8844「下降と降下」

2023 . 1 . 26

8844

 

「いつものように「ミヤネ屋」のテロップをチェックしていたら、

「気温下降」

というテロップが出て来ました。

「あれ?なんかヘンだな」

と思いました。

「これは『下降』ではなく『降下』ではないのか?」

ということで、「下降」と「降下」、辞書を引いてみました。

*「下降」

【広辞苑】下の方におりること。低くなること。(例)飛行機が下降する、成績が下降する

【精選版日本国語大辞典】下にさがること。下ること。降下。(例)長塚節「土」二七(1910)「其の夜温度が著るしく下降した」

【三省堂国語辞典】下にさがること。くだること。(例)下降線をたどる(⇔上昇)

 

*「降下」

【広辞苑】(1)高い所からおりること。さがること。(例)気温が降下する、急降下

(2)略

【精選版日本国語大辞典】(1)高い位置から下へさがること。高い所からおりること。また、高い位置からさげること。(2)略。

【三省堂国語辞典】(1)(高い所から)おりること。おろすこと。(例)急降下(2)(温度が)低くなること。(3)パラシュートでとびおりること。(例)降下部隊(4)高い地位の人からあたえられること。(例)大命降下

 

【三省堂国語辞典】の(2)で言うと、やはり「気温」は「降下」ですね。でも1910年の長塚節「土」では「気温」に「下降」を使っているのか。

意味としては同じだけれども、「コロケーション」(語の結びつき)としては、

「気温」=「降下」

のほうが強いように思いますけどね。「急降下」とは言うけど、「急下降」はあまり聞かないのと同じように。「成績」は「降下」より「下降」のほうが、結びつきが強く感じるな。

グーグル検索では(1月26日)

「気温降下」 =   6490件

「気温下降」 =88万6000件

「気温急降下」=14万5000件

「気温急下降」=   1640件

あら。「急」が付かなければ、

「気温降下」<「気温下降」

「急」が付くと、

「気温急降下」>「気温級下降」

なのか。これは不思議!

ついでに「成績」も。

「成績降下」 =   1770件

「成績下降」 =41万1000件

「成績急降下」=   3670件

「成績急下降」=    245件

で、これも「気温」と同じ傾向が出ましたね。

単に「下がる」場合は、「気温」も「成績」も、「下降」のほうがよく使われているけれど、「急」が付くと、「降下」のほうが「下降」よりも使われる傾向がある(ネット上では)ということが分かりました。意外でした。

「急降下」

というのは「一つの言葉として認識」されて使われているのでしょうね。

 

(2023、1、26)