9237「住所不定・住居不定・住居不詳」

2023 . 12 . 28

9237

 

<2022年11月1日に書き始めました>

2022年10月31日の読売テレビお昼のニュースで、3000万円の強盗致傷の少年2人が逮捕されたというニュースをやっていました。その中で、15歳の少年を、

「住居不定」

と言っていました。これって、普通ニュースでは、

「住所不定」

と言うのではないでしょうか?

放送後に報道デスクに聞くと、

「警察はずっと前から『住居不定』と言っていますが、こちらで『住所不定』に直したり、直さなかったりですね。また、みんなで話しておきます」

とのことでした。同じニュースのその日の「毎日新聞・夕刊」は、

「住所不定」

としていました。

これに関しては以前、用語懇談会の議題にも上ったなと思い、検索してみたら、2019年4月に、私が議題として挙げていました。その際は、

先日、テレビ新潟発の全国ニュースを見ていたら、逮捕された容疑者が、「住居不定 無職」という原稿をアナウンサーが読んでいました。この「住居不定」というのは、普通は、「住所不定」と言うのではないのでしょうか?弊社の報道デスクに聞いたところ、警察発表では使われているようですが、それをそのまま放送するかどうかは「デスクによる」ということで、特に統一はしていないようです。この「住居不定」を使われている社はあるでしょうか?また「住居不定」と「住所不定」で意味の使い分けをしているという社はありますか?』

という質問をしました。これに対し、

「住居不定でやっている」

という社は「1社だけ」でした。その社は

「住民票があれば住所はあるので、不定ではない。『住居』に住むのであって、ホームレスの人やホテルを転々としている人は『住居が不定』なのだ。だから2~3年前からローカルニュースでは警察発表に従って『住居不定』で放送している。」

とのことでした。しかし全体としては

「警察発表は『住居』でも、ニュース原稿では『住所』と書き換える」

という社の方が多いようでした。

ある社の原稿検索では、2011~15年は、

「住居不定」=267件 「住所不定」=4731件

2016~19年は、

「住居不定」=61件 「住所不定」=2672件

で、使い分けはないものの「住所不定」の方が圧倒的だったようです。

その後、2023年3月29日にグーグル検索したところ、

「住所不定」=534万0000件

「住居不定」= 25万7000件

「住居不詳」= 30万3000件

こんなサイトも見つけました。

https://m.happycampus.co.jp/doc/10722/

そして、

「住所」=住民票などに記載するような住むところ

「住居」=たとえば一泊1000円の宿に6か月住んでいる場合など。

という内容の記述も見つけました。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/172469

さらにその後の3月28日ネット記事では、

「住所不詳」

という表記も出て来ました。

それからさらに9か月がたった「12月27日」の事件の記事では、

(読売新聞)住所・職業不詳

(朝日新聞)職業不詳

(産経新聞)住所・職業不詳

と出ていました。

それを見て「不定」と「不詳」、「住居」と「住所」に関してピーンときました。

「住居」は「住む家」。「住む家(住居)の所在地」が「住所」。

それが「不詳」というのは、「詳しい情報がないから」。

それに対して「不定」は、

「一定期間、安定してそこに留まることがない」

という意味ではあるが、

「住居がないとは限らない」

「住居はその時々にあるが、その場所は転々として変わる」

のであれば、「住居」も「住所」も「不定」であって、「不詳」ではない、ということですよね!「職業」に関しても、

「不詳」=詳しいことは、まだわからない

「不定」=一定の決まった仕事はない

という違いではないでしょうか!解決!

 

(2023、12、28)