今野敏の「隠蔽捜査」シリーズは、主人公「竜崎信也」の魅力、脇を固める登場人物のキャラクターが際立っている点などで大好きなシリーズだ。つまり、わかりやすい。
その「本編の長編」とは別に、脇役を主人公にした、いわゆる「スピン・オフ短編」を集めたものは「3、5」「5、5」「9、5」と(オミクロン株ではないが)「〇、5」で表されている。本書もそういったものである。
気になった点を書き出します。
*「永田優子捜査二課長(34)=捜査二課長(=知能犯担当)はキャリアが務めることになっているが、さすがに女性は珍しい」(175~176P)
*「マスコミがいう『不祥事』を、公務員の世界では『非違(ひい)行為』という。」(241P)
*「キャリア会」という飲み会に出るので帰りが遅くなると言った竜崎への妻の言葉が、絶品!妻が竜崎に、
「喧嘩しないでね」
「喧嘩…なんで俺が喧嘩するんだ?」
「何となくそう思っただけ」
「心外だな。協調性はあるつもりだ」
「協調性という言葉の意味を、ちゃんと調べたほうがいいわよ」(267P)
*「ハンモックナンバー 一番」=入庁時の成績が一番(277P)
竜崎が神奈川県警の刑事部長になった後の、警視庁大森警察署長となった、美貌の「藍本百合子署長」など、女性の登場人物は増えたが、しかし、そもそもこの物語のメインの人たちはみんな「男」であり、男の物語。女性は「助演」であることは変わらないが、そこここに、「セクハラ」「パワハラ」は「ダメ」という世の風潮に配慮している感じがした。時代の空気を読んでいるのかな。
で、とっても面白かったです!
(2023、1、24読了)


