「ミヤネ屋」のテロップをチェックしていたら、
宮城県の地名で、
「七ヶ宿町」
というのが出て来ました。これは、
「しち『か』しゅくまち」
と読むようです。小さい「ヶ」が「が」と濁るのではなく、
「『か』で濁らない」
のです。同じ宮城県には、
「七ヶ浜町」
という町もあって、そちらのほうは、
「しち『が』はままち」
と読み、
「『が』と濁る」
のです。なぜなのでしょうね?考えてみました。
「七ヶ宿町」は、「ヶ」の後に来る「宿」を「シュク」と「音読み」していますよね。
例えば、
「四ヶ郷(しかごう)」(和歌山)
「五箇山(ごかさん)」(富山)
「六ヶ所(ろっかしょ)村」(青森)
と同じような感じで、
「『ヶ』の後ろに『音読み』が来ると『カ』と濁らない」
のではないでしょうか?
それに対して「七ヶ浜町」は、「ヶ」の後に来る「浜」は「ハマ」と「訓読み」しています。つまり、
「『ヶ』のあとが『訓読み』だと『ガ』と濁る」
のではないでしょうか?
「七里ヶ浜(しちりがはま)」(神奈川)
「外ヶ浜(そとがはま)町」(青森)
「龍ヶ崎(りゅうがさき)市」(茨城)
「茅ヶ崎(ちがさき)市」(神奈川)
「鶴ヶ島(つるがしま)市」(埼玉)
もそうですね。でも、
「鳩ヶ谷(はとがや)市」(埼玉)
「鎌ケ谷(かまがや)市」(千葉)
は後ろに「谷(ヤ)」という「音読み」が来ますが「ガ」と濁りますね。「例外」もあるということで。<※「追記2」参照。「ヤ」は訓読みでした>
この「谷」を「訓読み」の「タニ」ではなく、「音読み」で「ヤ」と読むには「アイヌ語の影響」という説もありますね。東日本に多く、西日本にはありません。
一方「七」を「なな」と読む地名もあります。
「七飯(ななえ)町」(北海道)
「七尾(ななお)市」(石川)
ですね。こういった、地名(市町村名・郡名)に、
「一・二・三・四…九・十」などの「漢数字」が付く自治体で、
「イチ・ニ・サン・シ・…ク・ジュー」という「漢語読み」か、
「ひと・ふた・み・よつ・…ここの・とう」という「和語読み」かで分けてみましょう。
★【漢語読み】47
0(北海道)***
8(青森)八戸市・五所川原市・七戸町・六戸町・六ケ所村・三戸町・五戸町・(三戸郡)
6(岩手)一関市・二戸市・八幡平市・一戸町・(九戸郡)・(二戸郡)
3(宮城)七ヶ宿町・七ヶ浜町・南三陸町
2(秋田)八峰町・八郎潟町
0(山形)***
1(福島)二本松市
1(茨城)五霞(ごか)町
0(栃木)***
―(群馬)※六合(くに)村
0(埼玉)***
2(千葉)九十九里町・一宮町
2(東京)八王子市・八丈町
1(神奈川)二宮町
3(新潟)三条市・五泉(ごせん)市・(三島(さんとう)郡)
0(富山)***
0(石川)***
0(福井)***
0(山梨)***
0(長野)***
2(岐阜)安八(あんぱち)町・七宗(ひちそう)町
0(静岡)***
2(愛知)一宮市・一色町
0(三重)***
1(滋賀)近江八幡市
0(京都)***
1(大阪)四条畷市
1(兵庫)三田市
2(奈良)五條市・三郷(さんごう)町
1(和歌山)九度山町
0(鳥取)***
0(島根)***
0(岡山)***
0(広島)***
0(山口)***
0(徳島)***
0(香川)***
1(愛媛)四国中央市
2(高知)四万十市・四万十町
0(福岡)***
1(佐賀)伊万里市
2(長崎)五島市・新上五島町
0(熊本)***
0(大分)***
1(宮崎)五ヶ瀬(ごかせ)町
1(鹿児島)南九州市
0(沖縄)***
【和語読み】70
5(北海道)三笠市・千歳市・七飯町・八雲町・新十津川町
2(青森)十和田市・三沢市
0(岩手)***
0(宮城)***
1(秋田)三種(みたね)町
1(山形)三川町
2(福島)三島町・三春町
1(茨城)八千代町
1(栃木)上三川(かみのかわ)町
1(群馬)※六合(くに)村・千代田町
3(埼玉)八潮市・三郷(みさと)市・三芳(みよし)町
4(千葉)千葉市・八千代市・四街道市・八街市
3(東京)千代田区・三鷹市・三宅村
2(神奈川)三浦市・(三浦郡)
2(新潟)小千谷市・十日町市
0(富山)***
1(石川)七尾市
2(福井)(三方(みかた)郡)・(三方上中郡)
2(山梨)市川三郷(みさと)町・(西八代(やつしろ)郡)
1(長野)千曲市
1(岐阜)八百津(やおつ)町
1(静岡)三島市
0(愛知)***
2(三重)四日市市・(三重郡)
0(滋賀)***
1(京都)八幡市
3(大阪)八尾市・(三島郡)・千早赤阪村
1(兵庫)三木市
2(奈良)三宅町・十津川村
0(和歌山)***
2(鳥取)(八頭(やず)郡)・三朝(みささ)町
1(島根)(八束(やつか)郡)
0(岡山)***
3(広島)三原市・三次(みよし)市・廿日市(はつかいち)市
0(山口)***
2(徳島)三好市・(三好郡)
2(香川)三豊(みとよ)市・三木町
1(愛媛)八幡浜市
1(高知)三原村
3(福岡)八女市・(三井(みい)郡)・(三潴(みづま)郡)
1(佐賀)(三養基(みやき)郡)
0(長崎)***
3(熊本)八代市・(八代郡)・五木村
1(大分)九重(ここのえ)町
2(宮崎)三股(みまた)町・高千穂町
2(鹿児島)三島村・十島(としま)村
2(沖縄)八重瀬町・(八重山郡)
ということで、これを「一」から「十」までと「百」「千」「万」「その他」に分けて数を数えました。
中には「八千代町」「四万十市」のように、一つの自治体で「八」「千」あるいは「四」「万」「十」と、「2つ」あるいは「3つ」の数字を含んでいるものもあります。(=※)
【漢語読み】【和語読み】
- 5 0
- 4 0
- 7 34
- ※4 2
- 8 1
- 2 0
- 4 2
- 8 ※16
- ※4 1
- ※3 5
<百> 0 ※ 1
<千> 0 ※10
<万> ※3 0
<その他> 1
傾向としては、
*「一・二・六・万」は全て「漢語読み」
*「四」「五」「七」「九」「十」も「漢語読み」が優勢
*「三」「八」「千」は「和語読み」が優勢
と言ったところでしょうか。
「七」の「漢語読み」は「シチ」ですが、岐阜県の、
「七宗町」
は、
「『シチ』を『ヒチ』と読む」
のは面白いですね。岐阜県だけどこれは、
「関西の訛り」
ですね。関西では、「質屋」を、
「ひちや」
と言って、そう書きますからね、それと同じ。
あと群馬の、
「六合(くに)村」
は恐らく、
「六つの集落が集まって、一つの村を作った」
のでしょうけど、それを、
「くに」
と読ませるのは、「くに」の成り立ちを考える上でも面白いですね。



(追記)
「『ヶ』のあとが『訓読み』だと『ガ』と濁る」
「『ヶ』のあとが『訓読み』だと『ガ』と濁る」
の検証するのを忘れていた!改めて見てみたら、
「数字を漢語読み」のほうでは、
六ケ所村(青森)・七ヶ宿町(宮城)・五ヶ瀬(ごかせ)町(宮崎)
が「ケ」「ヶ」を「カ」と濁らずに読む。そして、
七ヶ浜町(宮城)
だけが「ガ」と濁る。
「数字を和語読み」のほうでは「ケ」「ヶ」が出てくる自治体名はありませんでした。
(2025、7、18)
(追記2)
またまた、このブログの愛読者・東京の「門外変人」さんから、ご指摘を受けました。
「谷」の音読みは「コク」だけで、「たに・や」は「訓読み」である、と。
あ、そうだったか…てっきり「ヤ」は「音読み」だと思い込んでいました。失礼しました。ということは、
「鳩ヶ谷(はとがや)市」(埼玉)
「鎌ケ谷(かまがや)市」(千葉)
は後ろに、
「谷(や)」という「訓読み」が来ますから「ガ」と濁るのは「例外ではない」ということになりますね。
(2025、7、20)