フェイスブックを見ていたら、京都・大山崎町のJR線路下にある住民用の狭いトンネルである「円明寺架道橋」が、
「ねじりマンポ」
と呼ばれるものであると書かれていました。初めて聞く、奇妙な名前のトンネルです。
「ねじりマンポ」とは、
「小トンネルにおけるレンガ積み構法の一つ」
だそうで、
「明治時代の土木技術遺産」
なのだそうです。この「円明寺架道橋」も、高さは「1、4m」しかないそうです。大人は、屈まなければ通れませんよね。
鉄道と道路が直角に交差する所では、単純に水平にレンガを積んでいけばいいそうですが、線路と道路(マンポ)が、ある角度以上に“斜めに交差する”場合に限り、トンネルのレンガ積み強度を得るために、
「線路に対して直角にレンガを積んでいく」
と、
「ねじれたようなアーチ状のレンガ目地になっていく」
これを、
「ねじりマンポ」
と言うのだそうです。うーーー、マンポ!
ふむ、少しニュアンスは分かりました。
「レンガは水平に積んでいる」
けれども、
「通路(トンネル)が線路に対して、直角じゃない」
ので、結果として、
「内側がねじれて、斜めになっている」
ということですよね。
でもなんで「マンポ」と言うのだろうか?それは書かれていなかったなあ。
元の電子辞書の「精選版日本国語大辞典」を引いたら・・・なんと載っていました、それも簡潔に!
ただし「マンポ(まんぽ)」(半濁音)ではなく、「まんぼ」と「濁音」でしたが。
*「まんぼ」=「(古い鉱山用語「まぶ(間府)」の変化した語)トンネル、横井戸など、主として人間が掘った横穴をいう。」
まさに「これ」ではないですか!じゃあ「カタカナ」で「マンポ(マンボ)」ではなく「平仮名」で「まんぼ」と書くべきなんですね!
さすがに「三省堂国語辞典」「明鏡国語辞典」「新明解国語辞典」「岩波国語辞典」「広辞苑」には載っていませんでしたが、「大辞林」に、やはり「濁音」の「まんぼ」で載っていました!
*「まんぼ」=(「坑道」を意味する「間符(まぶ)」に由来するものか)三重県鈴鹿市内の内部(うつべ)川扇状地や岐阜県垂井(たるい)町の扇状地で灌漑用に用いた、地下水の集水トンネル。規模は小さいが、カナートに類似する。」
???これはかなり、地域や用法が限定されたものですね。「カナート」って中近東の「用水路」のことだっけ?英語では「キャナル(運河)」のこと?これは手元の電子辞書の「精選版日本国語大辞典」を引くと、
*「カナート」=「(ペルシアqanat)西アジア、北アフリカの乾燥地でみられる地下水を得るための灌漑施設。扇状地に掘られて得た地下水を、長さ数キロメートルに達する地下水路で集落近くまで導く。」
ビンゴ!
高校時代に習ったのを何となく覚えていたのかな?
それか、アフガニスタンで井戸掘りをしていた中村哲さんの本で読んだのかもしれません。知識は、いつか役に立つことがありますね!少し、うれしくなります。
しかし「大辞林」よりも「精選版日本国語大辞典」の「まんぼ」の方が、今回の京都・大山崎のトンネルには当てはまりそうです。大阪・高槻市にも、同様の形状のものがあるそうです。線路を引くのにも「地形」が影響していたのかもしれません。線路が「トンネル」を掘るのを避けるために「山裾」に敷設されて、従来の道との間に「小さなトンネル」を掘ることなったのかもしれませんね。
また「架橋」とは言っても「線路の上」ではなくて「トンネル」なのですから「線路の下」だから、正しくは、
「円明寺斜架拱渠(しゃかきょうきょ)」
ではないか?と、このフェイスブックの人は書いていました。難しい言葉!ネット検索では、
「斜架拱(しゃかきょう)」
「斜拱渠(しゃきょうきょ)」
が出てきました。「精選版日本国語大辞典」には載っていませんでしたが、似た言葉で、
「拱橋(きょうきょう)」
問いのは載っていて、意味は、
「アーチ橋」
だそうですから、「斜拱渠」は、
「斜拱」=「斜めのアーチ」の「渠」=「溝・トンネル」
なのではないでしょうか。まさに「そのもの」ですね!



(追記)
2025年2月19日の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」の「ますだ・おかだ」の増田さんの「街かどトレジャー」のコーナーで、
「京都府・大山崎町」を訪れていました。
その最初に、
「ねじりマンポ」
を訪ねていました!
(2025、2、19)
(追記2)
京都で「モネ展」を見た帰りに、琵琶湖疎水沿いを歩きました。すると蹴上の辺りに、
「ねじりまんぽ」
があったのです!いやあ、初めて見た!
看板に説明も書かれていて、「関西」のJR東海道線に多いと書かれていました。
「まんぽ」は「トンネル」のことだそうです。
なんか偶然見つけたので、ちょっとうれしかったです。
(2025、3、31)