平成ことば事情5533「行方不明者と安否不明者」
平成ことば事情6861「安否不明と行方不明」
平成ことば事情6862「安否不明と行方不明2」
の続編です。
2024年1月1日、年明け早々に起きた「能登半島地震」は「震度7」を記録し、甚大な被害をもたらしています。その中で出て来た、
「安否不明者と行方不明者」
がどう違うのかという問題について、また考えてみました。
1月3日の各紙夕刊を見て「安否不明」に関して見てみたところ、「見出し」は、
(読売)死者92人 安否不明242人
(朝日)死者92人 行方不明16人~安否わからぬ人も242人
(毎日)死者92人に 242人連絡取れず
(産経)死者92人 安否不明24人
(日経)地震死者92人に 安否不明242人
で、「毎日」以外は「安否不明」「安否分からぬ人」を使っていました。「朝日」のみ「行方不明」を使っていました。
そして「リード・本記」での説明は、
(読売)連絡が取れない安否不明者
(朝日)死者か行方不明者16人、地震のためとは断定できないが連絡が取れなくなっている安否不明者が242人
(毎日)死者92人、災害で死亡した疑いのある行方不明者が15人になった。連絡が取れない安否不明の人は(中略)計242人に上る。
(産経)死者は全体で92人に上り、安否不明者は(中略)242人。
(日経)死者は(中略)92に人となった。安否不明者は242人にのぼり
ということで、「安否不明者」の説明を書いているものをピックアップすると、
「連絡が取れない安否不明者」(読売)
「地震のためとは断定できないが連絡が取れなくなっている安否不明者」(朝日)
「連絡が取れない安否不明の人」(毎日)
でした。
これを見ていてひらめいたのは、
「『安否不明者』という表現は、スマホが普及したことで『安否確認』が容易にできるようになったことで出て来た言葉ではないか」
ということでした。
まだスマホはおろか携帯電話でさえ、ほとんど普及していなかった、
「1995年の阪神淡路大震災」
の頃は「行方不明者」という表現はあっても「安否不明者」という表現は出て来なかったように思います。
「安否不明者」とい表現が出てきて「おや?」っと思ったのは、
「2011年の東日本大震災から」
です。そして、今回の、
「2024年能登半島地震」
では「行方不明者」という表現はほとんど出て来ず、ほとんどが、
「安否不明者」
という表現になっています。その背景は、
「スマホの普及」
ではないかなぁと思ったのでした。
ちなみに携帯電話・スマホの普及率は、1994年に「端末買い切り」が始まって以降、およその所有率は、
【携帯電話】 【スマホ】
「1995年」=10% ****
「2010年」=96% 4,4%
「2011年」=98,4% 21,1%
(29歳以下)
「2015年」=**** 51,1%
「2022年」=**** 94,0%
ということでした。
ちなみに、1月7日の「日経新聞・朝刊」では、
「連絡が取れず安否がわからない人も210人に上る」
とありました。
また、1月12日の「読売新聞・朝刊」では、
「津波で行方不明となっていた珠洲(すず)市の1人は、同市宝立町鵜飼の浜市鉄次さん(54)で、家族が死亡を確認した。連絡が取れない『安否不明者』は37人となっている。」
と記事に記されていて、「行方不明者」はこれまでの「1人」から「―」(0人)になっていました。


