8932「海軍は撃(て)っ!」

2023 . 4 . 6

8932

 

 

校閲チェックに来てくれている、読売新聞校閲部OBのNさんが、

「日本海軍では『撃て』は『うて』ではなく『テッ』っと言っていた」

と教えてくれました。それで思い出したのは、

「かわぐちかいじ」

さんの漫画です。『空母いぶき』などを読んでいて気になったのは、

「撃て!」

というセリフの横に、

「テッ」

とルビが振ってあったのに、気付いていたからです。これは言葉の勢いの臨場感を表すものではないのか?と考えていたのですが、「日本海軍」ではそうだったことを、忠実に再現していたのですね。恐らく「海上自衛隊」でもその伝統は引き継がれているのでしょうね。

ネット検索したところ、テレビ朝日の「報道ステーション」のサイトの大越キャスター(私と同い年)が書いている、

「大越健介の報ステ後記」

というブログの「2021年12月11日」に「混じり合う思い」というタイトルで、

「103歳の元・海軍航空兵(職業軍人)吉岡政光さん」

にインタビューした内容が記されていました。

吉岡さんは、1941年の真珠湾攻撃で、空母「蒼龍」の艦載機「九七式艦上攻撃機」(縦一列3人乗り)に乗り組むことになったそうです。その際に、3トンの機体に、0.8トン(800kg)の魚雷をくくり付けて飛んだとのこと。

そして、ある艦船を見つけた時に、

「ヨーイ、テッ(撃て)!」

という合図があったそうです。やはり「テッ」なのか!

「ヨーイ」

があるから、

「ウ」

を呑み込んで、

「テッ」

になるのかもしれませんね。

「軍隊の言葉」「口調」に関しては、4月4日付「読売新聞」の1面コラム「編集手帳」に、

「今日中ニコノ原稿ヲ読ム!」

という言い方は、

「軍人風の口調での命令」

と書いてありました。それで思い出したのは、鉄道の階段に、

「上り」「下り」

などとよく書かれていますが、大阪では、

「上る」「下る」

と何だか「命令調」で書かれているのです。

「上れ」「下れ」

という「命令形」ではないんですが。これは小学校の時の先生が、

「はい、立つ!」「座る!」

と言っていたのですが、「軍隊がその発祥だった」のか!?

ちなみに「編集手帳」によると、そういう言い方をしたのは、かの三島由紀夫に『仮面の告白』を書かせた鬼編集者、

「坂本一亀(かずき)」

さんだと紹介した後に、その「一亀さんの息子」が、

「坂本龍一」

さんだと紹介して、彼の死を悼んでいました。

 

(2023、4、5)