『怒りの葡萄(下)』(スタインベック著・伏見威蕃訳、新潮文庫)
を読んでいたら、
「腹がくちくなることはない。」(26ページ)
という言葉が出て来ました。
「(腹が)くちく(なる)」
この言葉を初めて知ったのは、大学に入って東京に行った際、福島県会津若松市出身のT君が使ったのを聞いた時で、その時はどういう意味か分かりませんでしたが、彼がとても苦しそうに、
「腹くっちいー!」
と言っているのを見て、わかりました。
「おなかがいっぱいになる」
という意味でした。
「三省堂国語辞典・第八版」を引いてみたら、載っていました。
*「くちい」=(東日本方言)食べて、おなかにいっぱいにつまった状態だ。(例)腹がくちくなった」
関西人は多分分からない表現ですね。翻訳者の「伏見威蕃さん」は、きっと、
「東日本出身」
なんでしょうね。
「精選版日本国語大辞典」にも「くちい」は載っていました。
「これ以上飲み食いできないほど腹がいっぱいである。満腹である。」
用例は「浄瑠璃・那須与一西海硯(一)」(1734年)から、
「鼻の下のくちいが肝腎、定めて大分取れるであろ」
というもの。これは、ちょっと意味が分からないですが。もう一つ、二葉亭四迷の「平凡(三四)」(1907年)から、
「お昼はお腹が満(クチ)くて喰べられない」
というもの。これですね、この意味です。
「明鏡国語辞典」にも「1行だけ」意味が載っていました。
「新明解国語辞典」は、
(東北・関東方言)
と書いてありました。納得。
(2024、10、16)


