先日の新聞用語懇談会放送分科会で、
「ノルマを『課す』か?『課する』か?」
ということが議題に上がりました。
「課す」=文語
「課する」=口語
なので、現代口語である「課する」を使うべきなのかどうか?という話です。
気にしたことなかったなあ。
「ノルマを課す」
は、「課する」に直さずに、ふだんは「そのまま」使っているのが現状ですよねえ。
似たようなことは、実は気にしていました。というのは「文語的な表現」が、「口語」である原稿やしゃべりの中にも入り込んでいるという事実で、その場合の「語形」や「アクセント」をどう処理すればいいのか?という問題です。
それは一旦、横に置いておいて、「課す」と「課する」について考えました。
確かに「課す」は「文語体」(サ変活用動詞)で、「口語体」は「課する」(サ変活用動詞)ですが、
「“五段活用動詞”の『課す』は『口語』」
なのです。つまり、
「『口語』には『課する』と『課す』の2通りの同じ意味で似た形の動詞がある」
のです。これに気付いたのは、「大辞林・第四版」の「課す」の見出しを引いたときで、そこには、
(一)<動五>【サ変動詞「課する」の五段化】「課する」に同じ。(例)重税を課す。
(二)<動サ変>→かする
とありました。つまり、「口語体」は元々「サ変」の「課する」しかなかったが、「五段動詞化」した「課す」が、今や主流になってきていると言えるのではないでしょうか?
手元の辞書で「課す」と「課する」、どちらを見出しにしているかを調べたら、
○=見出しあり ×=なし △=空見出し
【課する】【課す】
現代国語例解(五・2016) ○ ×
広辞苑(七・2018) ○ ×
岩波(八・2019) ○ ×
新明解(八・2020) ○ ×
精選版日国(2005) ○ △
新選(十・2022) ○ △
三省堂現代新国語(六・2019)△ ○
明鏡(三・2021) △ ○
三国(八・2022) △ ○
大辞林(四・2019) ○ ○
NHKアクセント新(2016) ○ ○
(活用形アクセント) 無 有
でした。また、グーグル検索では(2月1日)
「課する」=20万2000件
「課す」=406万0000件
で「課す」が「課する」の「20倍」使われていました。
なお、「科す・科する」「処す・処する」も同じ傾向だと思います。
いかがでしょうか?


