『ラオスにいったい何があるというんですか?』(村上春樹、文春文庫:2018、4、10)

2023 . 2 . 14

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1か月に1回ぐらいの頻度で行く大阪・心斎橋の本屋さんで見つけて購入。単行本は2015年に出たもの。ここ数年、辛坊さんが何回か訪れているラオス。一般の観光客は、アジアの中でもあんまり訪れないと思う。興味はある。が、この本全体が「ラオス」について書かれているわけではなく、村上春樹が訪れたアメリカ・ボストン、アイスランド、オレゴン州ポートランド&メイン州ポートランド、ギリシャ・ミコノス島&スペッツェス島、ニューヨークのジャズクラブ、フィンランド、ラオス・ルアンプラバン、イタリア・トスカナ、そして日本の熊本県について書かれている。紀行文である。

「アイスランド」は「世界作家会議」に出席のため訪れたらしいが、村上春樹の本は「アイスランド語」にも2作品、翻訳されているそうだ。人口たった「30万人」の国なのに。それは文化的なレベルが高いということなのかな。

でも「あんまり誰も行かない北の国」であることも、たしか。ススピルバーグ監督の自伝的映画「フェイブルマンズ」を試写会で見たら、「あれはアイスランドにも行くだろう」というセリフがあって、「普通はそんな所、誰も行かないよな」というニュアンスが込められているように思った。

タイトルの『ラオスにいったい何があるというんですか?』は、ラオスに向かう途中のベトナムで、現地の人に不審そうにそう質問されたのを、そのままタイトルにしたものだそうです。ま、気持ちはわかるよね。

でも「旅」ってものは「何かがあるから行く(目的がある)」場合もあるけど「何があるかわからないから、それを探しに行く(目的のない旅)」というものも、あるよね、と。

最後に、熊本県が2回出て来るけど、その中に、

「夏目漱石が熊本で最後に過ごした家」(漱石は4年3か月の熊本滞在の間に、6回も引っ越しをしている!)

が、所有者の親戚筋に当たる姉妹(当時81歳と75歳)が近所に住んでいて面倒を見ているが、ご高齢でもあるし、

「地元の文化団体が購入するなどしているらしいが、せっかくここまで保存されてきたのだから、うまく存続できればいいのだけれど」

と記してあった。すると!

この本を読み終わった当日の2月6日の「日経新聞・夕刊」に、

「熊本市、漱石の旧居取得へ~23年度予算盛り込み 管理者高齢化で」

という見出しが!なんという奇遇!なんというタイミング!セレンディピティーだなあ。

 

 

(2023、2、6読了)