このところ連日地震が続く鹿児島・トカラ列島で、7月4日の
「午後4時13分」
に、
「震度6弱」
の地震がありました。
それを伝えた読売テレビの「かんさい情報ネットten.」の中で中谷しのぶアナウンサーがその時刻を「13プン」という「半濁音」ではなく、
「午後4時13フン」
と「清音」で読みました。彼女ほどのベテランの域に達する(と言ってもまだ「30代半ば」なので「中堅」かな)アナウンサーでも、「フン」と「清音」で言うのか!?と、その意味でも「激震」だったので、
「アナウンス部では、もう『フン』を容認しているのか?」
聞いてみたところ、
「そんなことはない」
というので、少し安心。HアナウンサーがVTRで確認してくれたところ、
「最初『プン』で伝えていたが、40秒ほどあとに内容を繰り返し伝えた際『フン』と言ってしまい、その15分ほど後に、改めてスタジオから同じ内容を速報で2回繰り返して伝えた際は、2回とも『プン』と半濁音だった」
とのことで、本人は、
「言い間違ったと思ったので、あとで言い直した」
のだそうです。「半濁音」が正しいとはわかっていたが、つい「清音」になったということのようですね。
しかし、同じ日の他局の放送を見ていたら、TBS系のMBC(南日本放送=鹿児島)からの放送でも、中継先の40~50代の男性記者と、スタジオの50代男性アナウンサー(キャスター)が、
「13フン」
と「清音」で話していたのです。一方、NHKの女性アナウンサー(東京)は、
「13プン」
と「半濁音」でした。
これ以外にも最近では、毎朝見ている日本テレビの「ZIP!」で、
「時刻は8時44フン」(5月26日)
「時刻は8時44フン」(6月25日)
と言っているのを耳にして、メモしていました。
今回ショックだったのは、
「半濁音化しなくなる=清音になるのは『4が先』で『3はその後』」
と思っていたからです。
つまり「4フン」とは言うようになっても、「3フン」には、なかなかならないと思っていたのですが、その「3分」が「清音化」したのを目の当たりにし、「3分」「4分」の「清音化」が着実に浸透していることを感じて、ショックだったのです。
もっとも、私が初めてこの「3フン・4フン」について違和感を覚えて書いたのは、「平成ことば事情2079『3ふん前、4ふん前』」(2005年2月18日)
ですから、もう、
「ちょうど20年前」
言葉(の主流派)が変化しても、おかしくない…『とはいえ』です。
この辺りの変化に関する調査は、「2024年1月」に出たNHK放送文化研究所の
放送研究と調査」の中の、
『こんどの旅行は“4ハク”か“4パクか”~2023年「日本語のゆれに関する調査」から(1)~』(塩田雄大/中島沙織)
が詳しいです。ここには、
「3泊・4泊」「3発・4発」「3班・4班」「3分間・4分間」「3匹・4匹」
の助数詞の「ハ」の音が、それぞれ「清音か?半濁音・濁音か?」についての調査結果が記されています。そこでの「共通の結果」は、
*「3」よりも、「4」のほうが「清音」の回答が多い。
*「清音」の回答は、若年になるほど多い。
*言語変化としての「半濁音から清音へ」という流れは「東日本」で先行して進みつつあると推定される。
とのことでした。それによると「3分・4分」の読み方は、「全体」(1186人)では、
【清音】 【半濁音】
*「3分」=「サンフン」=14%、「サンプン」=73%
*「4分」=「ヨンフン」=42%、「ヨンプン」=42%
と、「3フン」という人はまだ少数派ですが「4分」に関しては、
「『4フン』と『4プン』が全くの同数」
なのです!スゴイことになってる!
「年齢別」に比べたものも見てみましょう。
まず年配でボリュームゾーンの「70代」(245人)ですが、
【清音】 【半濁音】
*「3分」=「サンフン」=10%、「サンプン」=81%
*「4分」=「ヨンフン」=29%、「ヨンプン」=60%
で「3プン」「4プン」の「半濁音が圧倒的」ですが、若年層「20代」(111人)は、
【清音】 【半濁音】
*「3分」=「サンフン」=24%、「サンプン」=56%
*「4分」=「ヨンフン」=53%、「ヨンプン」=23%
という結果。
「4分」はダブルスコアで「清音」の「4フン」が「過半数」を占めているのです。
「3分」に絞って年代別の「清音」の「フン」の割合を見ると、
【20代】24%
【30代】17%
【40代】17%
【50代】12%
【60代】11%
【70代】10%
【80代】12%
でした。これは、おととし「2023年」の時点の調査です。明らかに「若いほうが清音になっている」と言えるのではないでしょうか?(なぜか「80代」は除く。)
そこできょう「ミヤネ屋」の20代スタッフ「10人」に、
「午後4時13分」
の読み方を聞いたところ、
「13フン」=7人
「13プン」=3人
という結果が出ました。
「13フン」という「清音」が「70%」でした!
事態はさらに進んでいるようです!(もっとも「3分」よりも、「13分」「23分」という「2桁の数字」のほうが、「清音化」は先に進むと思われますが。)
まさに我々は、
「言語変化の中を生きている」
のです。


