あまり牛丼屋さんには行かないのですが、たまに行くので、
「つゆだく」
という言葉は知っています。
「つゆ(汁)を『だくだく』にかけること」
ですよね。この
「だくだく」
は、
「汗を、だくだくかく」
のように、
「液体が流れる様子を指す」
のだと思っていました。しかしきのう、ふと、
「あれ?もしかしたら『つゆだく』の『だく』は、『たくさん』が連濁して『だく』なのではないか?つまり『つゆだく』は『つゆだくさん』の略なのではないか?」
と思ったのです。「○○だくさん」という連濁で、まず思い浮かぶのは、
「子だくさん」
ですが、それを略して、
「子だく」
とは言いませんよね。だから、あまり気付かなかったのかもしれませんが。
『三省堂国語辞典・第八版』で「つゆだく」を引いてみると、やっぱりちゃんと載っていました。(載っていると思いました。)
*「つゆだく(汁だく)」=(俗)(どんぶり物などで)汁(しる)をたくさん入れること。(例)牛丼をつゆだくでたのむ。
これは「俗語」というよりも、もう、
「牛丼用語」
なのではないでしょうか?「丼物」と言っても、「うどん」や「親子丼」では言いませんよね。あとは、可能性として言いそうなのは、
「天丼」
かな。この語釈に、
「汁をたくさん」
とあります。やはり「つゆだく」の「だく」は「たくさん」だったのか。
念のため「だくだく」を引くと、
*「だくだく」=あせや血などが<たくさん/次から次へと>流れ出るようす。(例)あせがだくだく(と)流れる。
とあって、ここでも、
「たくさん」
という言葉が出て来ますので、「だくだく」も「たくさん」と関係あるかもしれません。
「汗がだくだくと流れるさま」は、
「汗だく」
と省略して言いますね。おお、「つゆだく」と同じ形だ!
例としては「汗」が挙げられていますが、
「血」
も語釈にあります。しかし「血」の場合は「だくだく」ではなく、
「どくどく」(ドクドク)
のような気がします。そして「ドクドク」になると「たくさん」よりは、
「擬声語」
のような気がします。「ドクドク(と)」は、
「体外に血が流れ出る様子」
を指していて、これが「ン」がついて、
「ドクンドクン」
だと、
「一定のリズムで、体内で血が流れる様子」
「血を流す心臓(ポンプ)の鼓動」
を表しているような気がします。そして「だくだく」も「どくどく」も「液体が流れる様子」ではあるのですが、単なる「水」が流れるのではなく、
「ある程度粘り気のある液体が流れる様子」
を指す気がします。
また「ドクドク」ではなく「ドキドキ」となると、もう完全に、
「胸(心臓)の鼓動」
を指しています。「ドキ」という鼓動によって流れる液体(血液)は「ドク」なのですね。液体の濃度によって、
「キ(ki)」という「イ母音」
が、
「ク(ku)」という「ウ母音」
になる。つまり、
「少し、籠った音になる」
ということなのでしょうか。
ものすごく観察されて作られてきた言葉なのかもしれません。
そんな気がしました。なかなか面白いですね!


