歌舞伎役者・市川猿之助さんとご両親が自宅で倒れているのが見つかり、ご両親は死亡、猿之助さんも一時、病院に搬送されました。猿之助さんは、
「両親と共に自殺を図った」
と話しているそうですが、まだ真相は分かりません。ご両親の死因は、
「向精神薬による中毒死」
とされています。「向精神薬」というのは「三省堂国語辞典・第八版」によると、
「中枢神経に直接はたらいて、精神状態に大きく影響する物質。例、トランキライザー」
とありますが、一般的には、
「鎮痛剤、精神安定剤、睡眠導入剤などを含む薬剤の総称」
と考えられます。この、
「向精神薬」
を読む際のアクセントですが、
(1)「コ\ー・セ/イシ\ンヤク」(2語)
(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」(1語・コンパウンド)
のどちらでしょうか?とナレーターさんやアナウンサーに聞かれました。
「向」は「影響を与える」ということなので、「向精神薬」は、
「精神に影響を与える薬」
という意味です。だから、
- 「コ\ー・セ/イシ\ンヤク」(2語)
のほうが分かりやすいと思いますし、そう読んでいるアナウンサーも多いです。
「コンパウンド」(アクセントの山が1つ)して、
(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」
と読むと、
「更生・新薬」
と「2文字・2文字」のように区切って聞こえますしね。
しかし、お医者さんや臨床心理士のような専門家は、コンパウンドしているケースが多いようなのです。これは、その言葉をよく使う人たちはコンパウンドするようになる、いわゆる、
「専門家アクセント」
の一種かも知れませんね。
残念ながら「NHK日本語発音アクセント新辞典」には「向精神薬」は載っていません。去年(2022年)出た「第八版」から見出し語にアクセント表記が付くようになった、先ほど出て来た「三省堂国語辞典」はコンパウンドして、
(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」
でした。
また、アクセントを「数字」で表して載せている「新明解国語辞典・第八版」も、
「⑤」
ということで「5番目の『シ』」の後で下がるアクセント、つまりコンパウンドして、
- 「コ/ーセーシ\ンヤク」
でした。
分かりやすさでは「2語」に分けた(1)「コ\ー・セ/イシ\ンヤク」だと思うのですがねえ。
ちなみに「9年前」にも、同じ話題に関いて書いていました。
平成ことば事情5496「『向精神薬』のアクセント」もお読みください。



(追記)
あれ?なんでだろう?
>残念ながら「NHK日本語発音アクセント新辞典」には「向精神薬」は載っていません。
と書いたのですが、今引くとなんと、
「ちゃんと載っていました!」
謹んで訂正いたします。大変失礼いたしました。
おかしいなあ・・・。
載っていたどころか、「線が引いて」ありました。前にこの言葉を引いていたんだ。
そのアクセントは、
(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」
でした。
(2023、6、14)