たまたま京都・三条の「ブックオフ」で見つけた、斎藤茂吉「赤光」の復刻本を読みました。あの有名な、母の臨終の際の情景を詠んだ、
「のど赤き 玄鳥(つばくらめ)二ツ 梁にゐて たらちねの母は 死にたもうなり」
で有名な歌集で、明治38年から大正2年までに詠まれた歌を収録しています。
その中に、
「上(かみ)の山の 停車場に下り若くして 今は鰥夫の おとうと見たり」
という歌がありました。この、
「鰥夫」
という難しい漢字の言葉、読み方は、
「やもを」(やもお)
だそうです。つまりこれは、
「『やもめ』の対語」
ですね。男女で、
「女=やもめ」「男=やもを」
ということか!「やもめ」は知っていたが「やもを」という言葉は知りませんでした。
大体「やもめ」は、
「寡婦」
と書きますよね。そして男の独り者は、
「男やもめ」
と言いますよね。
「女やもめに花が咲き、男やもめにウジが湧く」
と言うではないですか!あの「男やもめ」が「やもを」だったのか!
「三省堂国語辞典・第八版」を引いたら、「やもお」は、なんと、
「空見出し」
ですが載っていて、
「『やもめ(鰥夫)』を見よ」
となっていました。すごいな、「三国」!「やもめ」を引くと、なんと「2つ」も載っていました。
*「やもめ(寡婦)」=夫と死別した女性。後家。未亡人。
*「やもめ(鰥夫)」=妻と死別した男性。男やもめ。やもお。
漢字は違うけれども、やはり男女とも「やもめ」と言ったのですね。
そこから「やもめ」と「やもお」に分かれたのか?それとも「やもめ」と「やもお」が「やもめ」に統合されたのか?どちらなんでしょうか?
現状では「やもお」が使われていないことから考えると、「後者」のような気がします。
大変勉強になりました。
(2023、10、5)


