「セシルの女王」という、イギリスのヘンリー8世からエリザベス1世の頃のイギリス王室を描いた漫画を読んでいたら、こんなセリフが出て来ました。
「そんなに醜く太り散らかして」
夢の中で親が、ヘンリー8世に対してつらく当たるシーンです。この、
「太り散らかして」
のような、
「○○散らかす」
という表現、他に思い当たるのは
「食べ散らかす」「ハゲ散らかす」「脱ぎ散らかす」「食い散らかす」
あたりです。
そんなことを考えていたら、10月14日の日本テレビ「月曜から夜ふかしSP」で、中国・雲南省にロケに行ってインタビューをしていました。その中で中国女性が番組の魅力について、
「ハゲている人が多くて、おもしろい」
と。そして(日本語訳ですが)、
「ハゲ散らかしてる・・・あのディレクターの人が」
と、番組担当ディレクターでよく顔出しをしているNさんのことを言っていました。
この、「ハゲ散らかす」
は放送で使っていいのかな?自虐的だから許容なのかな?おもしろくは、あるんだけど・・・。
念のため「散らかす」を「三省堂国語辞典・第八版」で引いてみたら、さすが、載っていました、「散らかす」の「2番目の意味」で「俗語・方言」として、
「【二】さんざんに・・・する(例)ほめちらかす・笑いちらかす」
と載っていました。あれ?ちょっとなんか違うかな。この「~散らかす」は、「プラスの意味」で使われるより「マイナスの意味」で使われるんじゃないだろうか?
「明鏡国語辞典・第三版」も引いてみたら、やはり「2番目の意味」で、
「【二】<動詞の連用形に付いて複合動詞を作る>無秩序に…する。荒々しく…する。やたらに…する。ちらす。(例)蹴散らかす、書き散らかす、食い散らかす<使い方>【一】【二】とも、マイナスに評価していう。
そう!そうですよ「マイナス評価にいう」から、ちょっと差別的ニュアンスがこもるので、使い方には要注意なんですよね。ここ、重要なんじゃないかなあ。
だから「行為」に対して言う時はいいけど、「状態」に対して言うと、上から目線のバカにした感じが入ってしまうのではないでしょうかね?
「現代国語例解辞典・第五版」には、
「【2】他の動詞の連用形に付いて、むやみに…するの意を表す。(例)書き散らかす、食い散らかす、など」
「三省堂現代新国語辞典・第六版」は「散らかす」の用例の中の一つとして、
「食い散らかす」
は載せていましたが、語釈での説明はありませんでした…。
「大辞林・第四版」は「3番目」の意味で、
「(動詞の連用形の下に付いて)ばらばらにちらかすようにする。荒々しく…する。(例)食い散らかす、蹴散らかす、書き散らかす」
でした。少しもの足りないかな、「大辞林」にしては。
なお、「精選版日本国語大辞典」「新明解国語辞典」「岩波国語辞典」「新選国語辞典」「広辞苑」には「補助動詞」としての使い方のこの「散らかす」は載っていませんでした。
(2024、10、15)


