8999「食い気味」

2023 . 6 . 15

8999

 

 

ふと、思いました。

「食い気味(にしゃべる)」

という言葉は、まだ国語辞典には載っていないのではないか?と。これの意味は、

「相手がまだしゃべり切っていないのに、しゃべり始めること。」

です。

そこで、新しい言葉を積極的に掲載することで有名な2022年1月(本当は20211年12月)に出た「三省堂国語辞典・第八版」通称・「三国(さんこく)」を引いてみました。果たして載っているのか?

 

・・・載っていました!すごい、さすが!

 

*「食い気味」=(俗)相手が話し終わらないうちに話すようす。(例)食い気味の発言

(芸能用語から、二十一世紀になって広まったことば)

 

ああ、いつも「ミヤネ屋」での宮根さんの中継先への話し方が、この、

「食い気味」

ですね。

あと「漫才」なんかでも、テンポの良い漫才のツッコミは「食い気味」にツッコミますね。やっぱり「芸能関連」の用語・用法だったのかな。

これ、「2014年1月」(本当は2013年12月)に出た「三国・第七版」には載っていないから、

「第八版の新語」

ですね!

「二十一世紀になって」

ということは、使われるようになってから、もう「20年」ぐらいたつということか。

他の辞書には載っているのかな?引いてみましょう。

「明鏡国語辞典」「新明解国語辞典」「岩波国語辞典」「新選国語辞典」「現代国語例解辞典」

「三省堂現代新国語辞典」「広辞苑」「精選版日本国語大辞典」「大辞林」・・・

・・・「くいき」「くいきる」「ぐいぐい」・・・載っていない。

さすが「三国」です。

 

で、やっぱり気にしていると、そういった言葉は目に留まるものですねえ。

というのも、ちょうど今読んでいる、吉田修一の

『続・横道世之介』(2019年2月発行。連載は2016年~2018年)

の「300ページ」に載っていた会話に、

『「じゃ、横浜行ったのって……」

「八月。ちなみに今年の八月」

と食い気味の世之介である。』

というように「食い気味」が出てきていたのです。

ちなみに小説の舞台(時代)は、

「1993年~1994年」

という設定でありますが、その頃に「食い気味」が使われていたかどうかは、分かりませんが、この小説を連載していた、

「2016年~2018年」

には、吉田修一さんの語彙には、すでに入っていたということですね。

もちろん、21世紀に入る前から、

「相手の話が終わる前に話し始めるという行為そのもの」

はありましたが、それを指して、

「食い気味」

という言葉で表現することは、一般的ではなかったということです。

グーグル検索では(6月14日)

「食い気味」=83万6000件

で、トップに出てきたもの(2022年9月9日)に、意味がこう記されていました。

『「食い気味」とは、「食い込み気味」を省略した言葉。人が話している最中に、相槌を打ったり、自分の話を割り込ませることを言います。相手の話が終わる前に、自分の話をし始めることから「食い込み気味」という表現になったようです。』

https://oggi.jp/6816153#:~:text=%E3%80%8C%E9%A3%9F%E3%81%84%E6%B0%97%E5%91%B3%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E9%A3%9F%E3%81%84%E8%BE%BC%E3%81%BF%E6%B0%97%E5%91%B3%E3%80%8D%E3%82%92,%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

そして、

「食い気味に話す人の心理」

を分析して、こういう特徴があると記されていました。

1、話の結論が分かっている

2、周囲の注目を集めたい

3、相手の話に興味津々

そして「食い気味」という言葉の言い換えとしては、

「被せ気味」「前のめり」「遮る」

が挙げられていました。

 

(2023、6、15)