『諦年後~男の老後の大問題』(小田嶋隆、亜紀書房:2022、12、28)

2023 . 1 . 24

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去年(2022年)6月に65歳で亡くなったコラムニスト・小田嶋隆さんが、集英社の「青春と読書」で2018年7月号~2019年10月号まで連載していたコラム「諦念後~男の老後の大問題」をまとめたもの。このエッセイの存在は知らなかった。

まさに「定年後」の私にとって興味のあるテーマである。小田嶋さんは「取材しない」「参考文献を漁らない」など、普通のこういったコラムニストとは違う方法で「コラム」を自らの体内から生み出してきたが、この一連のコラムは、あえて、その禁を破って、

「体験して書く」

という、ある意味「テレビのリポート」みたいな感じで書いていて、それは当然おもしろいのである。「小田嶋さんが実はやってみたかったこと」というよりは、

「定年後のオヤジがやりそうなこと」(普段の小田嶋さんなら、絶対やらないようなこと)

を、あえて「やる」ことで、

「なぜ、世の中の定年後オヤジは、そういうことをやりたがるのか?」

を知ろうとする試みだ。取り組むのは、

「そば打ち」「ジム通い」「麻雀」「終活」「断捨離」「ギーター」「同窓会」「鎌倉彫」「大学講師」「SNS」「盆栽」

このあたりまではいいが、最後のほうで、

「自分は永遠に健康だと思っていたら、脳梗塞で入院してしまいました。」

というタイトルで、

「ええ?」

と思う。それで連載を2回、休んだのだそうだ。さらに、

「定年後、何歳まで働けばいいか考えてみた。」

となって、最終回は、

「『がん』での死に方に思いを巡らせてみた。」

そして「あとがきにかえて」で、奥様の小田嶋美香子さんが

「小田嶋さんの心の中が赤裸々に記されている」

と書いている。合掌。

 

 

(2023、1、21読了)