タイタニック号の沈没現場の海に潜って船を観察するための潜水艇ツアー。それに参加した5人が乗った潜水艇の消息が不明になっている事故は、潜水艇に備えられた酸素の予備がなくなる時刻が、日本時間の今月22日午後8時とタイムリミットが迫っています。
それを伝えた6月22日朝の日本テレビのワイドショー「DayDay」で、VTRのナレーションは、
「現地から最新情報をお伝えします」
でしたが、テロップは
「現場から最新情報」
でした。そして、司会の武田アナウンサーは、アメリカ・ボストンからの中継先の記者への呼びかけで、
「現場の橋本さん!」
と言っていました。ポイントは、
「現場か?現地か?」
というお話です。
言うまでもなく、この事故の「現場」は、
「アメリカの北大西洋」
ですので、こういう場合の呼びかけは、
「現地」
でしょうね。「海外」は、日本からいうと「現地」ですね。
「現地時間」
という表現もあります。しかし、
「事件や事故の、まさにそれが起こった所は、現場」
ですから、「屋上屋を架す」ような表現で言うと、
「現地の現場」
になるのでしょう。しかしNNNの橋本記者は、ふだんはニューヨーク支局にいます(そもそも読売テレビの社員なのですが)が、この日は取材のために、
「ボストン」
に足を運んでいます。しかし、彼がいるのは、
「事故が起きた船の近くではなく、はるかに離れたボストンの港」
ですから、
「『現場』と言うのは、おかしい」
ですね。やはり、
「現地」
が妥当な表現だと思いました。
(2023、6、22)



(追記)
結局翌日、日本時間6月23日に、潜水艇の残骸と見られ物が発見され、乗っていた5人は死亡したものと判断されました…。合掌。
(2023、6、23)
(追記2)
令和ことば事情8928「現場入りと現地入り」で、京都保津川の川下りの事故に関して、この言葉の関連の話を(国内に関してですが)書いていました。すっかり忘れていましたが…。
(2023、7、4)