8990「向精神薬のアクセント2」

2023 . 6 . 1

8990

 

 

歌舞伎役者・市川猿之助さんとご両親が自宅で倒れているのが見つかり、ご両親は死亡、猿之助さんも一時、病院に搬送されました。猿之助さんは、

「両親と共に自殺を図った」

と話しているそうですが、まだ真相は分かりません。ご両親の死因は、

「向精神薬による中毒死」

とされています。「向精神薬」というのは「三省堂国語辞典・第八版」によると、

「中枢神経に直接はたらいて、精神状態に大きく影響する物質。例、トランキライザー」

とありますが、一般的には、

「鎮痛剤、精神安定剤、睡眠導入剤などを含む薬剤の総称」

と考えられます。この、

「向精神薬」

を読む際のアクセントですが、

(1)「コ\ー・セ/イシ\ンヤク」(2語)

(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」(1語・コンパウンド)

のどちらでしょうか?とナレーターさんやアナウンサーに聞かれました。

「向」は「影響を与える」ということなので、「向精神薬」は、

「精神に影響を与える薬」

という意味です。だから、

  • 「コ\ー・セ/イシ\ンヤク」(2語)

のほうが分かりやすいと思いますし、そう読んでいるアナウンサーも多いです。

「コンパウンド」(アクセントの山が1つ)して、

(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」

と読むと、

「更生・新薬」

と「2文字・2文字」のように区切って聞こえますしね。

しかし、お医者さんや臨床心理士のような専門家は、コンパウンドしているケースが多いようなのです。これは、その言葉をよく使う人たちはコンパウンドするようになる、いわゆる、

「専門家アクセント」

の一種かも知れませんね。

残念ながら「NHK日本語発音アクセント新辞典」には「向精神薬」は載っていません。去年(2022年)出た「第八版」から見出し語にアクセント表記が付くようになった、先ほど出て来た「三省堂国語辞典」はコンパウンドして、

(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」

でした。

また、アクセントを「数字」で表して載せている「新明解国語辞典・第八版」も、

「⑤」

ということで「5番目の『シ』」の後で下がるアクセント、つまりコンパウンドして、

  • 「コ/ーセーシ\ンヤク」

でした。

分かりやすさでは「2語」に分けた(1)「コ\ー・セ/イシ\ンヤク」だと思うのですがねえ。

ちなみに「9年前」にも、同じ話題に関いて書いていました。

平成ことば事情5496「『向精神薬』のアクセント」もお読みください。

 

 

(2023、6、1)

(追記)

あれ?なんでだろう?

 

>残念ながら「NHK日本語発音アクセント新辞典」には「向精神薬」は載っていません。

 

と書いたのですが、今引くとなんと、

「ちゃんと載っていました!」

謹んで訂正いたします。大変失礼いたしました。

おかしいなあ・・・。

載っていたどころか、「線が引いて」ありました。前にこの言葉を引いていたんだ。

そのアクセントは、

(2)「コ/ーセーシ\ンヤク」

でした。

(2023、6、14)