9278「血の付いた妻のものとみられる靴」

2024 . 1 . 29

9278

 

 

東京・足立区で民家の床下収納から夫婦2人の遺体が見つかった事件のニュースで、

「血の付いた妻のものとみられる靴」

というテロップの発注がありました。これは、

「妻のものとみられる血の付いた靴」

とするべきでしょうね。

「修飾語」が複数ある場合、その「順番」も重要です。文書で書いた場合は、どうしても

「前から順番に」

並べざるを得ません。電池で言うと「直列」です。でも、「修飾される語」に対して、実はそれぞれ「別々の修飾語」になっている「並列」のケースも多いのです。この場合もそうで、

「血の付いた靴」=「妻のものとみられる靴」

なのですが、その場合の、

「血の付いた」「妻のものとみられる」

という「2つの修飾語の順番」は、

  • 妻のものとみられる
  • 血の付いた

であるべきでしょう。

「修飾語と被修飾語の距離が短いほうが、結びつきは強く」

なります。この場合は「人が刺されて殺されている事件」ですから、

「血の付いた靴」

というのがまず重要で、それの所有者が、

「妻のもの」

という2番目の条件が出てくるのだと思います。それに「血の付いた」を最初にすると、それが「妻」を修飾しているようにも見られて、

「『血の付いた妻』のものとみられる靴」

とみられかねません。

では、もしこれに、

「白い」

という3つ目の修飾語が付いたらどうなるか?考えてみましょう。

「白い血の付いた妻のものとみられる靴」

としたら、間違いですよね。なぜなら

「白い血」

の付いた、と見られる恐れがあるからです。それを避けるには、やはり、

「血の付いた靴」

は「1語」とし、「白い」「血の付いた」の順番は、

「白い、妻のものとみられる血の付いた靴」

あたりが妥当でしょうか。「白い妻」と思われないようにしないといけませんが。

しかし、そもそも修飾語を増やせば増やすほど、伝わりにくくなるので、

「文章を区切って表現する」

ことのほうが重要でしょうね。

そういったことまで考えて、文章やテロップは作らないといけない、というのは「常識」だと思うんですが…。

 

(2024、1、29)