「2023読書日記045」に読後感を書いた村上春樹の新作、
『街とその不確かな壁』(新潮社)
6年ぶりの長編で、なんと661ページもありました。
その中から、私が気になった言葉を「2つ」取り上げます。それは、
「ナイロン」と「シャベル」
です。この2つの言葉は、
「関西特有の使い方」
があり、この使い方から、
「村上春樹さんが関西にルーツを持っている痕跡」
が見られたのです。
まず「ナイロン」。
「ナイロン」というのは「関西」出身の「ある程度年齢の上の人(60代以上か?)」がよく使う表現だと思いました。「ナイロン」は「繊維」なので、
「テニスのラケットのガット」
は「ナイロン」と「天然」がありますが、ある時期、日本の軽産業の中心地だった「関西」では、
「『ナイロン』という言葉が、ビニールやポリエチレン製のものについても使われる傾向がある」
のです。「ナイロン袋」って言う人は、まず間違いなく「関西人」(西日本人)です。
この小説で「ナイロン」と「ビニール」が使われたのは、以下の箇所です。
・「黄色いビニールのショルダーバッグ」(8ページ・594ページ)
・「ナイロンのナップザックの中には」(66ページ)
・「足がナイロンのロープで縛られていました。」(334ページ)
そしてもう一つは、「シャベル」と「スコップ」。
「大きいのが『シャベル』、小さいのは『スコップ』」
というのは「関西」なのです。「関東」では「逆」で、
「小さいのが『シャベル』、大きいのは『スコップ』」
なのです!これが記された国語辞典は、まだ少ないです。そして、辞書によって記述がバラバラです。この小説で「シャベル」が出て来たのは以下のような記述です。
・「シャベルでせっせと地面に穴を掘るんですよ。そこそこの運動にはなりますが。」(104ページ)
・「平らなアルミ製の専用シャベルを持って」(360ページ)
・「シャベルで雪をすくってカートに入れながら」(361ページ)
・「頭をただからっぽにして雪かきシャベルを手に」(361ページ)
この小説で出て来た場所は「福島県」だから、本当は「雪かき」に使うのは、
「スコップ」
のはずですが、全部「シャベル」が使われています。この辺りからも、村上さんが、
「関西出身」
ということがうかがえますね。


