私が会社に入った年(1984年)に出て買った、柴田南雄著「グスタフ・マーラー」(岩波新書)という本を読んでいたら、マーラーは、
「交響曲第八番」(千人の交響曲)
を作る際に、その第一部の、
「来たれ、聖霊よ(Veni,Creator,Spiritus)」
で始まるラテン語の歌詞に採用したミサの原典が、
「七節」
からできていたのに、それに一節を加えて、
「八節」
にしてしまったと記されていました。
ユダヤ人で、もともと「ユダヤ教徒」だったマーラーは、ウィーンなどの音楽界で働くために「キリスト教」に改宗したけれども、それほど熱心な信者ではなかったとも書かれています。だから「七節」を「八節」にすることに抵抗がなかったのか?それとも交響曲「第八番」の数字にそろえたのかは、わかりませんが。
そもそもなぜミサの原典が「七節」だったかというと、「旧約聖書」の「イザヤ書」に由来する、
「精霊の七つの賜物」
になぞらえたからだそうです。この「七つの賜物」とは、
「上智・聡明・賢慮・剛毅・智識・孝愛・畏敬」
を指すそうです。これで思い出す「キリスト教」の「七つ」と言えば、
「七つの大罪」
ですね。こちらの方が有名かな。すなわち、
「高慢、物欲(貪欲)、色欲(邪淫)、貪食、嫉妬、怒り(憤怒)、怠惰」
です。
これ、どこかで読んで書いたな…あったあった、
「2020読書日記035『インフェルノ』(ダン・ブラウン著・越前敏弥訳)」
だ。それによると「七つの大罪」は、その頭文字を取って、
「サリギア(SALIGIA)」
とも呼ばれるそうです。具体的には、
・貪欲(Avaritia アワリティア=物欲)
・邪淫(Luxuria ルクスリア=色欲)
・嫉妬(Invidia インウィディア)
・貪食(Gula グラ)
・憤怒(Ira イラ=怒り)
・怠惰(Acedia アケディア)
だそうです。
そもそも西洋(キリスト教世界)は「7」が多くないですかね?
「一週間=7日間」
「七つの海」
「七大陸」
「音楽の1オクターブも、7音」
「色の色調(虹の色)も7色」
「7」を基準にしたのは「天体運行」との関係でしょうか?
そのあたり調べてみたら、「ニッセイ基礎研究所」の保険研究部・研究理事気候変動リサーチセンター兼任の「中村 亮一さん」という方が2020年6月1日に書かれた、
『数字の「7」に関わる各種の話題~「7」は何で人気が高い特別な数字として考えられているのか?』
というサイトが出てきました。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64597?site=nli
それによると、そもそも「キリスト教」にとって、
「『七・7』という数字は、聖なる数字」
とされているようです。その由来は、「旧約聖書」の「創世記」に、
「神は天と地と万象とを6日間で創造し、7日目を安息日(休息日)とした」
という記述に基づくと。つまり、
「1週間」
ですね。ここから、キリスト教のみならず「西洋一般」において「7」「七」が、
「聖なる数字」
になったようです。音の「オクターブ」という区切りも「宗教音楽」との関係があるのかもしれませんね。「神様」つながりだから。
ちなみに、
「七つの海」「七大陸」
などの「七」は具体的な数と言うより、
「完全」「すべて」
という意味合いだとか。
「七色の変化球」「七色の声」
という場合の「七色(なないろ)」も具体的な「7色(ななしょく)」というのではなく、
「様々な」
を意味しますものね。(日本では「五色の短冊」「五色沼」の「五色(ごしき)」も具体的な「5色(ごしょく)」ではなく、やはり「様々な」を意味しますね。)
「西洋は7」「東洋は5」
なんですかね?「聖なる数字」は?
「東洋」は、
「四神と中心」
「火水木金土」=「五行」
「六曜」
などがありますね。また、
「八」
は「末広がり」で「縁起が良い」とされていたり、「奇数」のほうが良い(陽の数字=陰陽道)とか、そこから1ケタの奇数の最大の数である「九」が重なる「九月九日」は、
「重陽の節句」
として祝われたり。
一方、カトリック教会には、
「七元徳」
という「教義における7つの基本的な徳」があるそうで、これは、
「知恵・勇気・節制・正義」(古代ギリシャの「枢要徳」)
「信仰・希望・愛」(「新約聖書」の「パウロの手紙」より)
の「7つ」だそうです。
また、ローマ教皇庁は「2008年3月」に、
「新たな七つの大罪」
というのを出してきたそうです。それは、
「遺伝子改造・人体実験・環境汚染・社会的不公正・貧困・過度な裕福さ・麻薬中毒」
だそうです。
ついでですが、野球の、
「ラッキーセブン(7)」
の起源は、1885年9月30日の「シカゴ・ホワイトストッキングス」(現シカゴ・カブス)の優勝がかかった試合の7回に、ホワイトストッキングスの選手が打ち上げた平凡なフライが、強風に流されてホームランとなって、ホワイトストッキングスが優勝を決めたそうです。勝利投手となったジョン・クラーソン投手がこの出来事を、
「lucky seventh(ラッキーセブンス)」
と語ったことから、「ラッキーセブン」が広まったとのことでした。
数字って面白いですね。
「数字に込める思い」はまさに「文化の伝統」なのですね。


