西洋絵画の中に出てくる「異形の者たち」。それを説明するには「ギリシャ神話」に関する知識が必要だ。普通、なんとなく聞いたことはあってもよくは知らない話。
「ああ、あれがこう、つながるのか!」
というあたりが面白かったが、読み終わったら、また忘れてしまう…。
その中で「へー!」と思ったことを2つ、3つ…4つ、5つ記しておく。
まず、蛇女「メドゥーサ」を殺した「ペルセウス」は、その「メドゥーサの首」を自らの盾に付けた。首には、死んでもなお見る者を「石化」させる能力があったという。そしてメドゥーサの流した血から生まれた天馬「ペガサス」に乗って、「ペルセウス」は帰途に就く。途中、海の怪物の生贄(いけにえ)として海岸に鎖でつながれていたエチオピアの王女「アンドロメダ」に、「ペルセウス」は一目で恋をする。そこで「海の怪物を退治したらアンドロメダと結婚させさせてくれ」という約束を「アンドロメダの父」でエチオピアの王の「ケフェウス」とかわし、見事に海の怪物を退治する。海の怪物は「クジラ」だった。(「巨大な海蛇」という説も)それらは全て天上に上り「ペルセウス座」「アンドロメダ座」「ケフェウス(アンドロメダの父)座」「カシオペア(アンドロメダの母)座」という「星座」となっているそうだ。どこかで聞いた名前だと思ったわ。
そして、ギリシャ神話で9つの頭を持つ毒蛇「ヒュドラ」(ギリシャ語の「ヒュドロス(=水蛇)」から)と戦ったのが、半神半人の英雄「ヘラクレス」。彼は主神「ゼウス」が人間の女に産ませた子。ゼウスの妻「ヘラ」の乳を飲んだことから無双の力を得て「ヘラクレス(ヘラの栄光)」と名付けられた。しかしヘラからは憎まれ、苦しめられる生涯だったという。まあ、旦那が、他の女(しかもよりによって「神」ではなく「人間」なんかに!)に産ませたのだからね。ギリシャの神々も、ややこしいね。
もう一つ、アテナイ(アテネの古名)の初代王「ケクプロス」は「半人半蛇」(下半身が蛇)だった。蛇の賢さを受け継いだこの王は、国の守護神に、海と地震を司る「ポセイドン」ではなく、知恵と芸術・戦略を司る女神「アテナ」を選んで国を繁栄させた。(それで都市の名前が「アテネ」なのか!)
その王の死後、「ケクプロス」の3人の娘が「アテナ」から籠を渡され「中を見るな」と言われた。が、「見るな」と言われたら「見ちゃう」よね。籠の中には「足が蛇の赤ちゃん」が眠っていた。それは、鍛冶の神である父「ヘパイストス」と、大地の神である母「ガイア」(=その絵画「ケクロプスの娘たちに発見されたエリクトニウス」を描いたルーベンスの説)の子である「エリクトニウス」が入っていた。この「エリクトニウス」は成人しても普通に歩けなかった。(「足が蛇」だから当然。)そこで「蛇の賢明さ」で様々なものを発明したが、そのうち「もっとも偉大な発明」が、
「チャリオット」(二輪馬車の戦車)
だったという。これがあれば足で歩かなくてもよい、エリクトニウスはこの「チャリオット」で戦場を駆け回って活躍し、アテナイに善政を敷いたのだという。
そう、「黒人霊歌」で出てくる、
「Ride the Chariot」
の「Chariot(チャリオット)」は、「エリクトニウス」の発明だったのか!!
また「多頭の蛇」は全世界の神話に出てくるという。ヤマタノオロチ(日本)、ナーガ(インド)、ズメイ(スラブ)、アジ・ダハーカ(ペルシア)など。
蛇は群れて越冬し、春に目覚めるとそこでそのまま繁殖活動に入って、団子のような「くんず・ほぐれつ状態」になる。それで一斉に鎌首をもたげた状態は「多頭の蛇の怪物」に見えるのかもしれないと、著者は書いている。
そして、「トール」(これは「北欧の神」)が「ミッドガルド蛇」と呼ばれる怪物退治に行く話も。これは「神族」と「巨人族」の最終戦争である「ラグナロク(Ragnarok=0にはウムラウトが付きます)」=「神々の黄昏(北欧神話における「終末の日」)」と呼ばれるそうだ。おお、「神々の黄昏」、ワーグナー!
あれ?でも改めて調べたら、本来の意味は、
「神々の(死と滅亡の)運命」
で、「新エッダ」の作者・スノッリが「Ragnarok」を“誤って”「Ragnarokkr」と同一視したことから、
「『神々の黄昏』という誤訳」
が生まれ広く流布しているという(「ウィキペディア」の記述だけど。)
え!そうなの?
「神々の黄昏」は「誤訳」!?
知らなかった…。
やっぱり、「ギリシャ神話」や「北欧神話」も勉強しないといけないなあ。


