9230「貯金を切り崩す?取り崩す?」

2023 . 12 . 27

9230

 

 

12月18日の「ミヤネ屋」で「年金問題」を取り上げた際に、

「貯金を切り崩して生活」

という一文とテロップが出て来ました。ちょっと待てよ、と。

郵便局の「ゆうちょ銀行」や「農協」は、

「貯金」

一般の都市銀行・地方銀行は、

「預金」

ですよね。そのたまった「貯金・預金」を、

「ためずに使っていく」

ことを、

「取り崩す」

と言います。こちらが従来は正しかったのですが、最近は、

「切り崩す」

という言い方もよく出て来ます。「ミヤネ屋」もその流れなのでしょう。

NHK放送文化研究所の調査(もう13年も前の2010年7月)によると、

「貯金を取り崩す」が正しい=32%

「貯金を切り崩す」が正しい=42%

と、すでに「逆転」しているという結果が出ていたそうです。

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20160601_1.html

また『三省堂国語辞典』(第7版・2014年)は、「切り崩す」に「貯金を~」の用例があるが、語釈に、

「あやまって」

と書かれていて、本来は「取り崩す」であることを示しています、と書かれているのですが、その後に出た「第8版」(2022年)を引くと、「あやまって」という表記は、もう消えていました…。

「『使う』ことを『崩す』」

と言っているわけですが、これは、

「預貯金を『財産の山』のように考えている」

感じがします。そこから「取っていく」のですから、

「取り崩す」

なのですね。つまりこれまでは「預貯金の山」を、

「砂山」

のように考えていたから「取り崩す」だったように思うのです。

ところがこれを、

「切り崩す」

と言う人は、「預貯金の山」ではなく、

「預貯金の塊・岩山」

のように考えているのではないでしょうか?つまり、

「守り切らねばならないソリッドな塊」

のイメージがあるのかな?守備的な感覚?

一応、この日の「ミヤネ屋」では、

「貯金を取り崩して生活」

に直しました。

 

(2023、12、27)