9305「ノルマを課すか?課するか?」

2024 . 2 . 19

9305

 

先日の新聞用語懇談会放送分科会で、

「ノルマを『課す』か?『課する』か?」

ということが議題に上がりました。

「課す」=文語

「課する」=口語

なので、現代口語である「課する」を使うべきなのかどうか?という話です。

気にしたことなかったなあ。

「ノルマを課す」

は、「課する」に直さずに、ふだんは「そのまま」使っているのが現状ですよねえ。

似たようなことは、実は気にしていました。というのは「文語的な表現」が、「口語」である原稿やしゃべりの中にも入り込んでいるという事実で、その場合の「語形」や「アクセント」をどう処理すればいいのか?という問題です。

それは一旦、横に置いておいて、「課す」と「課する」について考えました。

確かに「課す」は「文語体」(サ変活用動詞)で、「口語体」は「課する」(サ変活用動詞)ですが、

「“五段活用動詞”の『課す』は『口語』」

なのです。つまり、

「『口語』には『課する』と『課す』の2通りの同じ意味で似た形の動詞がある」

のです。これに気付いたのは、「大辞林・第四版」の「課す」の見出しを引いたときで、そこには、

(一)<動五>【サ変動詞「課する」の五段化】「課する」に同じ。(例)重税を課す。

(二)<動サ変>→かする

とありました。つまり、「口語体」は元々「サ変」の「課する」しかなかったが、「五段動詞化」した「課す」が、今や主流になってきていると言えるのではないでしょうか?

手元の辞書で「課す」と「課する」、どちらを見出しにしているかを調べたら、

○=見出しあり ×=なし △=空見出し

   【課する】【課す】

現代国語例解(五・2016)   ○   ×

広辞苑(七・2018)       ○   ×

岩波(八・2019)         ○   ×

新明解(八・2020)       ○   ×

精選版日国(2005)       ○   △

新選(十・2022)         ○   △

三省堂現代新国語(六・2019)△   ○

明鏡(三・2021)         △   ○

三国(八・2022)         △   ○

大辞林(四・2019)       ○   ○

NHKアクセント新(2016) ○   ○

(活用形アクセント)       無  有

でした。また、グーグル検索では(2月1日)

「課する」=20万2000件

「課す」=406万0000件

で「課す」が「課する」の「20倍」使われていました。

なお、「科す・科する」「処す・処する」も同じ傾向だと思います。

いかがでしょうか?

 

(2024、2、19)