去年(2022年)6月に65歳で亡くなったコラムニスト・小田嶋隆さんが、集英社の「青春と読書」で2018年7月号~2019年10月号まで連載していたコラム「諦念後~男の老後の大問題」をまとめたもの。このエッセイの存在は知らなかった。
まさに「定年後」の私にとって興味のあるテーマである。小田嶋さんは「取材しない」「参考文献を漁らない」など、普通のこういったコラムニストとは違う方法で「コラム」を自らの体内から生み出してきたが、この一連のコラムは、あえて、その禁を破って、
「体験して書く」
という、ある意味「テレビのリポート」みたいな感じで書いていて、それは当然おもしろいのである。「小田嶋さんが実はやってみたかったこと」というよりは、
「定年後のオヤジがやりそうなこと」(普段の小田嶋さんなら、絶対やらないようなこと)
を、あえて「やる」ことで、
「なぜ、世の中の定年後オヤジは、そういうことをやりたがるのか?」
を知ろうとする試みだ。取り組むのは、
「そば打ち」「ジム通い」「麻雀」「終活」「断捨離」「ギーター」「同窓会」「鎌倉彫」「大学講師」「SNS」「盆栽」
このあたりまではいいが、最後のほうで、
「自分は永遠に健康だと思っていたら、脳梗塞で入院してしまいました。」
というタイトルで、
「ええ?」
と思う。それで連載を2回、休んだのだそうだ。さらに、
「定年後、何歳まで働けばいいか考えてみた。」
となって、最終回は、
「『がん』での死に方に思いを巡らせてみた。」
そして「あとがきにかえて」で、奥様の小田嶋美香子さんが
「小田嶋さんの心の中が赤裸々に記されている」
と書いている。合掌。
(2023、1、21読了)


