9161「うつしみ・うすせみ・うつそみ」

2023 . 10 . 16

9161

 

 

斎藤茂吉の「赤光」を読んでいたら、

「うつそみの 人の國をば 君去りて 何邊(いづべ)にゆかむ ちちははをおきて」

という「若くして亡くなった友人」について詠んだ歌が載っていました。この、

「うつそみ」

という言葉は、学生時代に歌った、三木稔作曲の「レクイエム」の歌詞の中に、

「うつそみのない魂が好むという」

と出て来ましたね。これは、

「うつしみ(現し身)」

と同じですよね。それと、

「うつせみ(空蝉)」

は、関係あるのかな?と思いました。

「現し身(うつし・み)」

「空蝉(うつ・せみ)」

「三省堂国語辞典・第八版」を引いてみたら、「うつしみ」「うつそみ」は、見出しがありませんでしたが、「うつせみ」は載っていました。そういえば「源氏物語」にも「うつせみ」は出て来ますよね。

*「うつせみ(空蝉)」=(雅語)(1)(この世が)はかないこと。(例)うつせみの世。(2)セミのぬけがら。【由来】もと「現(うつ)し臣(おみ)=この世に生きる人」のちに「うつせみ」に変化し、セミのぬけがらや、はかない世の意味が生まれた)

そうだったのか!じゃあ、

「うつしおみ」→「うつしみ」「うつそみ」→「うつせみ」

なのかな。

いやあ、勉強になるなあ。

・・・と思って「精選版日本国語大辞典」を引いてみたら「語誌」の2番目に、

(2)従来「うつしおみ」→「うつそみ」→「うつせみ」という語系変化が想定されてきたが、「うつしおみ」を「現実の臣下」と解釈すると、このつながりは説明できない。

とありました。

うーん、なかなか難しいですねえ。

 

 

(2023、10、16)