中堅というか、もうベテランの域に入ろうかという後輩のМアナウンサーからの質問です。
「つい先ほど、2年目のNアナから質問を受けて正しいアクセントとその根拠を伝えられなかったのは『黒ずくめの集団』です。今朝の「ZIP!」で『黒ずくめの強盗団』のニュースをアナウンサーが『ク/ロヅクメノシューダン』と『平板アクセント』で読んでいるのを聞いて『ク/ロヅ\クメノシューダン』ではないか?と違和感があったというのです。このようにアクセント辞典で調べようがないケースで迷うことは、よくあるので、そういったジャンルの勉強、正しいアクセントへのアプローチを知りたいです。」
なるほどー。
ちょっと、一晩考えてみました。
これは「○○の」となると「集団」にかかる「形容詞句」になるために「平板化」していると思われます。つまり「黒ずくめの集団」を「1語」として考えているわけですね。
「黒ずくめ」の「集団」
と「2語」に分けて考えると、
『ク/ロヅ\クメノ』『シュ/ーダン』
になります。長い言葉は分けたほうが自然ですが、しゃべるスピードが速くなってくると長い言葉でも「一息で言える」ようになって、アクセントが平板化するのではないでしょうか?
単語のアクセントは「単語固有」と思われがちですが、実は「単独の場合」と「文章の中に入って役割が変わる場合」で変わることがある、ということです。
例えば、アナウンサーでもこれをちゃんと認識している人は少ないと思いますが、
「きのう」「おととい」
のアクセントは、単独の「名詞」の場合は、
「キ/ノ\ー」「オ/トト\イ」
と「中高アクセント」ですが、
「きのう○○した」「おととい行った」
のように、動詞にかかる「副詞」の役割をする場合は、
「キ/ノー」「オ/トトイ」
と「平板アクセント」になります。これはアクセント辞典に載っています。
「黒ずくめ」の場合も「名詞」であれば、
「ク/ロヅ\クメ」(振り仮名は「くろずくめ」で「ず」ですが、「発音表記」としては「クロヅクメ」と書き分けています。)
と「中高アクセント」ですが、「の」が付くと(先ほど書いたように)「男」にかかる「形容詞句」になるので、
「ク/ロヅククメノオトコ」
と「平板アクセント」になることがあるのではないでしょうか。
似たようなものを考えてみましょう。
「肉尽くしのご馳走」「牛だらけの牧場」「泥まみれの純情」「右ばかりの打線
このうち「平板」になってもそれほど違和感がないのは、
「泥だらけの純情」
かなあ、という気がしました。ここに挙げた、
「ずくめ」「尽くし」「だらけ」「まみれ」「ばかり」
は、全部意味が、
「“全て○○”である」
というような感じですね。そうすると、それが付いた言葉、
「黒ずくめ」「肉づくし」「牛だらけ」「泥まみれ」「右ばかり」
が「強調」されるので、「平板アクセントの形容詞句」になって目立たないより、
「形容詞句自体も目立つ」
という形で「強調」されるのではないかと思うのですが、どうでしょうか?


