これまで何回も歌ってきた男声合唱組曲「水のいのち」(高野喜久雄作詞・髙田三郎作曲)。また9月に東京で歌います。その歌詞の中に、
「そなた 水のいのちよ」
という「曲のタイトル」が出て来る「核心」の歌詞があります。この、
「そなた」
の「そ」は、いわゆる
「こそあど言葉」
ですよね。そこで、
「『こそあど』の距離感」
について考えてみました。
まず「子音」で考えると、
「そなた」 =「s」
「こなた・かなた」=「k」
そして、
「あなた」は「母音」=「a」
「あなた」に「子音」の「k」が付いたら、
「かなた」
ですから、「かなた」は「あなた」よりも、同じ「k」が付く、
「こなた」
に近いのではないか。
「あなた」「かなた」の「母音」は「a」ですから、「大きな音」、つまり、
「距離が遠い感じ」
ですね。「あなた」は、
「二人称の代名詞」
としても使われますが、「丁寧な言い方」でありながら、
「親しみを感じさせない、ちょっと突き放した感じ」
がします。つまり「距離がある」のですね。
それに対して「こなた」「そなた」の「母音」は「o」なので、「a」よりも、
「口の開きが狭い」
ので「音がこもって」、
「距離は近い感じ」
というようなことが、考えられるのではないでしょうか?
大相撲の行司が、対戦する力士2人を、
「かたや」「こなた」
と「方角」のように呼ぶこともありますが、「こなた」は「これ」ですね。
「あなた」「かなた」「こなた」「そなた」の「語尾」の「た」は、
「場所(ところ=所・処分)を表す」
なのでしょう。また「な」は「の」を意味します。そうすると、これらは
「『こ』の所」「『そ』の所」「『あ』の所」「『か』の所」
で、結局「こそあど」に戻りますね。「ど」は「どなた」とか「どこか」(「こ」は「場所」を表す)となって「不定」。「Where」のような「疑問詞」なので、ここでは省きます。関連で、
「ことし」は「こ」の年、これは一番近い。今。
でも「こぞ」は「こ」が付くけど「去年」だなあ・・・。近いと言えば近いけど。
「そとし」「かとし」「あとし」「どとし」
とは言いませんが、「こそあど」の後ろに「の」を入れると、
「そのとし」「かのとし」「あのとし」「どのとし」
と言えます。「ことし」だって「の」を入れて、
「このとし」
でもいいですが、「このとし」と「ことし」は普通、意味が異なりますね。
ところで「都の西北」の愛称で知られる、
「早稲田大学校歌」
の「3番」の歌詞の冒頭は、
「あれみよ 『かしこ』の 常盤の森は」
なのですが、この、
「かしこ」
が、この「校歌」が初めて披露された「1907年(明治40年)10月21日」に配られた「歌詞と楽譜(数字譜)」が印刷された紙には、
「あしこ」
となっているのだそうです。知らなかったなあ。
「あしこ」というのは聞き慣れませんが、
「あすこ」→「あそこ」
ならわかります。元の形が「あしこ」なのでしょうか。「さ行」の「母音が変わった」のでしょうね。でも、「『あれ』見よ」なんだから「あしこ」というのは呼応としては自然なのかなあ。「あしこ」の「し」は、「強調の『し』」かな?
「まさにあの所」=「あ『し』こ」
かな?
ちなみに「かしこ」は、
「そこかしこ」
のように、
「いろんな所」「あちこち」
のイメージがあります。この「し」も「強め」か。
あ、「あちこち」も、
「あちらこちら」
で「ら」も多分、
「あたり」
という、
「やや不確定は場所・方角を指す婉曲表現」
だと思われます。
「僕ら」「君ら」「彼ら・彼女ら」
の「ら」は「複数形」を表しますが、「複数」ということは、主体の「僕」「君」「彼」「彼女」の「意味が弱まる・薄まること」を意味しますよね?
その「ら」を省略したのが「あちこち」。「ピンポイントで指す」感じがしますね。
この「ち」も「場所を表す」のでしょう。
結局「こそあど」の「あ」と「こ」=「向こうとこっち」というところに戻ってまいりました。


