8856「『せきどめ』と『せきとめ』」

2023 . 2 . 6

8856

 

1月24日の読売新聞夕刊に、

「インドネシアなどで せき止めシロップで300人死亡~有害物質混入」

という記事がありました。その見出しを見て思ったのは、

「せき(咳)止め」

と言う場合の「止め」は、

「どめ」

と「濁る」のに、

「ダムでせき止め」

と言う場合の「止め」は、

「とめ」

と「濁らない」のはなぜか?ということでした。

複合語の「後ろ」の部分の「動詞から名詞になった単語」が「濁るか・濁らないか」ということです。

思いついたのは、複合語の「前」の部分の単語が、

「名詞」だと、「後ろの単語」は「濁る」

「動詞の連用形」だと、「後ろの単語」は「濁らない」

というのはどうでしょうか?

つまり、「ダムでせき止め」は「せく」という「動詞の連用形」に「止める」という動詞の連用形が名詞化したものがくっついていると。だから濁らずに「せきとめ」になっている。複合語で、後ろの単語の頭が濁ると、後ろの単語(動詞)の意味が伝わりにくくなるということでしょうか?

「咳止め」は「咳」という名詞に、「止める」という動詞の連用形の「体言化」した「止め」がくっついて濁って「せきどめ」。

「〇〇どめ」という単語は、

「咳止め」「通行止め」「札止め」「足止め」

をすぐに思いつきましたが、『逆引き広辞苑』で「どめ」を引いてみたところ、

「煽(あお)り止め」「淦(あか)止め」「足留め」「荒れ止め」「痛み止め」…

など「85語」出て来ました。

一方、濁らない「〇〇とめ」は、「87語」。その中で「〇〇勤め」「〇〇乙女」などを除くと、

「鋳(い)止め」「馬留」「書き止め」「書留」「仮の差し止め」「記事差し止め」「黒桟留(くろさんとめ)」「現金書留」「駒留め」「差止め」「桟留」「白桟留」「袖留」「取留め」「喉留め」「花留め」「早留」

「17語」。重複もあります。ある程度、限られた単語のようですね。

ともに漢字は「止める」「留める」がありました。

そしてきょう(2月2日)の夕刊を見ていると、

「瀬取り」

という言葉が出てきました。「セドリ」と読みます。濁ります。ロシアの船が入港を拒否されているので、海上で小船に荷物を積み換えて荷揚げしているという記事で、その行為を「瀬取り」と言うのです。これは以前、書いたような。(検索しても出て来ないけど)

これとは別に、本の「セドリ」というのもありますよね。これは「仲介業」的な感じの仕事。

ともに「ドリ」と濁ります。「瀬」が「名詞」だからかな?

それと今晩放送のうちの番組で、

「見取り図の間取り図」

というのがあるみたいですが、これは芸人の「見取り図」が、国内外のいろんな家の「間取り図」を見て取材するという内容らしいです。まあ、あんまり「間取り“図”」とは言わず、普通は「間取り」だと思いますけど、「見取り図」に合わせた「語呂合わせ」でしょうね。これって、

「見取り図」=「ミトリズ」

「間取り図」=「マドリズ」

で「見取り」は濁らず「ミトリ」、「間取り」は濁って「マドリ」。これは「取り」の前が、

「見取り」=「見」は「見る」という「動詞の連用形」

「間取り」=「間」は「名詞」

だからではないでしょうか?

どうでしょうか?

 

(2023、2、2)