『パンダ外交』(家永真幸、メディアファクトリー新書:2011、2、28)

2023 . 5 . 12

2023_048

 

 

2011年、東日本大震災直前に出てすぐに買ったが、特に関心のある所だけ読んで「積ん読」になっていたが、ついに読み切った。読まない間に同じ本を3冊も買ってしまっている、因縁の一冊(3冊?)

著者(1981年生まれ)が、あの教科書問題の「家永三郎」の孫とは知らなかった。

中国のパンダを外国にプレゼントすることは「外交手段」として、最初は「東側の国」にしか行われなかった。しかしソ連と中国の関係が悪化した1970年以降、中国はアメリカと近付き、そのために「西側諸国」にも次々とパンダがプレゼントされた。日本にパンダがやって来たのも、そういった大きな流れがあったのだ。

しかし「動物愛護」の動きが強くなってきたタイミングで、中国はパンダを「プレゼント」するのではなく、金を取って「貸与(レンタル)」する方向に舵を切った。プレゼントすると、そこで生まれた子パンダはその国のパンダになり、繁殖すればするほど「パンダの希少価値が下がる」。あくまで「パンダを持っているのは中国だけ」という優位性を持つために、貸与したパンダが子どもを産んでも、それは期限が来れば中国に返還しなくてはならなかったのは、そういった背景があったのだ。いやあ勉強になるなあ。

また、黒柳徹子さんの「パンダ好き」は戦前に始まっていて、日本にジャイアントパンダが来るずっと前から、パンダが好きだったという筋金入りだった。

その黒柳さんに「パンダの毛皮買いませんか?」という誘いがその昔あったらしいが、毛皮と言っても「頭」も付いたもので、黒柳さんは、可哀そうすぎて断ったそうだ。

いろんなエピソードがあるんですね。

あ、それと119ページから120ページにかけて、

「粛慎(みしはせのくに)」

という民族に関して、

「阿倍比羅夫が斉明天皇の4年(西暦658年)に、中国の東北地方からロシアの沿海州あたりに住んでいた民族『粛慎』を討伐し、生きた『羆』2頭と、『羆』の皮70枚を朝廷に献上したと『日本書紀』に記述がある」

ということが書かれていて、この「羆」が、

「ジャイアントパンダだったのではないか?」

という説もあるらしいが、著者は、それは否定している。

実はちょうどそこを読んだ日の前日、漫画雑誌『ビッグコミック』に連載中の歴史に関する漫画「宗像教授世界篇」で、まさにこの記述部分の民族「粛慎」が討伐されて羆の毛皮を奪ったというシーンを読んだばかりだった!

セレンディピティー!不思議です!

 

 

(2023、5、1読了)