9088「おめでとうございました」

2023 . 8 . 29

9088

 

8月25日、夏の高校野球で107年ぶり2度目の優勝を果たした「慶応高校」の記者会見で、清原和博さんの二男・清原勝児選手に質問をする際、某キー局の女性記者が、

「おめでとうございました」。

と言ったのが気になりました。「おめでとう」のあとは「過去形」ではなく「現在形」で、

「おめでとうございます」

ではないでしょうか?気持ちはわかります。優勝直後ではなく数日後なので、「優勝」そのものは「過去」になっているのですからね。でも「お祝いムード」は続いている状態での一言なので、つい「過去形」で「おめでとうございました」。

これは以前から言われていることですが、なぜ「おめでとうございました」がおかしいのか、考えてみました。

そもそも「~ございます」の「前に来る言葉」は何かを考えたところ、

「ありがとう」「おめでとう」「おはよう」

が思いつきました。というか、それ以外に思いつきません。

この3つの中で「過去形」の「ございました」が付いてもおかしくないと思えるのは、

「ありがとうございました」

だけですね。あとの2つは、「過去形」にすると、

「おめでとうございました」「おはようございました」

と、なんだかおかしいですね。「過去形」は使わない、「現在形」のみ。

違いは、「ありがとう」は、

「自分の気持ちについて言っている」

のに対して、「おめでとう」「おはよう」は、

「相手の状況について言っている」

という違いがあります。相手について言っているから「敬語」の「お」が付いていますが、「ありがとう」は敬語ではありません。

あ、そしてこれら3つに共通しているのは、

「ウ音便」

だということですね。本来なら、

「ありがたい」「おめでたい」「おはやい」

だが、それに「ございます」が付くことで、「う」になって、

「ありがとう」「おめでとう」「おはよう」

になっている。そう考えると「ございます」が付く言葉、他にもありますね。

「あぶのうございます」「おいしゅうございます」「ねむとうございます」「いそがしゅうございます」などなど。

でも、「慣用句」のようになっているのは「最初の3つ」ぐらいかな。(「ありがとう」「おめでとう」「おはよう」)

そういえば、40数年前の京阪電車の駅の録音されたアナウンスは、女性の声で、

「電車が参ります。あぶのうございますので、白線の内側までお下がりください」

というように、

「ウ音便」

が使われていたなあ。今は、

「あぶないですから」

になっています。つまり、

「あぶない」「おいしい」「ねむたい」「いそがしい」

といった、

「状況を想定した言葉」

は「ウ音便」になり、

「あぶのうございました」「おいしゅうございました」「ねむとうございました」「いそがしゅうございました」

と「過去形にもなる」のですが、

「相手に対して言う慣用句は、過去形にならない」

ということですかね?

きょうは「このへんにしとうございます」。

 

(2023、8、29)