7月17日、朝日放送の夕方の「ニュースおかえり」を見ていたら、参院選の京都選挙区を取り上げていました。そのVTRの中で男性アナウンサーが、
「過半数を下回るかもしれない」
という原稿を読んでいました。それを聞いて、
「あれ?『過半数』は『半数を超える』ことだから、それを下回るというのは、『過半数に達しない』ということなのか?そんな言い方、するのかな?」
と疑問を持ちました。
ネット検索すると「過半数を下回る」は、朝日新聞やNHKでも出て来ました。
これは、元はといえば、
「『過半数を上回る』『過半数を超える』という表現は『重複』ではないか?」
という問題が確かあったと思って検索したら、「毎日新聞」の2017年の記事が出て来ました。そこでも、実際の記事で「読売・毎日・朝日・産経」は使ってしまっていて、「日経」だけ、
「過半数の233議席を勝敗ラインに掲げた」
という表現だったとして、この表現について検討しています。そして、
「意味としては『過半数ライン』で使っていて、それを『上回る』『超える』なので間違いではない」
「ラインを入れて『過半数ライン』とすべきだ」
という意見が出ていました。
また、「毎日ことばPLUS」の「2021年7月20日」でも、
「『過半数を超える』を直すべきか?」
という記事が書かれていて、
『毎日新聞用語集は「誤りやすい表現・慣用語句」の欄で、「過半数を超える」について「半数を超える、過半数に達する」と言い換えるように案内しています。「過」と「超」がいずれも、ある水準を上回る意味を表すため、重複表現になるからです。新聞・通信他社の用語集もほぼ同様ですが、日経新聞の用語集は言い換えの案内に加え、次のように記しています。
選挙の際など半数を超えるかどうかが関心の的になっている場合は、強調表現として「過半数を超える」または「過半数を割る」などを使うこともある。』
と記されています。ところが、
『与党の議席が「過半数を超える」かが焦点だ――この表現、どうでしょうか。』
というアンケートでは、
・「半数を超える」としたい 15.5%
・「過半数に達する」としたい 38.8%
・上二つのいずれかにしたい 31.8%
・「過半数を超える」で問題ない 13.8%
と、「問題ない」という人はたった「13、8%」に過ぎず、、
「表現を変えるべきだ」
という人が多数であり、
「重複表現に対して厳しい人が多いことに驚いた」
と記しています。それでも、
「強調表現としては『あり』だ」
として、NHKの「ことばのハンドブック第2版」も紹介していました。
『過半数を超える・過半数割れ
(前略)選挙の際など、「半数より1だけ多い数」を超えるかどうかが関心の的になっている場合は、「過半数を超える」または「過半数割れ(~を割る)」という表現もありうる。「過半数以上」は使わない。』
そして、「新聞用語懇談会」でも、過去に2000年11月・2001年7月・2002年5月・2008年10月に話し合われていました。
いずれも「過半数」で「半数を上回っている」のだから、それを「上回る」のは「重複だろう」という論議です。
しかし今回は「重複」ではなく、
「一度超えたものが、超えなかったという、ベクトルの向きが『逆』になる表現」
です。「超える」のか「超えない」のか、どっちやねん!?ということなので、ちょっと問題が違う。あ、いや、やはり同じか。
「過半数を割る」
も、これまで問題になっていますからね。「下回る」も同じかな。
「過半数」から「半数を超える」という動詞的な意味がもう消えてしまって、
「過半数」
という「具体的な数字」があって、それを起点にして「上回るか、下回るか」という問題なのですね。
そう、最初に出てきたように、
「過半数ライン」
と「ライン」を省略しないで書くか、
「過半数に達しない」
でいいんじゃないかなあ、と思いました。
「平成ことば事情6391過半数超え」(2017年7月19日)
「令和ことば事情8517過半数」(2022年6月8日)
もお読みください。


