10021「なぜ『米』を『コメ』とカタカナで書くのか?」

2025 . 7 . 18

10021

 

 

昨年来の、

「令和の米騒動」

に関連して、新聞やテレビのニュースでは、

「米」

のことを「カタカナ」で、

「コメ」

と書くのはなぜか?という質問を、いつもよく行くスペインバルのマスターから受けました。たぶん、多くの視聴者も不思議に思っているはずだと。

たしかに、そう言われれば、そうかもしれませんね。「米」なんて漢字は小学校の低学年で習うのですから、漢字で書けばいいのにと思う方も多いことでしょう。(でも実際は、あんまりそういう質問は受けませんね。それも不思議ですね。)

さてそのことは、新聞社や通信社・放送局の用語担当者が参加している、日本新聞協会の「新聞用語懇談会」が出している、

「新聞用語集2022年版」

の153ページに書かれています。引き写すと、

「動植物の名前で新聞常用漢字で書けないものは片仮名で書く。表内字でも動植物学上の和名として扱う場合は片仮名書きを原則とする。ただし、一般名称として、または比喩的に使う場合などは、平仮名(または新聞常用漢字)書きでよい。(例)イワシ エゾオオカミ バラ ヒグマ ミンククジラ 一匹おおかみ いわし雲 杉並木 玉虫色 ぼたん雪 八重桜 わしづかみ」

うーん、分かります?要するに、

「植物や動物名は、カタカナで書くのが原則になっている」

のです。ですから、植物の「イネ」の実である「コメ」は、

「コメの値段」「コメ農家」「コメ販売店」

などと「カタカナ」で書いているのです。ただ、

「お米」

と「お」を付けて親しみを込めて呼ぶのは、カタカナで、

「おコメ」

と書くのはなじまないので、「ミヤネ屋」では、

「お米」

と漢字で書いています。漢字を使って「コメの値段」「コメ農家」「コメ販売店」と同じ内容のことを書くとさうるならば、

「お米の値段」「米作農家」「米穀販売店」

とするでしょう。「お米」を除くと、

「ベイ」

と読む場合ですね。それと、

「タイ米」「アメリカ米」「台湾産米」

のように、

「マイ」

と読む場合ですね。

新聞や放送で、漢字で「米」と書くと、

「アメリカ」(「亜米利加」の略)

のことを指すことも多いです。

「米関税」

というのは、トランプ大統領がかける、

「アメリカの関税」

のことです。「コメ」の関税は、

「コメ関税」

です。もし、「アメリカ米(まい)」(「米米(べいまい)」とは書きません)にかける関税のことを言うなら、

「米コメ関税」

と書くことになるでしょう。

さて、冒頭に書いた、

「米騒動」

というのは、そもそも、

「大塩平八郎の乱」

のことを指しています。その当時は「米騒動」と書きました。それで「漢字で書く」のです。今回の「令和」の「コメ」に関する騒動は、植物の「コメ」に関する騒動ですから、

「コメ騒動」

ですが、「令和」の時代に「大塩平八郎の乱」と同じような「歴史的事件」としての騒動が起きていると捉えるならば、

「令和の米騒動」

と「漢字」で書くでしょう。「ミヤネ屋」では、そうしています。

日本語の表記は、同じものを指して、

「漢字」「平仮名」「カタカナ」

と「3通り」あり、その書き方によって「ニュアンス」が変わります。

これを理解して使いこなすのは、なかなか難しいですねえ。

 

(2025、7、17)