
(It has been said that democracy is the worst form of government except
all others that have been tried.)
を基に「民主主義」について考えてみます。この言葉はもちろん、
「民主主義は最悪の政治形態」
と言っているのではなく、
「ワーストではないが、ワース」
「ベストではないが、ベター」
「民主主義という政治形態は良くないが、これまであった政治形態の中では、ベストだ」
「究極の理想形ではないが、ベター」
という「逆説的な表現」をしているのです。「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる」に続く言葉は、
「それにもかかわらず、これに優る政治制度を人類は発見していない」
なのです。
「なぜ、民主主義は最悪か?」
と言うと、
「ほうっておいても、国民のために勝手に誰かがうまくやってくれるシステムではなく、国民一人一人が常に監視し努力をすることによって、かろうじてその権利が保たれる政治形態だから」
でしょうね。つまり、
「人間は、放っておくと、すぐにそういった面倒なこと(義務・権利)を投げ出してしまう動物だから」
でしょう。他の政治形態は、
「たとえそういった努力をしても(もしくは、そういった努力ができない)報われない」
ということで「論外」なのでしょうか。
ここ20年ほど、
「民主主義は『多数決』だ」
という論理を振りかざす人たちが多くいます。
「数の論理」
ですね。でも、「多数決の原理」は万能ではありません。「多数」というのは、
「比較多数」(相対的)
なので、「51:49」の場合の、
「51が多数」
ですが、その数とほぼ同じ数の、
「49が少数」
になってしまいまう。だからこそ、「民主主義の原理」には、
「少数意見の尊重」
ということも書かれているのですが、「数の論理」を唱える人たちは、あえてそれを「無視」します。
また「フランス革命」のスローガンである、
「自由・友愛(博愛)・平等」
という「3本柱」は、全て、
「プラス方向」
を向いているように思いがちですが、よく考えたら、
「『自由』と『平等』は全く『逆』のベクトル」
になっています。そのバランスを取るのが、
「友愛(博愛)」
なのです。つまり「少数意見の尊重」的なものですね。「民主主義」においては、
「全く何の制限もない自由など、存在しない」
のです。また、
「民主主義の対極にある政治形態」
と思われがちな、
「ファシズム」「全体主義」
ですが、必ずしもそうではない。2019年12月18日に私が書きかけた言葉ですが、
「『ファシズム』は完璧を求め不完全を排除する思想。つまり、そういった種類の『今の愛国主義者』は『ファシスト』である。」
「AIが万能であるという考え方こそが短絡的だ。基本的に独裁を支持する人たちは、人間の知性を憎んでいると思われる。だから、人間以外の『万能』にあこがれるのだ。」
さらに、今年(2025年)3月12日に書きかけた言葉は、
「『ファシズム』とは『衆愚政治の一つの形』なのではないか?民主主義が行き詰まった時にスーパースターを求める。そして自ら考えることやたえることを捨て、全てを権力者に委ねる。エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』や、オルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』のように。」
「ファシズムは、民主主義の中から生まれる」
のです。決して油断してはいけないのです。
2004年から私が読んで書いてきた4000冊を超える「読書日記」の中で、
「民主主義」「ファシズム」「自由」「多数決」
という言葉が含まれたタイトルを、ここでご紹介しておきましょう。
【民主主義】
*2004読書日記104『銃を持つ民主主義』(松尾文夫、小学館:2004年)
*2010読書日記052『民主主義が一度もなかった国・日本』(宮台真司、福山哲郎、幻冬舎新書:2009年)
*2013読書日記048『バカに民主主義は無理なのか?』(長山靖生、光文社新書:2013年)、
*2013読書日記187『来るべき民主主義~小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(國分功一郎、幻冬舎新書:2013年)
*2014読書日記083『からくり民主主義』(髙橋秀実、新潮文庫:2009年)
*2014読書日記181『民主主義はいかにして劣化するか』(斎藤貴男、ベスト新書:2014年)
*2016読書日記088『ゴーマニズム宣言~民主主義という病い』(小林よしのり、幻冬舎:2016年)
*2016読書日記193『属国民主主義論~この支配からいつ卒業できるのか』(白井聡・内田樹、東洋経済新報社:2016年)
*2017読書日記074『路地裏の民主主義』(平川克美、角川新書:2017年)
*2019読書日記115『資本主義と民主主義の終焉~平成の政治と経済を読み解く』(水野和夫・山口二郎、祥伝社新書:2019年)
*2022読書日記002『代表制民主主義は なぜ失敗したのか』(藤井達夫、集英社新書:2021年)
【ファシズム】
*2004読書日記090『安心のファシズム~支配されたがる人びと~』(斎藤貴男、岩波新書:2004年)
*2008読書日記179『禁煙ファシズムと戦う』(小谷野敦編著・斎藤貴男著・栗原裕一郎著、ベスト新書:2005年)
*2009読書日記223『日本流ファシズムのススメ』(田原総一朗・佐藤優・宮台真司、ぴあ・エンジン01選書:2009年)
*2014読書日記160『熱狂なきファシズム~ニッポンの無関心を観察する』(想田和弘、河出書房新社:2014年)
*2016読書日記083『反知性主義とファシズム』(佐藤優×斎藤環、金曜日:2015年)
*2018読書日記123『永遠のファシズム』(ウンベルト・エーコ著、和田忠彦訳、岩波現代文庫:2018年)
*2019読書日記076『現代に生きるファシズム』(佐藤優、片山杜秀、小学館新書:2019年)
*2022読書日記067『デジタル・ファシズム~日本の資産と主権が消える』(堤未果、NHK出版新書:2021年)
【自由】
*2018読書日記173『自由からの逃走』(エーリッヒ・フロム著・日高六郎訳、東京創元社:1951年)
*2021読書日記090『自由への手紙』(オードリー・タン=語り、クーリエ・ジャポン編集チーム=編、講談社:2021年)
*2023読書日記073『音楽は自由にする』(坂本龍一、新潮文庫:2023年)
【多数決】
*2015読書日記154『多数決を疑う~社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴、岩波新書:2015年)
そして、今回(9999回)の「民主主義」と「ファシズム」に関連した話は、過去にも書いてきましたが、タイトルを検索したら「ファシズム」は何度かありましたが「民主主義」というタイトルでは書いていませんでした。「平等」というタイトルのものもありました。
*平成ことば事情1520「ファシズム」(2004年)
*平成ことば事情4875「ファシズム断章」(2012年)
*平成ことば事情5487「平等」(2014年)
*平成ことば事情6940「ファシズムの14徴候」(2018年)
*令和ことば事情8174「自由と平等」(2021年)
よろしければ、これらもお読みください。


