「かんさい情報ネットten.」のプロデューサーのK君が、
「道浦さん、捜してました!」
と近寄ってきました。
「さっき、『共働き』の特集で、夫婦のうち『一人しか働いていない』世帯のこと『片働き』と呼ぶ表現が出て来て、『片方』しかないのを出すのは、いかがなものか?ということで、この文言は外したんですが、こういう言葉はどうなんでしょうか?」
という質問でした。
「それは正解だったね。やはり『両方あって当たり前』という意味合いを持って『片〇〇』という表現は良くないからね。『片親』とかもね。それと同類の言葉なんだろうな。もしかしたら『片親』の言い換え語かも。『カタカナ語』に置き換えて『シングル』だとそういった感じは薄らぐんだけどね。2人とも働いて稼いでいて子どもがいないのを『ダブルインカム・ノーキッズ』って昔、バブルの頃に言ってたものね。最近、聞かないな。これが『1人』なら『シングルインカム』だよね。」
と答えてから、「片働き」をグーグル検索してみたら(2月16日)、
「片働き」=3万8100件
そして「共働き」は、
「共働き」=1570万件
「片働き」の「3万8100件」という数は、「共働き」の「1570万件」に比べると、あまり使われているとは言えないと思います。
反対語は「共働き」ですね。これはいいか。
しかし「平成24年(2012年)版・男女共同参画白書」の中に、
「昭和55年(1980年)以降,夫婦共に雇用者の共働き世帯は年々増加し,平成9年(1997年)以降は共働きの世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る『片働き世帯数』を上回っている。」
というように「片働き」という言葉が使われていました。
『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『新明解国語辞典』『明鏡国語辞典』『新選国語辞典』『岩波国語辞典』には「片働き」は載っていませんでした。
しかし、『三省堂国語辞典・第八版』には載っていました。
*「かたばたらき(片働き)」=夫婦の片方だけが働いて収入を得ること。(⇔共働き)
また『大辞林』にも載っていました。新しい言葉ですね。
思うに、以前(50~60年前)は、「夫」が外で働いて、「妻」は「家庭の主婦」という形が普通でしたが、それを「片働き」とは呼びませんでした。それを「片働き」と呼ぶ傾向が出てきたというのは、
「『共働き』が当たり前・普通になってきたから」
ですね。女性の社会進出が進んだことは良いことだと思いますし、それによって「世の中」も「家庭」もいろんな意味で豊かになるのであればいいのですが、現在の「共働き」は、「少子高齢化」で世の中の働き手が減ったことによるもので、必ずしも女性の所得が高いとは言えない。いや、男性もそうですね。「非正規雇用者」は、男女とも「正規雇用者」よりも給与水準が低いのですから。と言うか、給与水準を低くした「非正規雇用」を使うことで「労働力を確保する」と共に「人件費を抑える」とともに「正規雇用者」の給与水準を維持し、退職金を保障するという「企業や社会の傾向」の中で生まれて来た体制ですから。誰が主導したかは今更言いませんが。30年も給料が上がらない間に、日本は世界に、
「置いてきぼり」
になってしまった。
「片働き」という言葉が出て来た背景には、そういうことがあるのではないでしょうか。
30年前には、なかった言葉だと思います。


