佐藤さんの著書と言うより、佐藤さんと「賢人」の対談集。その「賢人」は「12人」。名前を挙げると、
吉藤オリィ(分身ロボット発明家)
大屋雄裕(法哲学者)
萱野稔人(哲学者)
富永京子(社会学者)
泉谷閑示(精神科医)
永井玲衣(哲学者)
新井紀子(数学者)
古谷経衡(作家)
塚越健司(社会学者)
名越康文(精神科医)
新 雅史(社会学者)
小川仁志(哲学者)
という面々。「哲学者」「社会学者」「精神科医」が多い。「数学者」、数学も哲学的な部分
があるしな。そういう意味では偏っているというか、その道の専門家ばかり、しかも若い
人が多い。僕が名前を知っていたのは、萱野稔人さん(哲学者=「ミヤネ屋」にもご出演
頂いています)・新井紀子さん(数学者)・古谷経衡さん(作家)・名越康文さん(精神科
医)・小川仁志さん(哲学者)の5人だけだった。印象に残った部分を抜き書きします。
【萱野稔人(哲学者)】
・カール・シュミットは「政治的なものの概念」のなかで「保護と追従という永遠の連関こそが、国家を成り立たせている根本的な原理である」と述べている。
【泉谷閑示(精神科医)】
・ヨハネの福音書の冒頭も「はじめにロゴスありき」です。ロゴスとは神であり、バラン
スであり、言葉であり。
・(佐藤)「精神の生態学へ」を書いたグレゴリー・ベイトソンは「ダブルバインド(二重
拘束)の概念を提唱したことで知られています。人類学者で生態学者で数学者でもあるお
もしろい人で、「キューバ危機とタコの喧嘩の類似性」に関する論文なども書かれている
んですよ。言葉を信用できなくなった国家間関係の行動は、タコの喧嘩と同じプロセスを
たどると。カワウソも同じだったかな。
~(私)ブワッハッハ!~
・政治や国際関係にしても、問題の根本にはロゴスの危機があると思っています。ロゴ
ス・クラッシャーは強い言葉で即断する。その短慮で強い発言がカリスマ的に見えてしま
うことがある。
【古谷経衡(作家)?
・(佐藤)民主主義が大好きな人は、犬好きな人が結構多い。警察官や自衛官は、犬好き
率が多いと思う。会社とか組織では、犬派:猫派が8:2くらいがバランスがいいんで
す。猫だけの会社は成り立たない。(ちなみに、佐藤も古谷も「猫派」)
・(佐藤)健康とか有機農業だとかに固執する団体でいうと、過去にナチスの例もある。
エコ右翼は危険ですよ。
・エコ右翼!土への執着と国粋主義は結びつきますものね。たしかに“純潔なるもの”へ
のこだわりの強さって、排他的な、ファシズム的な発想に近いですね。
【塚越健司(社会学者)】
・(佐藤)フランスの哲学者ジャン=フランソワ・リオタールは、1979年に発表した著作
「ポスト・モダンの条件」において「大きな物語」という言葉を提唱しました。
人間は自然と「大きな物語」を作る動物です。したがって稚拙であってもわかりやすいス
トーリーがあるものや、極端な意見に吸収されやすい。ナショナリズムはそのいい例で、
貨幣信仰、学歴や出世信仰もその一種です。
・実態としては不安の埋め合わせ、つまり精神的な依存のようなものなのでしょうね。
(佐藤)ケインズは、株式をはじめとする金融市場の動きを「美人投票」にたとえまし
た。
・真面目な人、知性の高い人ほど、陰謀論にハマりやすい印象がある。
【小川仁志(哲学者)】
・(佐藤)(同志社大学神学部の学生に)最初に守破離の話をするんです。みんなに型破り
な人間になってほしい、そのためにはまず型を覚えなければならない。「守」で完全に型
を覚え、「破」で別の流派を覚える。それが自分流の「離」を培っていく。型のないまま
斬新なことをしようとすれば、それはただのでたらめになる、と。
・(佐藤)現在のルッキズム批判も遡ればヘーゲルの頭蓋論に行きつく。でもそれは結果
論で、ヘーゲルの「精神現象学」を読むと「人生ってこんなもんだ」ということがよくわ
かる。
・(佐藤)挫折を挫折としてきちんと認める。それも教養、哲学の重要な仕事でしょう。
・(佐藤)私は50歳になったときに、人生の持ち時間を考えるようになりました。
・年齢や健康状態に合わせて、自分のやるべきことを考え直す時期というのは、誰にも訪
れるものなのだと思います。そして、それは日本の社会も同じかも知れません。
「疑って、視点を変えて、再構成して、言語化する」それをするのが哲学だと。
・(佐藤)ヴィトゲンシュタインの言葉を借りるならば、「はしごをかけて2階に上がった
ら、使ったはしごは落とさなきゃいけない。」
・フィロソフィー(哲学)、ソフィア(知)をフィリア(愛)し続けるという名がついて
いるわけです。
以上です。


