9917「なぜ『願わくば』『貯金を切り崩す』と言うのか?」

2025 . 5 . 30

9917

 

 

「願わくば、両校優勝になってほしい」

のような場合の、

「願わくば」

は、実は「間違い」で、正しくは(本来は)、

「願わくは」

だということは、皆さんご存じでしょうか?

毎日新聞のサイト「毎日ことば」(2019年12月27日)によると、

「願わく( )核廃絶が実現してほしい」

という場合に、

「願わくば」  =45、6%

「願わくは」  =38、6%

「どちらも言う」=15、8%

という結果が出たそうです。しかも「願わくば」の使用例は、

「江戸時代からある」

ということで、もうすでに、

「誤用を超えた存在」

であるとしています。それはさておき、今回私は、

「なぜ『願わくは』を『願わくば』としてしまうのか」

について考えて、一つの答えが出ました。それは、

「『願わくば』は、『あわよくば』と『願わくは』の混交表現ではないか?」

というものです。「願わくは」と「あわよくば」は、

「意味が似ている」

んですよ。それで、言い方が交じっちゃうんです。つまり、

「願わくは、あわよくば、核廃絶が実現してほしい」

と思って、

「願わくは」+「あわよくば」→「願わくば」

になったのではないか?と思ったのです。

同様に、

「貯金を取り崩す」

が本来の言い方なのに、

「貯金を切り崩す」

と間違って言っちゃうこともありますよね。

これはNHK放送文化研究所のサイトを見ると、2024年3月1日に、塩田雄大さんが書いています。これは「明鏡国語辞典・第三版」では、

「『切り崩す』の新しい意味」

として認めていると載っていました。そしてこの表現を国語辞典が取り上げ出したのは、

「昭和40年以降である」

と。ただし国立国会図書館のデータ検索をしてみたら、

「1920年代(1923年)の用例」

が見つかったそうです。

NHKの「2022年」の「貯金を取り崩す」「貯金を切り崩す」の年代別アンケート調査(1198人)では、

(%)【取り崩す】【切り崩す】【両方OK】

(20代) 14    64   18

(30代) 14    68   13

(40代) 17    66   15

(50代) 18    60   18

(60代) 28    48   28

(70代) 31    39   22

(80代) 41    25   18

【全体】  23    53   18

という結果だったそうです。つまり、

「『貯金を切り崩す』と言う人のほうが多い」

ということですね。そこで、ここに書かれていない、

「なぜ『混交表現』が起きたか?」

ですが、私は、

「『貯金を切り崩す』は、『生活を切り詰める』と『貯金を取り崩す』の混交表現ではいか?」

と思ったのです。これも、「生活を切り詰める」と「貯金を取り崩す」は、

「状況が同じ」

だから。つまりは、

「意味が似ている」

のですね。それと、「取る」よりも「切る」ほうが「切実さ」があり、

「追い詰められている」「窮乏感」

があるからではないでしょうか?だから「混交表現」が起きたと。

急にそんなことが思い浮かんだのでした。

 

(2025、5、30)