9876「ローマ教皇か?法王か?」

2025 . 5 . 1

9876

 

<以前書いたと思っていたのに、実は「平成ことば事情5352ローマ法王フランシスコ」ぐらいしか書いていなかったようなので、記します。>

 

4月21日に88歳で亡くなった「ローマ教皇・フランシスコ」の訃報に接して、

「あれ?『教皇』?『法王』じゃないの?」

と思った方もいらっしゃったのではないでしょうか。

実は、以前はたしかに「法王」と呼んでいましたが「2019年11月の来日」を機に「教皇」に一斉に変わったのです。(「2019年11月号・月報」にも書きました。)

日本政府(外務省)が、フランシスコ教皇の来日に際してそれまでの「法王」を「教皇」に変更すると発表したのを受けて、マスコミ各社も一斉に従ったというのが真相です。

新聞の「法王→教皇への変更のおことわり」の記事は、

11月21日(朝)=朝日、(夕)=毎日

11月22日(夕)=日経

11月23日(朝)=読売・産経

に出ました。日本テレビからは、11月21日夕方の「news every.」から、「法王」を「教皇」に変更するという連絡がありました。

日本のバチカン司教団は、「教える」という字のほうが「教皇」の職務をよく表わすので、「1981年2月」のヨハネ・パウロ2世の来日を機に「ローマ教皇」を使ってほしいと要望しましたがかなわず、以降も度々マスコミ各社に「教皇」への名称変更を要請しましたが、実現しませんでした。

一方、「駐日バチカン大使館」は「ローマ法王庁大使館」と今も「法王」を使っています。これは日本とバチカンが外交関係を樹立した当時の定訳が「法王」で、「ローマ教皇庁」が「法王庁」で日本政府に申請したため、そのまま「法王庁大使館」になり、一度日本政府に登録した国名は、政変が起きて国名が変わるなどしない限り「変更できない」ということなのだそうです。

余談ですが、まるでこの事態を予想していたかのような、現在公開中の映画は「教皇選挙」と「教皇」を使っています。また、南フランス産の「シャトー・ヌフ・ドゥ・パフ」という赤ワインの日本語訳は、以前は「“法王(パフ)”の新しい(ヌフ・ドゥ)城(シャトー)」でしたが、「教皇」に変わったのかな?確認しなくちゃ。

 

(2025、4、30)