9028「歯向かうか?刃向かうか?」

2023 . 7 . 6

9028

 

 

6月26日の「ミヤネ屋」のテロップをチェックしていたら、

「はむかう」

という言葉の漢字表記が、

「歯向かう」

でした。しかしこれ、いつも使っているハンドブック『新聞用語集』には載っておらず、読売新聞社の『読売スタイルブック』では、

「歯向かう」「刃向かう」

の「両方の表記」を認めていました。

一方、共同通信社の『共同通信記者ハンドブック』は、

「歯向かう」

だけを認めていました。

そして、『朝日新聞の用語の手引』『毎日新聞用語集』は、

「刃向かう」

のみ。『NHK日本語発音アクセント新辞典』(アクセント辞典ですが)も『NHK漢字表記辞典』の見出しも、

「刃向かう」

のみだったのです。だから、各社の意見を集約した『新聞用語集』には、この言葉を載せなかったのかな?各社の表記に対して、

「はむかわなった」

のですね。

『精選版日本国語大辞典』で「はむかう」を引くと「刃向」「歯向」両方の漢字表記があり、

(1)かみつこうとして、歯をむきだして向かっていく。また、刃物を持って向かっていく。*浄瑠璃・源平布引滝(1749)一「仁者に刃向かふ劔もなくすごすご立ッて行綱は」

(2)逆らう。抵抗する。敵対する。*歌舞伎・浮世柄比翼稲妻(鞘当)(1832)三幕「どうぞ、あなたに刃向(ハムカ)ふ事は」

で意味上は「歯向かう」「刃向かう」両方あるのですが、浄瑠璃と歌舞伎の用例はどちらも、

「刃向かう」

になっていました。まあ決して、

「ハム買う」

ではありませんが。どっちでもいい、といわれても、困っちゃうよなあ・・・。

7月4日の深夜に見たネットの「ニッポン放送」の辛坊さんの番組に対する記事では、

「プーチン大統領に真っ向から歯向かってきたプリゴジン氏」

というように、

「歯向かう」

を使っていましたが、これはたぶん『共同通信記者ハンドブック』の表記に従ったのではないかと思われます。

 

(2023、7、6)